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狐の嫁入りっ ちょっと? 九尾な女の子  作者: 雛仲 まひる
第四章 ほんとは? 腐っても狼っ娘
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腐っても狼っ娘 3

こんばんは 雛仲 まひるです。


さて大神に襲われた知泰。

知泰の生き残こりを賭けた起死回生の必殺業が炸裂する!


そして知泰のピンチに美九音は!


はい、どうぞ><

 大神に踏みつけられたまま上から強い眼光で睨みつけられ、刀の切っ先を突き付けられる。


 腹を踏みつけられた際に一瞬詰まった息が漸く回復し始め声を捻り出した。


「ゲホッ、大神っ……」


「なに?」


 くっそ……折角のローアングルがスパッツの所為で台無しじゃねぇーかっ。って俺ってばそんな事を言っている場合じゃ無かったぜ。


 視界の先には切っ先が突き付けられてるんだからな。


「ゲホッ……お、大神、話をしよう」


「お前と話す事などない」


 それでも……。


「大神っ! 本当はお前寂しかったんじゃねぇーのか?」


 逃げ回っている最中に巡らせ辿り着いた答えを言葉に変えて行く。


「何故そう思う?」


「俺の勝手な想像で悪いけどお前はきっと孤独だったんだと思う。お前言ったよな? 人に慣れない狼が“主”って言葉を口にした。海で会った時にお前はいきなり俺達に攻撃して来たよな? あの時犬飼姉妹から咎められていた。ならお前は事前に散々犬飼姉妹に言われてたはずだ。恐らくはお前達の主からの命を受けている、その場での上下関係を示した“主”にだ」


 大神の無表情な顔が少し引き攣った。表情が変わったことを見逃さず俺は言葉を続ける。


「だがお前は主の言い付けを一時的に無視して俺達に突っ掛って来た。あれは何故だ? お前自身が主と認めながら心の何処かで抗っていたんだろ? 孤高の狼であるお前が犬の妖に従うなんて事が、プライドの高い狼であるお前は心の何処かで不満に思っていた違うか?」


 俺には分かる。


 美九音(九尾の狐)って言う狡猾で傲慢で、プライドの塊みたいな奴と居る時間が長いからな。あいつは負けず嫌いでなんでもかんでも一番じゃなきゃ気が済まない奴だから、その分努力だって練習だってパネェくらいする奴だ。


 勉強、スポーツ、お洒落からゲームと言った遊び、俺とのプリン争奪戦に至るまでだ。


 あいつは気も強い癖に負ければ泣く。それはなにより負けた自分が許せなくて悔しくて仕方ないからだ。


「お前の仲間は絶滅に瀕した。徐々に数を減らし少なくなっていった仲間は、やがて何時の間にかお前の前から居なくなった。だけどお前は長い時を生き抜いた、妖になるくらいにな。きっと仲間を探して諦めずに生き抜いたんだろ? しかし仲間に出会う事は叶わずお前はとうとう付喪神に、犬神になった。そこで出会ったのが本来狼の末裔である犬の犬神一族で、恐らく犬飼姉妹はその血統だろ? お前は犬の祖である狼だ強くてライドも高い。そんなお前は犬の下で働く事を不満に感じていても、同じ種族の仲間と、一族と居れる事が嬉しかったんじゃないのか?」


「っ……、な、なにをっ! わ、私は寂しく、なんて……ない」


「プライドと喜びの間を埋める物はジレンマだ。お前は俺との会話でこうも言っていた『私は狼だから』それってお前が犬神一族から厄介者扱いされたり、妬まれたりしてるんじゃねぇーの? 利口振って尻尾を直ぐに振り媚びる犬とは、私は違うって思ってても出来なくて腹立たしかったんじゃねぇーの? けど例え疎まれ妬まれたりしていても、なによりまた独りになっちまう事が怖かったんじゃねぇーのか?」


「うるさいっ黙れ人間っ。……お前に私の、私のなにが分かるっ」


 大神の眼が鋭くなった。ヤベっ……調子こいて怒らせちまったかな。


 案の定大神が犬歯を剥き出し噛み付きに掛った。俺は手にしたビンの蓋を開け顔の前に突き出した。


「……は、鼻が曲がる」


 大神が鼻を押さえ逃げる様に立ち上がり俺から離れた。いけねぇ……俺自身に対処しておく事を忘れてたぜ。


「ゲホッ」


 咽るし涙まで出て来やがった。アンモニア……パネェなおいっ。


 しかしこの機を逃がす訳には行かない。三十八計逃げるにしかず、逃げ逃げ家康天下を取るってな。


 もんどり打って転がる様に廊下に出たところで、先に教室から飛び出して悶絶している大神と派手にぶつかった。


 その勢いのまま大神と絡まり縺れながら、向かいの部屋に転がり込む様に飛び込んだ。


 あれ? この感触って……。


 俺と大神は重なる様に保健室らしき部屋に放置されたままのベッドの上に倒れ込んでいた。


「何処を触っている」


 この感触って……まさか!?


「こ、こらっ何故、そこで胸を掴んだ手を動かすっ」


 野暮な事を聞くんじゃない。確認しているだけだそれにこれは男の本能みたいなものだ。


「だからと言って揉みしだく必要性があるの? 七霧 知泰。お前はそんなにおっぱいが好きなの?」


 Yes, of course.(はい。勿論です)


 ……いやまぁそれは置いといてだ。現状俺の置かれている状況というとだ、顔のすぐ近くに大神の股間を覆う黒い布があり、俺の手は大神の体と俺の体の間に挟まっている状態で、ちょうど手の平が大神の胸部と体の間に挟まっている形になっている。

 

 大神が尻を上げて腿の間から冷たい視線を向けた。


 俺が下か……不味いな。


 !? 一応言って置く。この状況が続けば魅惑表記バイブルで得たエロ知識で頭の中がピンク色いっぱい妄想盛んな年頃の童貞男子に反応しない者は居ないよな? 更に不味いことに大神の顔もまた俺の股間の辺りにある。


 ……さてどうでしょう?


 っつーかそんな心配している暇はなかった。


 このままじゃ大神にマウントポジションを取られたまま、俺が蛸殴りにされる未来予想図しか脳裏に描けないんだが? さてどうしよう?


 案の定、大神がマウントポジションを維持したまま体を入れ替えこちらに向き直った。


「あのままの怪しい態勢で私の股間に顔を埋めている状態で、お前はなにかして欲しかったの? なにを求めていたの?」


 身体を密着させ顔を近付けてくる大神 紅葉。


 近っ! 顔近っ。


「それは……まぁいろいろと願望は渦巻いてました……」////


 もしかしてやってくれるの?


「そう? 私はしたくない」


 ……えぇー!? 聞くだけ聞いといてそれっ! ちょっと期待しちゃったじゃん、僕。まぁ普通そうだろうよ。よっぽどの痴女でない限り殺そうとしている相手とキャッキャウフフなんてしようとは思わんわな。


「レズだから」


 ……おい。


「私はレズだから雄との行為に興味はない」


「大神っ! それは間違っているぞ! 断じて間違っているっ」


 大神はきょとんと小首を傾げて暫し考えてから言った。


「そ? じゃあ私は百合だから雄との以下同文」


 間違ってるの解釈を間違ってんじゃねぇー! 


「同じことじゃねぇーかっそんなもんっ!」


 お前っ耳をそばだてて、きょとんと不思議そうな顔してんじゃねぇーよっ! 駄目だこいつには言葉が通じねぇ。


「雄のお前が私の体に気安く触れた事を許さない」


 大神の眼が怖ぇーマジで殺される。予告されてっけどほんと殺されるって俺っ! なんとか大神の動きを封じる手はねぇーのか? はっ! ……そ、そうだもうこの手しか浮かばない。


 今、俺に出来る大神の動きを封じる手はこれしかない。


「きゃっ!? な、なにをするっ人間の雄の分際で仮にも神の名を冠する者を汚すつもりなの?」


 隙を突いて身体ごと顔を近付け、大神の腿の下にある腕を一気に引き抜き彼女を抱き寄せる。そして大神の身体に手と足を回して組み付き自由を奪った。


「喰らえっ! だいしゅきホールドっ」


 こいつと身体が離れ手足を自由にすれば俺に生きる道は残されねぇ。このまま更に有利な態勢に持って行く。


 体を揺すって十分に勢いをつけてタイミングを見計らったところで、クルリと体を入れ替え今度は俺が大神に覆い被さる形になった。


「お前なにをっ、離せっ! 離せっ――いやぁーっ」


 大神は目尻に涙を浮かばせて必死に身を捩って暴れる。


「いやぁっ! やめてっ、触らないでっ! 乱暴しないでっ……うっ、うっ」


 なにも泣かなくても……。


「聞け大神っ! 俺がお前の仲間になってやる。同族とでも壁を作って、作られちまって寂しい思いをしてきたお前が簡単に俺なんかを信じてくれて、懐いてくれるなんて思ってねぇけど、先ずは知る事から始めようぜ? なにも知らない奴、信じられない奴。マイナスからだっていいじゃねぇーか? 最初なんて何時もどんなもんでもそうだろ大神?」


「人間如きがなにを言っている。人間とあやかしが分かり合えると本気で世迷言を言っているのっ?」


「今のお前は妖同士にだって心開いてねぇーじゃねぇかよ。今更人間だの妖だの関係ねぇーだろ? お前にはさ」


「うるさい「うるさい「うるさいっ! 人間のくせに妖界の事を分かっている風な口を利くなっ! 私は寂しくなんてない孤独でもいい、それでも生きていける妖だから。……人間の様に弱くて寄り集まらなければ生きて行けないわけじゃない」


「違うっ! 人間は弱いから身を寄せ合って生きる。だけどそれは強さだ。妖だってそれは同じ、いや妖は人間なんかよりずっと長い時間生きるんだから、孤独ってもんがもっと辛いんじゃねぇーのかよっ。俺には分かるっ」


 俺には分かるんだ。


 あいつ……九尾の狐である美九音でさえもきっとそうだから……、あいつが極端に怖がるのは何時も一人になっちまう時だ。


 あいつはちっぽけな石の欠片から一人で生まれ代わって、孤独の中で人間にだけじゃなくなかまにまで追われてたんだから、誰にも助けを求められずに一人で……。


 それに俺もかつては、家族に見切られて孤独だったんだ……。


「わ、私は寂しくなんかない。人間は敵妖も敵、人間も妖も嫌い、大っ嫌い。分ったら離せ人間っ」


 こいつ今なんった? 妖も嫌い? 


 我を忘れ混乱して暴れる大神を強く抱き締める。


「嫌だねっ! お前は嘘を吐いている、だから離さねぇー。本当の事を言うまでは離してやらねぇー」


「……嘘、なんて吐いていない。私は人間も妖も嫌い、大っ嫌い」


「だから孤独で寂しいんだろ? お前は」


「ちがっ……違う。私は寂しくなんかないっ」


 大神の眦に何時しか涙が溢れ出ていた。


「なら、なんでお前は泣いているんだ?」


 大神の顔に赤味が指してくる。


「分かり、合えるはずがない。人間のお前と……」


「そっか? 俺はお前とは違う。はなっから諦めてなんかいねぇーからなっ。分り合えてっかどうかなんて分かんねぇーけど、俺の傍には美九音がいて未美がいて波音ちゃんがいて姫子先生がいる。どうだ俺の周囲は妖だらけだぜ? 仲が良いなんて思っちゃいねぇーけどよ。っつーか寧ろ大迷惑なんだけどそれでもあいつ等がいて、少なくとも寂しいなんて感じた事はないね。まぁ鬱陶しいけど、それでも楽しいとは何度も思ったけどよ」


「楽しい? 人間達が恐れ、怖がり、疎み、忌み、嫌う妖と居る事が楽しいの? 人間のお前が楽しいというの?」


「ああ大迷惑なんだけどよ。こればっかは嘘吐けねぇよ。人間を一纏めにしてんじゃねぇーよ」


「……人、間。私……私は、寂しい、寂しかった。……わ~ん」


 大神は堰を切った様に泣き出した。


 にしても「わ~ん」って……。


 こいつやっぱ犬神なのな狼だけど。


「よしよし。今日から……たった今からお前は俺の仲間だ違うか? いや違わねぇけど友達だ」


 冷たかった大神の瞳から温かい大粒の涙が溢れ出している。表情を何処かに置き忘れてきた様に見えた大神が、ついさっきまで殺そうとしていた俺の前だと言うのも憚らず泣いている。


 心の深いところでは人も妖も俺は同じだと思う。


 どう足掻いても抗っても独りでは生きていく事なんて出来やしないし、例え周りに親兄弟が居てくれても、心が感じちまう寂しさや孤独には勝てやしないと思ってる。


 かつて当主争いさせられてた頃の俺がそうだった様に……。


「人間……にんげーん。わ~ん」


 ふう……、まぁこれにて一件落着だな。


 大神の頭を撫でて宥めてやっていると――。


 ゲシィ☆。


 おや? 後頭部に不自然な重みを感じるのだが?


「とーもーひーろー? あんたがなかなか帰って来ないと思って心配してあげてたのに……、途中で妖に襲われてないかって思って探しに来たら……、あんたが廃校に女の子引き込んで襲ってるなて……」


「ちがっ! これは違うんだ美九音っ」


「なにが違うのかしら? じゃあいったい、ベ、ベべべ、ベッドで、……な、ななな……ななな、なにやってんのよっ! こ、この強姦魔っ!」


「だから違うんだって美九音さんっ」


「なにがどう違うっつーの? 悲鳴も聞こえたしこの女の子泣いてんじゃん。……って、あんたは確か一昨日の犬神? あんたなに知泰に襲われちゃってんの? そんでもって今、べったり知泰に抱き付いて蕩け顔なんかしちゃってイチャイチャしてんの?」 


「お、お姉様……それ誤解」


「お姉さま?」


「!? き、狐? これは誤解。私イチャついてなんかない。襲われてた」


 こらっ! 大神、事実を捻じ曲げて伝えるんじゃないっ。


「とーもーひーろー?」


「だーかーらーっ! 違うんだって」


「うっさい却下っ」


 やれやれ完全に剥れてやがんなこいつ、取り付く島もありゃしねぇ……、一難去ってまた一難かよ。


「美九音っ! 聞けっ」


「はぁ? なにその態度」


「聞いてくれ、美九音さん」


「却下って言ったでしょ?」


「聞いてくださいっ可愛い可愛い美九音様。お願いします」


「まぁいいわ一応、話だけは聞いたげる絶対に許さないけど。ほら言ってごらんなさい」


 俺は美九音にここであった事や事情を話し大神 紅葉を俺達の仲間に迎えたい旨を伝えた。


 To Be Continued

御拝読ありがとうございます。


次回をお楽しみにっ!

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