夏のビーチは肉球でいっぱい! 3
こんばんは
雛仲 まひるです。
ちょっと九尾楽しんで頂けてますか?
さて、ビーチで戯れる獣達……基、妖美少女、美九音や未美、そして知泰に危険が近付いてくる予感が……。
ではどうぞ><b
奇跡的に棒っ切れの直撃を免れ生還する事が出来た俺は、気を取り直してひと泳ぎした後にビーチで休んでいる。
俺が味わった恐怖のスイカ割り体験について語っておかなければなるまい。
無事に済んだから言うけども、棒っ切れで殴打される恐怖はハンパないねっ! 以前学園で鬼と対峙した時に手にした美九音が持っている童子切安綱の方がまだ良かったぜ。
刃と違い棒切れで叩き割られて粉々になったスイカの破片を諸に顔面に喰らって噴出した俺の鼻血と四方八方に飛び散ったスイカの果肉が白い浜の上に広がって、あたかも肉片みたいに見えたんぜ? 俺達以外の事情を知らない誰かが来てたら、きっと浜で起きた悲惨な猟奇殺人現場だと思うだろうね。
だって遠巻きに見たら俺の顔のところに砕けたスイカがあって、あたかも頭が砕けた様に見えるだろうさ。
「キャハハ」
「ウフフ」
「知泰っー、あっちの岩場にフナムシ捕まえにいこ♡ フジツボも群生してて気持ち悪いよ」
美九音よ? あんなキモイ形状をしているフナムシ捕まえてどうすんだよ? 小学生がよくする夏休みの昆虫採集じゃあるまいし、まぁフジツボには目に良い成分が含まれてるっつーけど食いはしないよな? いくらお前でも。
「知くんあたしとあっちの浜辺で遭難ごっこやろ? 台風の後だしワカメや流木が打ち上げられてて、それっぽいよ?」
猫よ? お前は読書感想文を書くために読んだ十五少年漂流記の影響でも受けたのか? それかもしかしてワカメを食いたいんじゃねぇーだろうな? お前らってほんと食い意地張ってるよな? 心配になって来るぜ。その後に訪れる食べ過ぎたお前らの結末と俺の身に起きるであろう理不尽が。
それに何時か変な物拾い食いして腹壊したりするんじゃねぇーかってさ。
「おい七霧。このビーチには私達以外に人が居ないようだが?」
美九音と未美の心配をしてやっている優しい俺に、パラソルの下で半裸の女……基、極めて布面積の少ない水着でくつろいでいる姫子先生に問い掛けられた。
「まっそうだろうね。ここ七霧の別荘地だしプライベートビーチだからさぁ俺達以外はいないと思うけど? 七霧グループが経営するリゾートホテルと共有だから、その内向こうから宿泊客とか出張って来たりすんじゃね? 別に日帰りの一般客を立ち入り禁止にしているわけでもねぇし」
「え、ええっ!? ここ知泰さんのお家の所有物なのですかっ? た、玉の輿玉の輿……」
波音ちゃんっ! あざとい大人の計算式が漏れ出してますよ? 言って置きますけどね、海岸線は私有地にはならないんですよ? 宿泊施設の前にあって年中七霧が管理してるしホテル、別荘周辺は七霧の私有地で、この浜は囲まれた状態になってるから勝手にプライベートビーチって言てるだけですっ。
そうそう何故お前なんぞが別荘なんて持ってんの? 親の財力使ってなに女引き連れてんだよ生意気だぞ七霧め、と言いたいだろうが勘弁して貰いたい。
本当は必要以上に七霧の家に頼りたくはないんだけどなっ。承知の通り奴らは 妖だし、美九音と未美は感情が高ぶると耳や尻尾を直ぐに晒やがるからなっ! まだ普段着や制服なら「獣耳コスじゃね?」なんて苦し紛れでも誤魔化し様もあるだろうけど、ビキニ水着の格好に獣耳やら尻尾やら直に生えて現れるんだぜ? 誤魔化し切る自信は俺にはないね。
そうこう言ってる内に美九音と未美の奴らは岩場の方に行きやがるし……。はしゃぎ過ぎてコケんなよ? 岩場で転ぶとフジツボでザックザクに切れて悲惨だぞ超痛てぇし。
「もうっ知泰の愚図っ早く来なさいっ」
「知くん知くん。潮溜まりにお魚がいるよ。捕まえて食べようよ」
「はいはい。行けばいいんだなっ」
えっ? 素直じゃねぇーかって? そりゃ……まぁ俺は基本優しいからなっ、照れるぜ。
今一、乗り気がしないまま二人の傍まで行くと美九音と未美は案の定耳と尻尾を露わにし、おまけに肘の辺りまで獣化していて、無邪気にそれぞれ興味の対象物相手に戯れていた。
なんでもいいが肉球ぷにぷにしてぇ~。
未美は潮溜まりに取り残された魚をキャッキャと、鋭い爪を立てそばえていたかと思えば、手の平サイズの蟹に爪を立てた手で恐る恐る仕切りに動かしたり顔を近付けたりしていr……(ry !?
「!? にゃぁ~!」
あっ! 未美の奴、鼻っ先を蟹に挟まれた。
美九音はと言うとフジツボの中を覗き込むのに夢中で御自慢の尻尾が海水に浸かっていても気付いていないようだ。
夢中になっていて遊んでいる美九音の御自慢のふさふさ尻尾は海水で濡れて良い毛並みをした御自慢の毛が濡れて貼り付き、なんともまぁ貧相に痩せ細っているではないか。
「きゃっ!」
美九音が急に悲鳴を上げ耳と背筋をピンと伸ばした。
「どうした? 美九音。フジツボにでもいじめられたのか?」
「知泰ーぅ。ウ、ウウウ、ウチの尻尾、誰かが掴んだ……」
そんな命知らずを俺は知らないね。それにお前の尻尾の大半は岩肌に沿って海中にあるのだがな。
「うぅー知泰立たせてよぅ。……なんだかキュッて尻尾締め付けられてるしヌルヌルしててキモいよぉー」
今にも岩場に腰砕けに尻を下ろして、ぺたんと尻を着いてとんび座りした美九音さん。
「兎に角、見てやっから海面から尻尾出せ」
「無理っ。ウチ尻尾弱いからギュッてされると腰抜けちゃって力入んなくなっちゃうんだもん。……知泰ぅ抱っこして立たせれっ」
な、なに甘えた声出してんだよ? 涙目でそんなに両手を広げて催促してもだな……、お前は可愛げなんて微塵も……、可愛いく、なんてないんだから……。
可愛いじゃねぇかチクショウ。
「し、仕方ねぇーな……」
美九音が広げている手を取り胸元に引き込む様に引き起こしてやると、美九音のスレンダーな体は力なく俺の胸元に寄り掛かった。
「ありがと」
美九音ってスレンダーだけど、こんなにもこいつって柔らかかったのか? ビキニ水着の美九音を腕の中に感じていて初めて知ったわ。 ……!? ビキニ水着だけって……、ほぼ全裸じゃねぇかっ! チクショウ。
「んん? 知泰どうかした?」
きょとんと小首を傾げて尋ねる美九音ちゃん。
「いや……別に?」
……こいつはほんと狐だよな。時々巧みに可愛い女の子に化けて俺を騙しやがる。
「狐だけズルいっ。あたしも知くんに抱っこされたいっ。……!? あっ! 狐の尻尾に……。でかしたっ!」
「未美? 美九音の尻尾がどうしたって?」
「蛸っ!? 蛸が貼り付いてるっ。捕まえてもいい?」
……おおっ。勝手にすれば?
「えっ? 蛸? キモいキモいっ。さっさと取りなさいよっ猫」
どうやら美九音は御自慢の尻尾で蛸を釣り上げたみたいだ。猫は蛸を美九音の尻尾から引き剥がすと喜び勇んで蛸を置きに今夜宿泊する別荘へと駆けていった。
この蛸は今夜のバーベキューの網の上に上がる事になる(一部刺身)のだが、それはまた別の機会に話すかもな。
「もう……らめっ! ウチ、ウチ――そんなにされたら、らめっ壊れちゃう」
「うるさい黙れ美九音。大人しく言うことを訊け」
「ウ、ウチ……知泰に、知泰にもうお嫁に行けない体にされちゃった」
お前はなにを言っとるんだ。静かに尻尾洗わせろ。
美九音の尻尾に付いた滑りを真水でしこたま洗わされ乾かして、漸く美九音ちゃん御自慢のフサフサ尻尾に戻ったところで、蛸を別荘に置いて帰って来た未美の姿も見えるビーチに戻ると……。
「よっ! 知泰。お前も来てたのか?」
そこには今にも=З←こんな鼻息が漏れて来そうな勢いの顔をした俺の悪友、多嶋 陽が現れた。
「タジマハール。なんでお前がここに居んの?」
「ば、馬鹿っお前。なんで俺を誘わなかった」
陽よ。逆に聞きたいんだが、なんでお前を誘ってやらにゃならんのだ。
「友達じゃねぇかよ。なんでお前だけおっぱいどもと……、ゴホゴホ。久遠寺さんを筆頭に美少女転校生の黒井さんに波音ちゃんに姫子先生をも含む学園のマドンナ揃い踏みで楽しげに海に来てんだよ。……ぅっ、ぅっ」
なにも泣くこたねぇーだろ。
「で? お前一人でこんな所まで俺達の後を追って来たの?」
「ふんっ。よくぞ聞いてくれた。実は一人じゃないんだ」
そういやお前の後ろに誰か居るな?
「こんにちは七霧君」
「……誰?」
「君とは同じ学年だけど初対面だから僕の事は知らないだろうけど」
んん。知らね。
タジマハールの後ろからひょっこり姿を現した笑顔が素敵なイケメンが現れた。
えっ!? もっと早く気付けよって? 人が少ないプライベートビーチだろだって? おいおいもう昼なんだから人もそれなりに増えてるんだってば。言ったろ? 七霧グランドホテルの客だって出て来るし、それに立ち入り制限なんてしてねぇーから昼前から人も増えるんだよ。
まぁ少しホテル側のビーチと距離はあるけども繋がっているからな。
「始めまして七霧 知泰君だよね。僕は間崎 正宗(まざき まさむね )って言います。宜しく」
清々しい程のイケメンスマイルだな。ちょっとムカつく。
「俺のこと知ってんの?」
「ええまぁね。君のこともよく知っているよ」
こいつ今、“も”って言ったか?
「まぁね。君は“あの”久遠寺さんや黒井さんと何時も一緒に居るから目立つのさ。君とは前々から是非仲良くしたいと思ってたのですよ」
“あの”? こいつ……もしかして美九音や未美の正体に気付いてるのか? 新学期早々に姫子先生が言っていた事が脳裏を過り皆の様子を窺がってみた。
姫子先生は取り分け変わった様子も無くパラソルの下で、面積の少ないワンピースタイプの水着から零れんばかりのダイナミックボディーを惜しげもなく晒して寝そべらせている。
波音ちゃんは何時の間にかスク水から胸元に幾重にもフリフリの付いた可愛らしいピンクのワンピースに着替えていた。あのフリル付きの水着は腿の付け根のカットラインは深く、水着に付いているフリフリは身体のラインを隠すためのデザインで大人向けの水着なんだが、どう見ても中学生にしか見えない。
そんな波音ちゃんは浜辺にぺたんと尻を下ろし無邪気に磯巾着と戯れていた。
なんだか妙に癒されるぜ。
未美は憮然とした顔で闖入者どもを明らかに歓迎していない様子で睨んでいる。
美九音はというとすっかり元気を取戻し、対美九音鎮圧兵器として持参したプリンをクーラーボックスから見付け出し頬張っていやがる。
緊張感の無い奴だなお前は。
「ちょっと知くん」
俺の傍に寄って来た未美が小声で耳打ちをした。
「あいつから退魔師の匂いがする。知くん追い返してよ」
「無茶言うなよ。なんの確証も無いし危害を加えられたわけでもねぇーのに無下に追い返せるか」
「それと……後三つ、こいつとは違った匂い多分、妖だと思うけど、相当力のある妖が近付いて来てるよ。ほらあそこ」
未美が指差した先を見て見ると遠くの人混みから、こちらに向かって来る三人組の女の子らしき姿があった。
To Be Continued
御拝読感謝ですf^^
次回をお楽しみにっ!><b
簡単でよいのですが
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雛仲 まひる。