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狐の嫁入りっ ちょっと? 九尾な女の子  作者: 雛仲 まひる
season2 第三章 今回も肉球がいっぱいっ! やはり俺のラブコメ学園祭はまちがっている 
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やはり肉球いっぱい 俺の学園祭はまちがっている 6

 懐かしのという程ではないのだけれど、姉の飛鳥が運営しているホーンデッドマンション……もとい、高層マンションに引っ越してから何だか遠く感じていた久遠寺家の玄関が開かれた。


 遠くなったのは距離ってわけじゃねぇーんだ。まあ隣に住んでいた時よりは随分と遠いところに住むことになっちまったけど、そういうのじゃなくて、ほら心の距離っつーの?


 何だか寂しい気持ちがするんだよ。


「ただいまママ」


 美九音の声を聞いて奥から足音と共に娘を出迎えに小五音ここねさんが姿を見せた。


「美九音お帰りなさい。今日は随分と遅かったのね。あら? あらあらあら? あらあらまあまあ。知泰さんお帰りなさい」


 帰宅を告げた美九音を出迎えに来た小五音ここねさんが、美九音の後ろに居た俺の姿を確認して驚いているような、そして何処か嬉しそうな表情を浮かべて出迎えてくれた。


「小五音さん、こんばんは……」


 不肖、七霧 知泰、恥ずかしながら出戻って参りましたっ。( ̄ ^  ̄ ゝ


「ママ。今晩は知泰、家に泊まるから」


「あらあらまあまあ、そうなの?」


「はは……、お世話になります……」


 何だか妙にバツが悪くて思わず苦笑いを浮かべてしまったぜ。


 というのも住んでいた家を失くした俺を暫くの間、居候させてくれた久遠寺家を出て姉の飛鳥あすかが管理するマンションに移ってからまだ2日だというのに、どの面下げて久遠寺家の敷居を跨いでいるんだよ俺。


「いいのよ知泰さん。家を実家だと思ってくれてもいいのですよ? 知泰さんは美九音の許嫁なのですし、久遠寺家の大切な将来の跡取りなんですから」


 バツの悪そうな表情をしていた俺を見兼ねて小五音さんがそう言って微笑んでいる。


 んん? 今、最後にちゃっかり俺の将来が決定付けられたような言葉が聞こえたんだが……。


「……はっ?」


「あら嫌だ。私ったら気が早いわね? それに“久遠寺家”のというわけじゃないしね。知泰さん? もしあなたが七霧の名を大切に思うなら、私は別にそれでも構わないのですよ? 家の神社さえ継いでくれれば、私たち夫婦も老後の心配は無くなって助かるわ」


 将来、もし美九音と本当に結婚したなら同居は確定事項なんですねっ!




「はぁ~……」


 小五音さんが食事を用意してくれている間に食前の風呂を頂く。恐らくは掃除も終わった後の空っぽだった湯船に、わざわざお湯まで入れてくれたんじゃねぇーの?


 美九音は俺が風呂に入る前に済ませたんだが、あいつめっ! 俺が風呂に入る時に真っ赤な顔して「ウ、ウチが湯に浸かった後だからって、湯船のお湯飲まないでよね……湯船のお湯飲まないでよね?」っつーて言いやがった。


 しかも大事な事だからって2回も。


 あいつめっ、いったい幼馴染みを何だと思ってやがるんだ? 後湯に浸かるくらいで何を恥ずかしがっていやがる。


 お湯を飲むな? 飲まねぇ―よっ! お前の後に風呂入るなんて小さい頃に何度も経験済みだし、寧ろ久遠寺の家に遊びに来た時には殆ど一緒に入ってたじゃねぇーかよ、幼馴染みだし。


 確か中学校2年生まで。ほんと今更にも程があるよな? 


 っつーかお湯飲むなって、狐出汁が出ていているからなのか? あいつ……幼馴染みの俺に対する変態認識度っていったい……。


「はぁ~……」


 美九音が使っている百合の香りがするお気に入りシャンプーの香りが混じった湯気が狭い空間に立ち込め、白い霧の中にビブラートのかかった溜息が反響した。


 いかん。くだらないHRでの陽麟際のクラス会議で疲れた所為か、うっかりおっさんみたいな溜息を吐いてしまった。


 いやまあ、まだこれからHRの殆どが陽麟際に向けてのクラス会議になる。


 そう考えると溜息の1つや100は出るだろ?


 陽麟際は大掛かりなイベントで他校を圧倒する規模の学園祭だ。文化祭の間に開催される体育祭の競技出場割り振りやクラス展示の準備、各種コンテストへの参加者推薦(自薦可)等など決めて行かなければならない事柄が多過ぎるんだよ。


 先の事を考えるとうんざりして力が抜けて行く。湯船の縁に凭れたままズルズルと湯船の底に引き込まれる様に顔の半ばまでお湯の中へと沈めた。


 ……っとその時っ! ガララっと浴場のドアが開いた。


 髪の毛でも乾かしている際中だったのだろう、そこには真っ赤な顔でバスタオルを巻いて体を隠したまま、眉間に眉根を寄せた美九音が仁王立ちに立っていた。


「ちょっ!? ……あ、あああ、あんた……。あ、あああ、あんた今、お湯飲んだでしょっ! 飲まないでってゆったのにっ!」


 ちょっと待て美九音っ! いろいろとツッコミどころがあるんだが……。


「飲んでねぇーよ」


「嘘っ! 今飲んでたじゃんっ。ウ、ウウウ、ウチが浸かった湯船に顔、突っ込んでだで飲んだんでしょ? ウチが浸かったお湯、飲みたかったんでしょ?」


 ……ちょっと待てお前、なんでちょっと嬉しそうな顔してんの?


「百歩譲って飲んでないとしてもウチが浸かったお湯が唇についたのペロペロしたんでしょ? 正直に言えばゆ、許したげてもいいよ?」


「飲んでねぇーしペロペロもしてねぇっつーの」


 どんだけ俺、お前のことが好きなんだよそれ! お湯の中にお前の出し汁でもしみ出てんの? って……まさかお前、幼稚園児や小学生低学年でもあるまいし高校2年生にもなって湯船の中でおしっこしたとかじゃねぇーだろうなっ!


 「正直に言えば……!?」


 まさかとは思ったが、つい湯船の中で立ち上がってしまったじゃねぇーかっ。


 俺が取った急な行動の結果、美九音ちゃんの反応。


 俺の中心部に視線が釘付けとなり、息を詰まらせた後の美九音ちゃんの表情の変化をご覧ください。


 (つ_T)→(´;ω;`)→。・゜・(ノД`)・゜・。


  泣いた。幼馴染みの女の子に裸を見られた上に泣かれた。


「ちょ……ちょっと見ない間に……と、知泰のお、おおお、おちんちんが……えぐっ。……ゾ、……ゾウさんからキ、キキ……キノコみたいになってる。前のおちんちんの方が可愛かったのに……ぐすん」


 幼馴染み言葉に俺も泣きたい気持ちになった。




 風呂上った俺の前には上気した顔の美九音がいる。


 美九音の長い蜂蜜色の髪の毛は、乾かした後だも乾かし切れていない様でしっとりとした感じを残していて、風呂に入ってから然程の時間が経過していない所為か、美九音の白い肌は上気し桜色に染まっていた。


 美九音の小さな唇はリップでも塗ったのか艶やな光沢を発していた。


 俺は目の前にある好物に思わず唾を呑み込んだ。


 もう我慢できねぇーっ!


「きゃっ!? ちょっ、ちょっと知泰? いきなりそ、そんなに掻き回さないでっ! グチョグチョになっちゃうよ」


「バッカお前。下準備は丁寧に時間を掛けてしっかりしとかねぇーとダメだろ?」


「そ、そう、なの? だ、だけど……ぅん……ウ、ウチね? 実は初めてなの……初体験なんだし、いきなりそれは掻き回し過ぎだよ知泰。そ、そんなに掻き回したら、こ、壊れちゃう……」


「美九音、壊れてもいいんだぜ? 寧ろ壊れてくれた方が俺は好きなんだよ。なんっつーかねっとり良く絡み付いて来るし、そのヌルヌル感がたまらねぇーんだよ」


「もっ! 知泰のバカ……。そ、そんなこと言われてもウ、ウチ初めてなのに分からないよ」


「よし準備も出来たし、そろそろ入れるぞ美九音?」


「ヤダ、いきなりそんなに入れるの? ちょっ、ちょっと待って……ウチ、その……まだ心の準備が……」


「ダメなのか?」


「ダメ……じゃないけど」


「なら入れてやるからほれ開け」


「と、知泰? あのさ……これ付けてよ。ママもそうした方が良いってゆってた」


「んん? ああ悪い。最初はそのままの方が好いかなって思って。じゃあ付けてやるよ」


「ぅん……ありがと」


「ほら美九音」


「と、知泰っ! いきなりはイヤだよ。あっ、あ、熱いよ知泰……。そんなに一気に入れるなんて、そんなにお口に入らないよ。ウチ初めてってゆったのに」


「おお悪い。ゴメンな美九音?」


「……ぅん、いいけど……。今度は優しく……しれ?」


「おう分かった。じゃあ行くぞ」


「ぅん……来て知泰……あ、あ~ん♡」


 熱くなった物を美九音の小さな口元へと移動し、ゆっくり慎重に沈めていく……。


 それを美九音の唇が俺が運んだ物をパクリと咥え込んだ。


「うん! ヌルヌルするけど美味しいかも」


「だろ? やぱり卵を溶いて浸けた方が美味いだろ?」


「うん。ママと知泰が勧めるから初めてつけてみたけど美味しいかも。ウチね? 卵は好きだけど今まで何かを卵に浸けて食べるなんて、何となくヌルヌル感が気持ち悪そうだな~って思ってたんだよね」


 しかし小五音さんは、突然の訪問者に対して、ましてやこんな時間にも関わらず、すき焼きを用意してくれた。


 俺と美九音が小さい頃から家族同然の付き合いをして来たお隣さんの久遠寺家と七霧家。七霧の人間は仕事やらなんやらでそれぞれ出て行ってしまった。


 ここの七霧の屋敷に今は俺しか七霧の人間は住んでいなかったけれども、正確に言うと七霧の敷地にはだけれども。


 その俺もまた先日、七霧の屋敷から少し離れた場所へと移ってしまった。


 そんな俺を美九音の母親である小五音さんは、鬼襲撃事件で住んでいた家を失った時も、こうして夜遅くに訪れた時も暖かく迎えてくれる。


 ……早く、こっちに戻って来てぇーぜ。久遠寺家ここは俺の故郷なんだなって、この日の晩に初めて俺は故郷ってものを、故郷っていう言葉の意味を知った気がする。

 


 To Be Continued

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