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狐の嫁入りっ ちょっと? 九尾な女の子  作者: 雛仲 まひる
第四章 ほんとは? 腐っても狼っ娘
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腐っても狼っ娘 2

こんにちは

雛仲 まひるです。


大神に襲われた知泰は?


ではどうぞ><

 短かった我が青春の日々よアディオス。


 頭上から迫る白刃に死を覚悟した。人間の脳ってのは、どんなスーパーコンピューターの計算能力を上回るって訊いたことがあるのだが、今まさにそれを俺は体験していた。


 刃を目視してからあと数瞬の後に頭上に降ってくるはずのほんの短い時間に、過去の記憶が、想い出が脳内で映像化されていく。


 走馬灯の様に、を体感しているのだった。


 俺にも楽しかった家族との想い出が無いわけじゃない。まだ当主争いなんてもんが始まる前、そんなもんが無関係だった幼い頃の想い出だ。


 俺の楽しかった時間、想い出が巡る中には、必ずあいつの……、美九音の顔がチラつきやがる。


 こんな時でもお前は、決して俺に笑い掛けやしねぇーんだな? 眉を吊り上げて口を尖らせて頬を膨らませて、横柄な態度で俺に厳しい言葉を投げ掛けやがる。


『なにもたもたしてるわけ? さっさとなんとかしなさいよねっ! ほんと愚図なんだからっ』


 ……っ。


 なんだか懐かしむはずの想い出回想中だというのにムカついてきたっ! くっそ! あんのアマっ。何時も何時も隙あらば俺の精神を破壊しようとしやがってっ。何時か絶対微笑ませて見せるかんなっ!


 別に微笑み掛けて欲しいわけじゃねぇーけど、なんとなくこうなりゃ意地みてぇーなもんだ。ついでに泣かせてやるってーのっ! ――そういやあいつ、ああ見えて泣き虫なんだよな。


 もし俺がここで死んだらやっぱり泣くのかな? ……あいつ。


 ガツーン、ギィギィギィィー。


 頭上で鈍い音が響いたと思えば、間を置かず白っぽい粉の様な物と石っころが頭に振り掛かってきた。不意に走馬灯という幻は打ち破られ、反射的に頭上を見ると刀身は壁に触れ、寸でのところで止まっていた。


 どうやらそのお蔭で俺に刃は届かなかった様だ。


 大神は刀を持ってはいるが、得物を使っての戦いに慣れてない様だ。そういえばこいつは海で未美の奴と遣り合ってた時は、体術主体の戦闘スタイルだったから恐らく俄かに得物を持っての戦闘で、上手く間合いが掴めていなかったのだろう。


 ほっとする間も無く今度は蹴りが飛んで来た。


 避ける事など出来ず数メートルの距離をフッ飛ばされ、追随されてまた蹴りを喰らい今度はそのまま廃校のガラスを突き破って建屋内まで蹴り飛ばされた。


 ラッキーだぜ。施錠してあるだろう玄関口や既に割られた窓を探しながら、自分よりスピードで勝る相手に背を向け逃げながら入り口を手間が省けたってもんだ。

 

 この時、俺は気付いて無かったのだけれども、ガキの頃から毎日休む事を許されず朝夕の稽古を強いられ、それでも体格も体力も技術も上回る兄貴や姉貴相手に、常に叩きのめされ続けていた俺の身体は無意識の内にダメージを軽減するため、自然に自らの身体を飛んでダメージを逃がし軽減させていたんだ。


 見た目は派手に飛ばされるけど、自分から飛んで倒れれば、喰らう打撃の衝撃そのものは軽減され、フッ飛ばされたところで受け身くらい容易に取る事が出来る。


 受身。こればかりは反復練習で身に染み着いたもので、悲しい事に授業の高跳びでは必ず受け身を反射的にしてしまうんだよ。そんでもって周囲の奴等から「ナイス受け身」って言われるんだぜ? どうだカッコ悪いだろ? 笑いたきゃ笑えよ。


 ラッキーな事に労せず建屋内に入れた俺は、壁に喰い込んだ刃を抜く事にてこずっている大神を見て、すぐさま立ち上がり建屋内を走った。


 以前鬼と対峙した時は広い所に出たけれども、それはこちらがスピードで優位に立っていると踏んでいたからで、鬼の得物が大きいからと言って狭い場所に逃げ込めば、破壊力抜群の得物を振り回され、周囲の壁や物を壊された挙句、その破片が俺の逃げ場を制限するし、なにより命の遣り取りが掛った戦いなど、経験が無い俺自身の優位性も消してしまうと思ったからだ。


 ……しかし今回は違う。スピード、パワー、動体視力、全てに置いて相手の方が優れている。


 だからと言って狭い場所に逃げ込んだって勝算が出るわけでもないけども、一番厄介なスピードを幾分か相殺する事は出来るだろうし流石の大神も狭い場所では有効的にスピードを活かし切れないだろうさ。


 時には壁を背負えば後ろに回られ背後からの攻撃に気を使わずに済むし、前方だけに注意を、防御を集中させる事が出来、さっきみたいに刀を振り下ろされた時に上手くいけば壁に当たって封じる事が出来るかも知れないからな。


 あれこれ対大神バトルを想定しながら、窓側から離れた暗い建屋内を壁伝い兎に角逃げ回った。隠れても嗅覚の鋭い大神に直ぐ見つかっちまうからな。


 ……そうか! その手があったぜ? 普通に考えれば確立は低いけど、もしかするとあるかも知れないここは学校跡だからな。


 思った通り大神の動きが鈍い。あいつのスピードと嗅覚、暗闇での獣の視力を考えれば、もうとっくに追い着かれても不思議じゃない。


 こっちは暗闇に目が慣れるまで時間が掛かっている。が、しかしあいつはまだ俺に追い着いてない。


 どうやら建屋内に籠っている廃校独特のカビ始めた壁の匂いが嫌いなのか、はたまた黴臭さが嗅覚の邪魔をしている様だ。


 もしかすると俺ってばラッキー? 俺は目的の物を探すために、とある教室に向かった。




 なんとか大神に追い付かれず理科室だった教室の薬品棚の前まで来る事が出来た。しかし大方の予想通り目的のブツは処分されたみたいで見つからない。このままのなんの策も無い状況で、何れ大神に見付かっちまったら対処のしようがねぇ。


 半ば諦め掛けた所為か急に脱力感が俺を襲った。


「チクショウ……早くなんとかして“ニコニコおはよう∠(#`Д´)/プリン”を美九音女王様に献上しないと殺されちまうぜ」


 ……はっ!? 俺ってば嫌な事に気付いちまったよ? やっぱり神様は、何時如何なるときも俺に生きる選択肢は用意してくれねぇーみたいだ。


 休憩がてら脱力しているとシタシタと水が石を打つ感じの足音が聞こえ出した。まず間違いなく大神の足音だろうけど、どうすっかな? 今出て走っても一直線の廊下じゃ直ぐに追いつかれちまうぜ。


 まぁダメもとで逃げてみっか……って、あれ? 足音が消えた? 大神の野郎、気配を消したのか。


 恐る恐る入口に近付き廊下を覗いた。


 ……!? 「ぎゃぁー」 


 廊下を覗き込んだところで、首を掴まれ締め上げられる。


 俺は力の限り暴れたね。


 でも大神の力が強くてなかなか外れなかったが、暴れた拍子に大神の腹に蹴りをくれちまった様で、首を絞めつけている手の力が緩んだ。


 その隙を見て手を振り解き逃げようとした。


「ゲホッ、ゲホッ……」


 咽込んで上手く息が出来ねぇ。


 そうこうしている内に大神に回復されて、蹴りを見舞われ棚に激突し棚やら机ごと派手に飛ばされた。


 今度はかなり洒落にならねぇ……咽込んでいたところに諸に蹴りの衝撃を喰らっちまった。


 棚や机が転倒した拍子に開かなかった扉なんかも開いて、周囲に透明や茶色っぽビンやら紙切れやら置き忘れられた文房具やなんやらがガチャガチャ散乱した。


 たまたま手元に転がって来た小瓶を掴むと僅かに鼻を突く匂いがするビンのラベルを確認しようとした時、大神に腹を踏み付けられ息を詰まらせた。


「うがぁーっ!?」


 くっそ息が……できねぇ。


 To Be Continued

御拝読ありがとうございます。


次回をお楽しみにっ! ><b

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