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実は! キュートな九尾の狐 お化けなんてっ怖くないんだからねっ!

おはようございます。

雛仲 まひるです。


いつも貴重なお時間を割いて、

ちょっと九尾を御拝読くださいましてありがとうございます。


今回はちょっとした知泰と美九音のイチャイチャシーンがあるのかないのか?

実は! キュートな九尾の狐 お化けなんてっ怖くないんだからねっ!

ではどうぞ><


 ビーチでひと波乱あったけども、その間に水面下では姫子先生と波音ちゃんから連絡を受けた妖グループと犬神一族の間で紆余曲折あったらしかったのだが、この場は犬神一族がどうやら大人しく引き下がってくれたらしく、何故だか俺の知るところではないけども犬飼姉妹、大神、間崎を交えた夕食を終えて夏の風物詩花火を楽しんだ。


 そしてそこは高校生。なんとなく打ち解けてリビングで他愛もない話に花が咲いた。楽しい時間が過ぎて往くのはほんと早いもんだよな?


 ふと時計に目を遣ると日付も変わろうとしていた頃合だった。


 美九音や姫子先生、波音ちゃんはすっかり人間の生活リズムに順応しているみたいだけど、未美なんかは昼間、特に授業中なんてほとんど居眠りしてるもん。


 真夜中、即ち丑三つ刻に向かう時間帯はこいつらあやかしが、そろそろ本来本格的に活発になる時間帯である。


 そんな時間にこれからもう一つの夏の風物詩である肝試しを始めるのだけれども、その前に昼間に起こった騒動の顛末を話しておかなくちゃいけねぇーよな? 俺達もなにもしないまま、狙ってきたこいつらと打ち解けたりはしないさ。


 あの後、最初に正体を明かしたのは間崎 正宗だった。奴は国家の下、秘密裏に組織された“対妖怪殲滅組織”(Ghost extermination organization)通称GEO=ゲオの構成員で式神使いである事を明かしたんだ。


 恐らく守秘義務が課せられているのだろうが、それでも何故自分の正体を明かしたのかまでは多くは語らなかった。


 奴は「人それぞれ思うところがあるのですよ」なーんてイケメンスマイルで言いやがったが……。


 しかし俺達はそれを間崎なりの誠意と取ることにしたんだ。


 犬飼 楓、柊姉妹と大神 紅葉については姫子先生や波音ちゃんとは別のあやかしグループの所属でもある犬神一族で、封印されている鬼一族の大将、酒呑童子の復活を目論む一派のここ数年の動きに対応するべく、志を同じくする妖仲間と本来、出来る事なら頼りたくはない優秀な退魔師、陰陽師とも手を組み、来る戦いに備えているのだそうだ。


 本来陽麟学園近くにある七霧邸の情報収集と七霧に接触する手立てを探りに潜入していた犬飼姉妹は、復活の噂はあったものの、これまで消息不明だった九尾の狐であるところの美九音が学園に現れたあの鬼の件でその妖気を晒す事となり、また美九音が座敷童と共に拵えたという御守りの力で妖達には俺自体の気配も断ち切られていた七霧の血筋である俺の存在にも気付いて接触する機会を窺っていた様だ。


 そこで夏休みに入って他生徒の眼から離れた今回の旅行で強い妖である九尾の狐であるところの美九音やこの学園に来てからよく行動を共にしている未美、そして七霧の名を持つ俺に近付いて来たんだとさ。


 犬飼姉妹は犬神一族という事を自らの口で明かした。


 狼の付喪神であるところの大神 紅葉も犬神だそうだが、犬飼の方は犬から付喪神になった生粋の犬神一族の系譜だそうだで、狼の付喪神である大神 紅葉はその派生種であり希少種なのだ、と言う事もゲロしてくれた。


 まぁ犬飼姉妹が犬神である事については、なんとなく戦う前から察しはついっちゃいたけども。


 間崎 正宗との関係は偶然、はるが引き合わせちまったらしいが……本当のところはどうだかな?


 そして姫子先生、波音ちゃんグループも犬飼一族、犬神と同じく来る鬼一族との戦いに備えている事は分かっていたけれども、どうやら犬飼姉妹と大神達犬神一族が所属している妖グループとは折り合いが着かないらしい。


 まぁ詳しくは訊かなかったが、過激派(犬飼、大神)と穏健派(姫子、波音)の意見の食い違いなんだろうけど妖の世界でもややっこしい利害関係があるみてぇーだな。


 またそれぞれの両妖グループと間崎は俺達の協力を得られるなら、むかしむかしに行われた九尾討伐の際に七霧と共に九尾を討ち取った玄翁によって、殺生石に姿を変えた九尾の狐砕だき、その際に殺生石が飛来したと伝えられるそうだ。


 その地は多数存在していて当時の高田(現岡山県真庭市勝山)、越後国高田(現新潟県上越市)、安芸国高田(現広島県安芸高田市)、または豊後国高田(現大分県豊後高田市)に封印されている比較的大きく砕けた殺生石に宿る美九音の力を必要ならば解放する事にも協力する腹積もりがあるらしい。


 当の美九音は興味なさそうに話を訊いていたがな。


 あと気になっていた美九音と犬飼姉妹、大神が従姉妹関係にある事を訊いたら、犬神一族には全国に飛散した殺生石の欠片で四国に飛来したものが初代犬神になったと伝えられているんだと言っていた。


 そして俺達、美九音と未美はってーとスタンスを今と変える積もりはない。


 そもそも俺は平和主義だし平凡を望んでるし、あいつらもきっとそう願っていると俺は思うんだ。


 美九音は知っての通り自己中で傲慢で我が侭な性格で 勇往邁進ゆうおうまんしんだし、未美は猫そのものの性格なのか気まま勝手で悠々自適だからな。


 でもさ俺は……。


「知泰はウチとペアね」


「えっ? そうなの?」


「そ♡」


 抽選の結果、俺と美九音がペアで回る事になったらしい。


「狐、ズルいっ~あたしも知くんがいいっ! こんなのヤダっ」


 未美とペアになったのは、陽。


「黒井さん酷いっ」


 陽、泣くんじゃねぇよ。


「私達何時も一緒だねぇー柊ちゃん」


「ねぇー楓ちゃん」


 まぁ利害は兎も角、目的は同じ犬飼姉妹と大神とは一時休戦て運びだ。


「興味ない」


 大神は肝試しに参加しないらしい。


「大神、お前怖いんじゃねぇーの?」


「(笑)幽霊など妖が恐れるわけがない」


「強がるなって」


「う、五月蠅い」


「ふ~ん? 狼あんたってさぁ~もしかして幽霊が怖いの?」


「お姉……そういう狐こそ、本当は幽霊が怖いのでしょ?」


「ウ、ウチは別に怖くないもん」


「そう? それにしてはさっきから七霧のシャツを摘まんで離さない」


「うっさいなぁーこれは違うからっ! 知泰が怖くない様にと思って摘んだげてるのっ」


 はいはいありがとね、美九音ちゃん。


「ねぇ? 黒井さんは怖くないの? 良かったら俺のシャツ――」


「要らな~い。あたしもう眠いよ知く~ん」


「ほんと黒井さんて猫っぽいよね? 気ままなところとかさ。久遠寺さんや知泰が猫って呼んでるし」


 陽の奴めっ。馬鹿のくせに変な勘ぐり入れるんじゃねぇーぞ。


「あ、渾名だよ? あたし猫っぽいしね。久遠寺さんは狐ぽいじゃん? 賢いしスレンダーだし。だからあたしは狐って呼んだりしてるよ」 


「仲良しさんなんだね」


「そ、そうだよね? 久遠寺さん」


「そ、そうね。未美ちゃん……あははは」


 猫ナイスだぜ。顔は引き攣っているが美九音も良く耐えた偉いっ褒めて遣わす。


「僕は幽霊役だね。式神使いの僕に打って付けの役回りだよ」


「私と姫子先生もお化け役ですよ」


 式神を扱える間崎と水を自在に操れる波音ちゃん、蜘蛛の糸を張り巡らせ意のままに状況を把握出来る姫子先生が幽霊役とは、またお化け役が最恐の豪華メンバーになったもんだぜ。


 こうしてあやかしだらけという、世にも奇妙なメンバーで肝試しは執り行われたのであった。




 間崎の野郎が式神を駆使して作り出したお化けもどきと姫子先生の蜘蛛の糸のコラボで空中を浮遊する式神が妙にリアルだった幽霊に波音ちゃんの操る水が体感的にリアルな感触を与えてくるという俺が想像していた以上に怖かった肝試しも終わり、別荘のリビングに一同集まって姫子先生による点呼が行われた。


 まぁ俺達は学生だし先生も来てることだし、らしくていいんじゃね? その後風呂に入り直しす女子達とそれぞれに宛がった部屋に向かう陽と間崎、あいつ等は風呂入り直さねぇーの? まぁ部屋にもシャワー完備されてるし汗くらいは流すだろうさ。


 っつー俺も一日遊んでいろいろあって、流石に疲れた所為もあって、風呂に入直す余力はないね。まぁシャワーでも浴びて今夜はゆっくり眠るとするさ。


 じゃぁなおやすみ。






















 コンコン……コンコン。


 誰だよ? 夜中に部屋ノックする奴っぁ……。


 コンコン……コンコン。


 はいはい。今開けますよ……。


 寝惚け眼を擦りドアに向かう。


「はいっ? なんか用」


 暗い部屋のドアを開けると感知式の廊下の灯りが入り込ん出来て、眩しさの余り反射的に顔を顰め目を覆った。


「知泰……寝てた?」


 聞き慣れた声と髪の毛から香る馴染の甘い匂い。美九音だな。


「どうした? なんか用かこんな夜中に……」


「……あ、あのね…そ、そのね? ……」


 か細い声、美九音が不安になった時に出す甘えた声で、言葉を詰まらせながら答えようとしていた。


「なんだよ? 俺眠いんだけど」


 徐々に光の闇に慣れて来る目が、蠢くアメーバーみたいな眼にして涙目になっている美九音を映し出した。


「そ、そんなに怖い声で怒鳴っちゃヤダっ……、知泰のバカっ……」


 はいはいごめんね。


 明るさに慣れた目が映した美九音は少し大きめのパジャマの余った袖を手の平に挟み、御自慢のさふさ尻尾を胸元に抱き抱えて俯いた。


「眠れないのか?」


「……」


 恥ずかしそうにコクリと頷き、美九音が言葉を紡ぎ出した。


「あのね? 一緒に寝てもいい?」


 そう言えば、こいつ肝試しの時相当怖がってなっけ? 皆の前では平気な態度でいたけども小刻みの震えてたもんな。まぁ幽霊役があの三人じゃそりゃ怖いわな? 俺だってパネェくらいに怖かったし。


「なんだよお前怖くて眠れねぇーのかよ」


「……」コクリ


 小さかった頃の事を思い出す。七霧の生家で一緒に寝たとき、こいつは夜中に雷が鳴り出したら、怖がって眠れなくなったっけか? お前お化けも怖いんだな妖怪くせに。


「わーった入れよ」


 こいつと俺は幼馴染だし昔は一緒に寝る事もしばしばあった。今みたいに弱さを見せる事だって、もっとあったさ、お互いに。


 ……けど流石に年頃になって同じ布団で寝るのは不味いだろ? ……ほら? やっぱさ反応しちまうだろ? 俺も一応男なんだし? それとは別に意思に反して反応するし、朝とか……。


「……ありが、と、ね」


 部屋に入ってベッドまで行く美九音を見送りって、布団に入った事を確認した俺は昼間ならオーシャンヴューが望める窓際に置かれたソファに腰掛けた。


 つい先程まで気にならなかったけども、熱帯夜独特の蒸し蒸しする暑さの所為か、息苦しく感じるくらい部屋の温度が急激に上がった様な気がした。


 息苦しさと暑さから逃げようと窓を開け風を入れると、潮騒の音と潮の香り、生暖かい潮風が入って来る。


 なんだか身体がベト付きそうな感じがして窓を閉めた。


「ねぇ?」

 

 美九音の声がして振り返り問う。


「暑くて眠れないのか?」


 カーテンを開けた所為で差込んだ月明かりに照らされた、美九音が掛布団から顔半分だけ覗かせて無言でこっちを見ていた。


 俺は壁際にある空調の調節を入れ、暫くして天井の吹き出し口から冷たい風が心地良さを与えてくれ出した。


「ねぇってば、ねぇー」


「なんだよ?」


「知泰は寝ないの?」


「お前が寝るまで見ててやんよ。寝たら俺はここで眠るからさ」


「……ャダ、ウチ眠れないもん。……知泰がギュッてしてくれなきゃ怖くて眠れないっ! ……ねぇダメ?」


 ったく……何時も勝手で我が儘ばっか言うんだからお前は。


 駄々を捏ねる美九音の隣に仕方なく潜り込むと女の子独特の甘い香りが鼻孔を擽った。


 ヤベェ。……何時もはこいつを女の子だ、なんてあんま意識しねぇーのに……。


 俺が美九音の要求に応えてやれずにいると、美九音の方から擦り寄って来た。


「もぅ……早く、ギュッてしれっ」


「わ、分かったよ。……やればいいんだな?」


「そ♡ ……優しくギュてしれっ」


 恐る恐る美九音の身体に手を回すと、昼間に知った想像以上に細い体と柔らかさ、そしてこいつの温かさを両腕の中に感じる。


「……知泰?」


「うん?」


「……あのね? ウチがお化けが怖くて眠れなくなっちゃて知泰に一緒に寝て貰ったこと、皆には内緒にしておいてよ?」


「はいはい」


「あのね? ギュッてさせたげてるんだから感謝しなさいよね? あと変なとこ触ったりしちゃダメだからね? ウチがママになっちゃうようなことはしちゃダメだからねっ」


 ……お前がママになっちゃうことってなにっ!


「あのね? あの時知泰はなんて言おうとしてたの? ほら退魔師や犬達と話してたとき『でもさ俺は……』って言って口を閉ざしたでしょ?」


「ああ、あれね。俺達がどうしたいか、だろ?」


「うん」


「俺達は俺達の戦い方を探してく、出来ることなら戦いたくはないし巻き込まれたくないから、俺達のことは放っておいて欲しい、かな? ほれ俺って平和主義だろ?」


「ふ~ん」


 言えねぇーよ。本当の事なんてこの状況で……。


 もし俺があの時に思った事を今言っちまったら、きっと今、歯止めが効かなくなるし、この状況で言うのはなんだか卑怯な気がするんだよな。


「嘘、付き、バカ知泰……」


 暫く沈黙が続き、やがて美九音の小さな唇から優しい寝息が漏れ出してきた。


「おやすみ美九音。本当は俺、お前を戦わせたくないって言いたかったんだ。お前が大妖怪九尾の狐であろうとなんだろうと、今のお前を妖と妖の事情で戦わせたくなんてねぇんだよ。けど俺にはまだ自分の言葉を真実に変えるだけの力がねぇーから言えなかったんだ……ごめ、んな美九音」


 やがて俺は腕の中に美九音を感じながら眠りの世界へと船を漕ぎ出した。


「……よく言えました。それと今日は7月30日だね知泰。お誕生日おめでと。今日は特別なんだかんねっ」


 チュ♡


  微睡まどろむはっきりしない意識の中、夜空から零れ落ちた星が尾を引いて流れて消えるくらいの、ほんの短い時間、頬に柔らかい感触が触れた気がした。



 実は! キュートな九尾の狐 お化けなんてっ怖くないんだからねっ! おわり 


 次回っ! 第四章 ほんとは? 腐っても狼っ子につづく。

御拝読ありがとうございました。


次回から第四章 ほんとは? 腐っても狼っ娘となります。

狼の付喪神。大神 紅葉が大活躍? いろいろやらかしてくれます^^


では次回をお楽しみにっ! ><b

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