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狐の嫁入りっ ちょっと? 九尾な女の子  作者: 雛仲 まひる
ちょっと? 九尾な女の子 特別編 クリスマススペシャル!
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変態サンタとわろえない狐 4

 毎日毎日、用も無いのに電話してくるくせに……。何時もは俺の方から電話して来ないって何時も怒るくせに、肝心な時に限ってあいつは電話に出やがらねぇー。


 携帯から耳を離したところで久遠寺家に到着、携帯をポケットに捻じ込み玄関のドアを開けた。


「はっはぁはぁ……。こ、小五音さんっ、美九音、美九音は居る?」


 勝手知ったる久遠寺家だが、俺はチャイムも鳴らさずに玄関に飛び込んでいた。暫くして「はいはいは~い」と呑気な声色で小五音さんの返事が返って来た。


「あらあら知泰さん、どうしたの? 血相変えちゃって」


「いいから美九音は居るんですか」


 小五音さんは少し困った顔をした。


「ごめんなさい。あの子、帰るなり急にパパと来八音こはねのところに行くって言い出して、荷物を鞄に詰め込んで出て行ったのよ。まあ冬休みだしパパと来八音が返って来る30日位まで向こうに居るんじゃないかしら? 知泰さん?」


 あのやろう、俺のイブの予定を強引に予約しておいて、なんて自分勝手なことをしてくれやがってるんだよ。


 俺だってイブのお誘いくらいはあったんだぞ! 1年2組の女子、霧崎きりさき まいちゃんとか、同じマンションに住んでいる年上の色っぽいお姉さんの松林寺しょうりんじ 彩狸あいりさんとか、あとクラスの女子からも他のクラスの女子からも実はクリスマスパーティーのお誘いやデートのお誘いもあったんだぞ。


 なのにお前がイブは予定を空けろ、なんて言うから……。


「知泰さん? もしかして美九音とイブの約束でもしていたのかしら……。だったら本当にごめんなさいね。まったくあの子ったら」


「……」


「知泰さん、あのね? あの子は本当に我が儘で可愛くないところも多いと思うの。私も散々言って来たのだけれども、でもね? 未だにサンタクロースが居るのよ、なんて子供っぽい可愛らしいことも信じちゃってるところもあったり、知泰さんにはとっても面倒で迷惑な子かも知れないのだけれど、あの子を宜しくお願いね」


「宜しくするって一体、な、何をですか……」


「そうね、あの子の夢を壊さないで上げてね。あの子がサンタクロースを頑なに信じつづけていることの責任の一端は知泰さんなのですからね」


「はっ? 俺が?」


「そうよ。知泰さんは覚えていないみたいだけれども。はいこれ、あの子を宜しくお願いね。できれば優しくして上げて」


 小五音さんは「私って親バカね」と苦笑いを浮かべ俺に小さな小箱を「私からふたりへクリスマスプレゼントよ」と言って手渡した。


 俺は小五音さんから貰った小箱を良く見もせずに礼だけ言ってポケットに捻じ込んだ。


「俺……駅に行ってきます」


「お願いね」


「お、俺に出来ることなら」


 小五音さんは心成しか安心した様子で嬉しそうに微笑んだ。


 


 久遠寺家を出て最寄りの駅に向かう途中、もう一度、美九音に電話を掛けることにした。


 美九音、お前が何度電話を無視しようとも何処に行こうとも、俺は絶対にお前を探し出して明日の約束を守らせてやるから覚悟しとけよ。


 まあ永遠に続く呼び出し音が受話器の向こうから聞こえてくるんだろうけど、携帯のディスプレイに美九音の番号を呼び出し電話を掛ける。


 また長い時間、呼び出し音を聴く羽目になるんだろうな、と思っていると、速攻で繋がった。


「美九音? お前いったい何処……あっ」


『この電話は、お客様のご希望によりおつなぎ出来ません。この電話はお客様のご希望によりおつなぎ出来ません』


 ……

 …………


 あ~の~やろうーーーーっ着拒にしてやがるっ!


 前言撤回だっ! あんな女知るかっ! もう何処へなりとも行きやがれ。


「御主人様? なに肩を落としているの」


 不意に背中の向こうから良く知った声が聞こえた。


「紅葉か」


 えっ!? 俺ってそんなに肩を落としてたの? 俺って思ってた以上に美九音のこと大切に思ってたのか? 美九音に着拒されたことがそんなにショックだったのか? まあショックだったけれども……。


 だって着拒のガイダンスなんて生きている内に聴くとは思わなかったし、まさか俺が誰かに着拒されるなんて思わねぇーもん。


 そうか人が見て落ち込んでんだな俺。


「なあ紅葉」


「なに」


「俺ってそんなに哀愁漂ってた?」


 紅葉はそっと俺から顔ごと視線を逸らし、憂う様に目を細めた。


「リストラされて落ち込んで公園のベンチに日長腰を掛けて時間を潰しているおっさん臭かったわ」


 ……紅葉さん。あんた酷でぇーよ!


 紅葉の心無い言葉に傷付いていると、また良く知った声が俺を呼んだ。


「知くん? 知くんだよね? わ~い知くんだーーーーっ!」


 声がするなり側面から、いいかイソップタックルは腰からしただっ! スクールウォーズ宜しく飛び込んで来る未美。


 ちょっと待て、お前のイブは炬燵こたつが恋人じゃなかったの?


「まあそうなんだけどね」


 未美の奴、あっさり認めやがった。


「と、ところでさ? 知くんは今日暇なの? 暇ならあたしと炬燵デートしない?」


 炬燵デート……だ、と。


 あれかあの炬燵に入って、ふたりっ切りの時は足を絡めてイチャコラ、炬燵布団で見えない事を良い事に友達なんかも居る中でも炬燵下で足を使ってイチャコラするという伝説の炬燵デートかっ!


「……いや、そんなんじゃないんだけど」


「ダメよ猫。今日の御主人様の予定は御姉様だけの物よ」


「……そ、そうだったわね」


 えっ? なんでお前らが俺たちの約束を知ってんの? お前らだけには気付かれない様に細心の注意を払っていたんだが……。


 そう美九音曰く、猫と狼は何時も邪魔するから絶対に言っちゃダメだかんねっ! だそうだ。


 未美には学校でクリスマスイブの予定を聞かれはしたが、俺は適当に濁して置いたんだけどな。それでもしつこく予定の相手は誰だとか、何をするつもりなんだとか聞いて来たから、七霧の実家でパーティーがあるから行くかも、って言ったらあっさり諦めた。


 まあこいつらあやかしにとって七霧の退魔師や陰陽師が集ってくるパーティーに来るなんて自殺行為だよな? 実際に毎年七霧の屋敷ではクリスマスパーティーや新年会が執り行われるんだが。


「違うわ。私たちは御主人様の為なら七霧の退魔師なんかがどれだけ居ようが関係ない。でも御姉様が……」


 どんな時でも無表情の紅葉にしては、なんだか酷く怯えている様子だ。


「どうした紅葉? 美九音がどうかしたのか?」


「知くん、じ、実はね? あたしも狼も一応知くんにあの時に告白しちゃったでしょ? それで狼とあたしどっちがクリスマスイブに知くんと過ごすか争ってたら……き、狐が……」


「美九音が?」


「それを傍で聞いてた御姉様から殺気だってたわ」


「これまでの狐じゃないみたいだった。あれはそうね全盛期の九尾の狐そのものの妖気を発してたわね、ドス黒いオーラまで出してたわね」


「あんな御姉様を見たのは初めてだったわ。私は孤高の狼の付喪神、力にも美貌にも自信があったわ、でも……あの時の御姉様の迫力には正直敵わないと感じたわ、不覚にもこの私がちびりそうだったもの。ちなみに猫は漏らしたわ」


「ちょっ、お、狼っ! そ、そそそ、それ言わない約束でしょっ!」


 いや未美、お前にはこの春に美九音を見てやっちまった前科があるから俺は驚かん。しかし美九音の奴め、目的の為なら友達にも容赦ねぇーな。


 とっいけない。美九音を追い駆けなきゃいけないんだった。


「悪い。紅葉、未美。俺今急ぎの用があるからこれでな」


「あ~はいはい。分ってますって。悔しいけど今回はあの子に知くんを譲るわ。本当は泣きそうなくらい嫌だけど、一応狐と狼とあたしの間で決めたことだから」


 そうか……お前らも成長したんだな? なんでもかんでも力で解決することを止めたんだな。ごめんお前らを脳筋だと思っていた俺を許してくれ。


「勝負の結果よ。仕方ないわ」


 ……ごめん前言撤回する。


「ババ抜きよ。平和的に解決したのよ。小細工無しにババ抜きして最後までババを持っていた子が知くんとイブを過ごすことになったのよ。勿論邪魔はしないって約束もね」


 寄りによってババ抜きって。しかも最後までババを持っていた奴が俺とイブを過ごすって、なにそれ罰ゲームなの?


 こいつらの悪意無き地味な嫌がらせに、ど~んと落ち込んでいた俺に、更なる邪悪の女神が襲い掛かる。


「やあパンツくん。こんなところに居たのかい探したよ」


 俺をパンツくんと呼ぶこの女の声は真冬さんだな。


「例のサンタクロースが現れたんだよ。ほら早く退治て来なさいパンツくん。仕事だよ」


「いやでも俺、今はそれどころじゃなくなっちまって……」


 そうだ。もうプレゼント云々なんて言ってられないんだ。報酬の35万円を手にして、あいつが、美九音が欲しがっていた物を全て揃えても、それをプレゼントする相手が居なければ意味がねぇーんだよ。


「まあね。パンツの気持ちも分かるよ? パンツの気持ちなんて知りたくもないけど、パンツくんの気持ちは分からなくもないよ。肝心の美九音ちゃんが居なきゃプレゼントを用意しても意味が無い、って思ってるでしょ? けど……」


「けど?」


「七霧 知泰はそれでいいの? 七霧 知泰は一度受けた仕事を女の為に破棄するような男だったのかな? それじゃあ七霧の名が泣くよ」


「真冬さん」


「んん? なにかねパンツくん、略してパンくん」


 ちくしょう~この女、俺をテレビでお馴染みの有名なチンパンジーの愛称に略しやがった。


「真冬さん。八月一日 真冬さん。俺は七霧の名は泣かすことなんてどうでもいいんですよ。そんなの大したことじゃない」


「ほほ~う。言うねパンくん」


 そうあの学園に現れた鬼の襲撃に遭って、戦って負けた上に怪我をしてあいつを泣かせた。当時、俺を妖から守るために九尾の狐の力を御守りに完全に封じていた美九音に九尾の狐の力を使わせちまった。


 いくしま童子の一件でも助けに行った俺がまたあいつに助けられ、そして泣かせてしまった。


「俺は七霧の名は泣かせても久遠寺 美九音を二度と泣かさないって誓ってんだよ」


「美九音ちゃんにかな?」


「違います。美九音にじゃありません。俺自身の魂にです真冬さん」


「ア、アホっパンツのくせに、なにカッコイイ台詞言ってんのっ惚れてまうやろ! ……そうか分かったよパンくん。いいやごめん、もうパンくんとかパンツくんって呼べないね。七霧 知泰、あんたは本当に大馬鹿者だよ」


「そうすね」


 ただひとりの幼馴染み、女の為に大切な約束も仕事も破棄する、なんてことをしたら二度と信用なんてして貰えないだろーな。


「でも……あんたみたいな大馬鹿は嫌いじゃないかもね」


「ありがとうございます真冬さん。美人のお姉さんにそう言って貰えて光栄ですよ」


「でも私としては少し残念。報酬の35万の他にウチのバイト娘たちと話して、犯人を捕まえてくれたらお礼にサンタコスして皆で君にクリスマスプレゼントとして、キスしてあげようかって決めてたんだけどね。ちょっとなら触られても許してあげようね、って言ってたようちの娘たち」


「……真冬さん」


「んん? なんだいトモリン」


「その憎っくき変態サンタはどこですかっ!」


 ちょっとサンタクロース捕まえて来る。(`・ω・´)



 To Be Continued

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