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狐の嫁入りっ ちょっと? 九尾な女の子  作者: 雛仲 まひる
ちょっと? 九尾な女の子 特別編 クリスマススペシャル!
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変態サンタとわろえない狐 12

〔この大戯おおたわけがっ! なぜ、わらわの名を呼ばんかったのじゃ教えておいたはずじゃろう? 主様よ。わらわはお主に隷属しておる身じゃぞ、不本意ながらの〕


 この声……聞いた事がある。これは……この声、古風な語調は確か大炎魔七斬り。


〔そうじゃ。いかにもわらわは大炎魔七斬りじゃが刀の姿はわらわの器にしかすぎん。わらわの名を教えておいた以上、わらわの名を呼ばねば呼び出せんわ戯け者め。自身が従えた下僕を呼び出すには名を呼ばねばならん。従えた従僕を呼ぶ際の基本中の基本じゃぞ覚えて置くが良い〕


〔それとじゃ刀に封じられる際に人間どもが、わらわを縛るために名付けた名じゃが、教えたものが最も新しい名じゃ。今は真名を封じられておるので、教えられるのはその名だけじゃが、何れ其方がわらわの真名を呼び覚ましてくれよ我が主様よ〕




 知くん、知くん? 知くんってば~。


 意識の外から俺を呼ぶ声が聞こえる。


「はっ!?」


 目を覚まして最初に視界に入ったのは、俺を上から覗き込んで泣いている未美の顔と何時もと変わらず無表情の紅葉の顔だった。


「……未美?」


「よかった。知くんが目を覚まして……」


「未美か? ……美九音は?」


 俺の質問にただ首をふるふると振る未美の頬を涙が伝っている。その後ろでは紅葉と犬飼姉妹も俯いていた。


「分からない。御姉様は私たちを異相空間に飛ばそうとして……」


 何時も我関せず、といった風に何事にも動じない紅葉が珍しく動揺した姿を見せ、震えた声で答えたが言葉を詰まらせた。


 犬飼 柊が震える紅葉の肩を抱いた。その紅葉と柊の傍に寄り添う犬飼 楓が紅葉の言葉を引き取った。


「美九音ちゃんは私たちを異相空間に飛ばそうとしていたけれど、ぬらりひょんの術の完成が一瞬早く、間に合わないと踏んで……私たちの盾に……うっ……」


「なあ? 本当なのか未美……」


「分かんない。それがあたしも爆発と同時にここに飛ばされて……気が付けばこの中に……」


「この中? ここは何処だ」


「分かんない……」


「結界の中だ」


 未美の声に割り込んだ男の声、俺の問いに答えたのはとある男の声だった。


「この声は……」


「知泰。久しぶりだな」


 スーツの背中を向けたまま眼鏡を上げる仕草をするこの男は――。


「あっ兄貴っ。なんであんたがここに」


 そうこの男、七霧現当主の七霧ななきり 智隆ともたかは今はイギリスに居るはずなんだけど……。


「ふん。知れた事だ。クリスマスに久しぶりにお前に会いに帰って来てみれば案の定、妖どもと戯れ、それどころか厄介事に巻き込まれていたんだよ」


「……で、この結界は兄貴の仕業か?」


「ああそうだ。こうなると思って用意して置いて良かったよ。こういう事態も有り得るかと新たに開発した結界を用意しておいたんだ」


 あんたは宇宙戦艦ヤマトナデシコのサナダ技師かっ! 


 ダメだこの展開あかんやつ! って思った途端にサナダ技師が登場して「こうなると思って用意しておいて良かったよ、云々」っていうヤマトナデシコ最強伝説のを支えるサナダ技師みたいな台詞だなっ! おいっ。


「この結界は魔術の国英国の魔術結社で開発した陰陽道と魔術を融合して誕生した絶対防御を誇る結界“エイジス”だ」


 和洋折衷? まあなんでもいいが助かったことには違いない。いけ好かない兄貴ではあるけれど、感謝はしといてやるよ。……一応。


「兄貴?」


「なんだ」


「美九音の姿が見えないが」


 兄貴は背を向けたまま右手を上げ指し示す。


「そこだ」


「美九音っ!」


 俺の視界に映った光景は、可愛らしい顔をすすで汚して地面に横たわる美九音の姿だった。


「兄貴ーーーーっ! てめぇーっ、なんで美九音も一緒に助けなかったーーーーっ」


 ついさっきまで朦朧としていた意識が一気に覚醒し跳ね起き、背中越しに兄貴の肩を掴んで振り向かせると胸倉に掴み掛っていた。


「彼女を助けるのはお前の役目のはずだ。違うか知泰?」


「……っ」


 そうだ。あいつを、とびっきり可愛げの無い幼馴染みなのに、時折ほんとたまにだけ見せるとびっきり可愛い仕草で俺の心を鷲掴みにするあいつを……護る、護りたいと何時も思って願っていて誓っているのは、ヘタレで弱っちくて肝心な時には何時も何時もあいつに助けて貰って護られている俺自身じゃないか……。


 それなのに今、俺は……俺以外の誰かに、その役目も立場もやらせてしまうところだったんだ。


「だがお前には荷がかちち過ぎた様だ。彼女……九尾の狐をお前に任せたのは七霧の失点だ。気にするなお前に責任は無い」


 な、なんだよそれ? それじゃ……今の兄貴の言い様じゃ俺たちがまるで仕組まれて出会ったみたいじゃねぇーか? 


 美九音と幼馴染みであることも久遠寺家が隣であることも美九音が俺の許嫁であることも、全部七霧が仕組んだことだったみたいじゃねぇーかよ。


 今日まで俺と美九音が過ごして来た時間も想い出もみんなみんな……予定されたもので、仕組まれ作られたもので、全部紛い物の偽物で、あいつとの出逢いすら嘘だったって言うのかよっ。


「それは違うぞ知泰、それを決めるのは他でもないお前自身だ」


 兄貴はまた美九音が倒れている場所を指差した。釣られるように差された方向に自然を向ける――。


 その光景を目にして……、一気に血の気が頭の天辺に上り詰めた。


「てめぇーっ! ぬらりひょん、美九音になにしようとしてやがるんだっ」


 ぬらりひょんは横たわる美九音の傍に辿り着くと、スカートの裾を指で摘まんだ。


「起きろ美九音っ。お前は何時まで気を失ってるつもりだ。起きろ起きてくれ……頼む……」


 兄貴が張った結界を叩き割ろうとしてもビクともしない。それでも俺は結界を壊そうと拳を固めて殴り続ける。


 拳の皮は捲れ血が滲み、やがて肉は避け血の雫が周囲に飛散し始める。


「御主人様っ」


「知くんっ、ごめんね。あたしたちにももう貸すだけの妖力が残ってないの……」


 見兼ねたのか紅葉と未美に止めに入られた。しかし俺は2人の手を振り解いて、また砕けぬ壁に拳をぶつけ続ける。


「……くそっ」


 ぬらりひょんの奴が美九音のスカートを徐々に持ち上げ、徐々に楽しむ様に美九音の太腿の方に向かってずらしていく。


「無理だ知泰。この結界“エイジス”は誰にも破れない。例えそれが術者の俺だとしてもだ。効力が消えるまで待つしかない。彼女の事は諦めろ」


 美九音を諦めろ……だ? んんなこと出来るわけがねぇーだろっ!


「来いっ柳陣りゅうじん 椿姫つばき。俺に力を貸してくれーーーーっ」


〔やっと思い出してくれたかわらわの名を。やれやれ仕方ないのぅー。本当は其方の前にわらわ本来の愛らしい姿を晒したくはないのじゃが、わらわ自ら我名を教えた主が呼んだからには、汝の召喚に応えてやろう我が主様よ〕


 脳内に響く声が途切れた途端、目の前の空間が眩い光と共に弾け、光の中から更に輝きを放って現れたのは、眼も眩むほど白い肌と白金の長い髪の毛、白い肌の顔に乗る炎の如く輝く紅灼眼の瞳は、俺が良く知る美九音の紅い瞳を思い起こさせる小さく薄い唇を歪めて、ニヤリと笑んだ口元に覗く鋭い牙を持つ小さな女の子だった。


「漆黒の巨大太刀に封じられた奴だから、どんなにとんでもない奴が現れるかと思ったら……幼女かよっ!」


「なっなんじゃ! 其方はわらわが幼女の姿では不服じゃと言うのかっ。わらわの様な可愛らしい美幼女が現れたのじゃ、其方にとっては寧ろ御褒美じゃろうがっ!」


 椿姫が両腕を振り回しながらとつして来たところを頭を押さえて止める。


「椿姫、今はお前の駄々っ子パンチを受けてやっている余裕も時間も今はねぇーんだ。後で心行くまで踏ませてやっから俺に力を貸してくれ」


 ブンブン振り回していた両腕を椿姫はピタリと止まて俺を見据えた。


 じと~っとした軽蔑の眼差しで。


「踏ませてやるじゃと? そんな行為など我が主様には御褒美でしかないじゃろ?」


 バ、バッカお前、それはだな……。 仰る通りですねっ!


「確かに幼女に踏まれるなんてのは俺にとっては御褒美だ。だが椿姫、今はそれどころじゃねぇー惜しいが御褒美は後回しだ」


 俺は美九音の方に向かって鋭い視線を向けた。正確に言えば美九音のスカートを捲り上げて中身を覗こうと首を傾げたぬらりひょんにだ。


「ふむ。ぬしの言い分を聞いておると、お主だけが得するようにしか思えんのじゃが……」


「き、気のせいだ椿姫」


「そ、そうじゃな。今は我が主様が助けたい九尾の小娘をあのハゲジジィの魔の手から救うことがわらわの使命じゃ。行くぞ我が主様よ」


「応よ」


「その前にじゃ我が主様よ。わらわも実体化したとはいえ仮初の姿。未だ封印されておる身じゃ、主の力を借りねばこの結界を破壊する事は叶わぬ」


「俺の力?」


「そうじゃ神を纏える主の力が必要じゃ。じゃがこれまで意図的に神を纏うことが出来ていない主じゃ、いきなり神を降ろして纏うなど荷が克ち過ぎじゃろ」


 そう言えばそうだな? 何度か美九音のピンチに無意識の内に神を降ろし纏ったようだけれども、一度だって自分の意志で神を降ろしたことなんてねぇーな。


「俺は一体、どうすればいいんだ?」


「わらわを纏え。神ではないが主の従僕である超絶美幼女のわらわなら主も纏い易いじゃろう。わらわと主は、主が大炎魔七斬りを手にした際に主従関係にある。わらわが最初に主に力を貸した際に内在的に繋がっておる」


「つまり精神的にもってことか? 俺が大炎魔七斬りを呼び出す際に何処からともなく手元に現れたのは、俺自身の中から呼び出していたってことか?」


「まあその理解で大体合っておる。実体化したわらわと主が内在的に強く共鳴し合えば纏えるはずじゃ」


「分かった。ひとつになろう椿姫」


「ぬ、ぬぬ、主よ。よ、幼女に向かって、ひ、ひひひ、ひとつになろうとは、なんというエロい言い回しをしてくれるのじゃっ! この変態ロリコンめっ」


 えっ? 今のはエウレカセブソの主人公みたいに言ってみただけなんだが……。


「椿姫、つべこべ言わず俺に従え。時間がねぇーんだよ」


「変態という自覚があるのか否定はせぬのじゃな主。まあ良い、わらわは実態を霧に代える主は霧になったわらわをその体に纏うイメージを持てば良い。主は初めてじゃろうからわらわに身も心も預けておけば、後はわらわが波長を合わせてやる。今回はサービスじゃ」


 辺りが暗い所為か、どうやら中身が良く見えなかったらしく、ぬらりひょんの手が更に美九音のスカートを持ち上げた。


 あんのっクソジジィーーーーっ。


「七霧古神道術神纏い“灼眼鬼椿姫しゃくがんき”」


 椿姫を纏い両手を結界に突き立てる。鋭く尖った爪を得た俺の指先が完全防御を謳う兄貴の結界に沈んで行く。


「そんな馬鹿な……。俺の術を破ると言うのか知泰」


 結界に食い込んでいく指先に外気の感触を感じ、両腕に渾身の力を込めて一気に両側に開いた。抉じ開けた結界の外世界へとまんおじして飛出し美九音の下へと向かった。




「くっ、暗くて良く見えぬ。しかし宣言通り九尾の小娘のパンツは頂いて行くとしようかの」


 美九音のスカートの中を覗き込むぬらりひょんが今度は手を中に忍ばせ始めた。


「では九尾の小娘よ、主のパンツは頂いてゆくぞ。では脱ぎ脱ぎじゃ――ふんがっ。な、なんじゃ?」


 美九音のパンツに夢中になって油断していたぬらりひょんの顔面に蹴りを入れ、美九音の体から蹴り飛ばし引き離し、横たわっている美九音を抱き抱えた。。


「美九音? 美九音目を覚ませ、覚ましてくれ……頼む」


「まったく酷いことをするガキじゃ。年寄りは労わるもんじゃぞ」


「てめぇーーーーっ。よくも美九音をっ……よりにもよって美九音のパンツまで見やがって、許さねぇーぞコラ」


「いや……暗くてよく見えなんだのじゃが……」 


「いいか良く聞けっ! 美九音のパンツは俺だけのもんだっ! こいつのパンツを何処でも何時でも、好きにどうこうしていのは俺だけだ、覚えておけコノヤロウっ」


 パチクリ。抱き抱えていた美九音が目を覚ましたようだ。


「と、ととと、知泰、あ、あああ、あんた、ななな、なに言ってんのっ! ウチのパンツはウチだけの物よっ! 何処でも何時でも好きにどうこうさせたげないわよっ」


「み、美九音……よ、良かった無事で……」


「……ぶ、無事ではないんだけど、ていうかあんたのあれな発言の所為で、現在進行形で貞操の危機を感じてるんだけどっ! ってちょっと知泰……ふみゅ……」


 美九音が無事だった安堵からか、目覚めた美九音を力いっぱい抱き締めた。


「痛い……そ、そんなに強く抱き締められたら痛いって空港でもゆったのに……」


〔我が主様よ、お取り込み中恐縮なのじゃが、先ずは奴を片してしまうぞ。お楽しみはその後じゃ〕


「だよな? おいぬらりひょん。俺を怒らせたことを後悔させてやるから覚悟しておけよ」


 俺もたまには本気出す。(`・ω・´) 



 To Be Continued

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