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狐の嫁入りっ ちょっと? 九尾な女の子  作者: 雛仲 まひる
season2 第三章 今回も肉球がいっぱいっ! やはり俺のラブコメ学園祭はまちがっている 
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やはり肉球いっぱい 俺の学園祭はまちがっている 5

 陽麟学園祭会議は紆余曲折うよきょくせつの末に、クラス展示を決めるHRは下校時間を大きく過ぎて無事に終了した。


 結局、紅葉が提案した演劇が惜しくも選ばれることはなく、執行部及び文実に提出する希望として第一希望には他クラスとの競合が予想される猫耳メイドカフェが男子全員の得票数を得て選ばれる事となったのだが、猫耳至上主義に対して先頭に立って反旗を翻した久遠寺くおんじ 美九音みくねが物言いを付け、狐耳至上を掲げて抗議に出た。


 それに追随するように元祖猫耳至上を謳う黒井くろい 未美みびが狐耳至上派に対し猫耳の素晴らしさ、愛らしさを解き始めるとちょっとまったとばかりに異議を唱えた大神おおがみ 紅葉もみじが狼耳こそニューウェーブだとばかりに新興勢力を立ち上げた。


 更にケモミミ元祖ともいうべき御存じの通りであるが猫耳ではない。


 扇情的なバニースーツに身を包んだ女の子が網タイツなどを着用しているあれである。


 そうウサ耳こそ元祖!


 そのウサ耳勢力がケモミミ界のトップの座に返り咲こうと声を大にしてこれらに対抗する姿勢を見せた。


 更に猿耳だの豚耳だの像耳だの、ネズミ、ヤマアラシ、鹿、バク、コアラ、ピグミーオポッサムだのマニアックなケモミミ派も登場した上に、終いにはスポック君耳至上などというわけの分からないキチった輩まで出てくる始末となり争いは止むことなくHRの時間を大幅に過ぎ、下校時間が迫ることになる。


 たべっこ動物かよ。


 ちなみにスポック君とは地球圏内の動物に在らず外宇宙から来た異星人なのだが、広い解釈を求めたスポック君耳至上派に論破され、やむなく生物イコール動物カテゴリーとして認める事となった。


 っつかスポック君耳萌えの奴って尖った耳が好きなの? ならエルフっ娘でいいんじゃねぇーのか?


 だってさエルフの娘って可愛いし、おっぱいも総じて大きい娘が多いよな? それとも違うの、大きいおっぱいがダメなの?


 議事の動向をあわあわしながら見守り続けていた我らが2年9組の担任、水無月みなづき 波音はのん先生(通称:波音ちゃん)が議事を後日に回すことを提案するもヒートアップした各派閥の勢いは止めることを知らず、涙目になる波音ちゃん見たさに議論は続いた。


 波音ちゃんマジ天使。


 秘密裏に組織された波音親衛隊の情報にると本日ヒトマル:マルマル時、どこぞの高級レストランにて校長先生が勧めて来たらしい相手との顔合わせがあるらしい。


 親衛隊の奴らめGJ。だけどどこぞの高級レストランってなんだよ! しっかり情報を掴んでおけ、俺の天使が何処の妖の骨とも知らない相手と会うのは嫌だ。


 しかし時間が過ぎるに連れて疲弊して行く各陣営と「本当は私もお見合いは嫌なんですぅ……でもこ、校長が……」と涙目になって訴える波音ちゃんが和解調停を持ち出し、結局それぞれの勢力が落としどころとして妥協点を見出しケモミミカフェと相成ったのだった。


 本当にこれでいいのか? 女子の諸君? 主に被害を被るのは女子だぞ。


 そして僅かに残った気力を振り絞り第二希望に猫カフェ、第三希望に紅葉が提案した演劇が候補に決まり、こうして長きに渡って白熱したHRは、そこはかとなくてふてとつれずれなるままに無事終了したンのだった。


 しかし2年9組の希望が通るかどうかは後の文実及び執行部で行なわれる選定結果による。喫茶、カフェなどという人気の展示内容が競合すれば、その枠を廻って他クラスと展示件を争うことになる。


 したがって我が2年9組では明日の4時限目に行われる次回HR(担任波音ちゃんの現国)では、第一希望奪取に向かってグローバルに対応できる戦略を立てる会議及びロビー活動戦略を協議する

運びとなった。




 すっかり陽もくれて暗くなった外に出て家路に着く我2年9組の生徒たちは皆、疲労のした様子でまるでゾンビのように校庭へと歩き出した。


 相変わらず紅葉と未美が俺の両脇に陣取っている。


 昼休みに御機嫌を損ねたらしい幼馴染みの事が気が掛りになって、一歩退いた後ろを歩いている美九音の様子を窺がうと「う、んんーーーーっ」両腕を天に向け大きく背伸びした。


 長い間座っていて窮屈になっていた膝や腰の関節を伸ばす様に全身でを反リ返るって固くなっ立背中も筋肉を解す様に後ろに反り返った。


 まああれだな? 知ってはいたが美九音の奴、相変わらず起伏が少ない胸板してやがんな。


 おもいっきり反り返って胸を強調してそれかよ。


 剥きになってつまらない主調を繰り返し議論してHRで無暗に体力を浪費した重い体を引きずる様にして校門を出て路地に出た。


「じゃな美九音、また明日」


「えとね? 知h――」


「御姉様、また明日」


「狐、またね~」


 何かを告げようとした美九音の声は紅葉と未美によって戸張の降り星がきらめく夜空へと掻き消されていった。


 俺と紅葉と未美が美九音に背を向け駅の在る方角へと歩き出した。


「ねえ知泰?」


 まだ御機嫌が直っていない様子の美九音ちゃんが怖い顔をして俺に話し掛けて来る。


 ……美九音の奴、何をここまで怒っているんだ? 俺が何かこいつの機嫌を損ねることしたっけ?


 美九音の怒気に気をされて美九音に言葉を返した。


「な、なんだよ……」


 ヤベ、美九音の余りの怒気に声が裏返っちまった。


「きょ、今日はHR長引いて帰りが遅くなったし? ウ、ウチを家まで送りなさいよ……ね」


 美九音はそういうとプイっとそっぽを向いてしまった。


「お前の家は送るほど学校から遠くねぇーだろ?」


「う、うっさいわねっ! あ、あんたは可愛い幼馴染みを1人で夜道の中を帰らせるつもり? な、ななな、なんなら……ひ、昼間させたげなかった、お、おおお、背負おんぶ……させたげてもいいよ?」


 ……なんでお前は何時も上から物を頼むんだ? っつーかお前の不機嫌の原因ってそれなの?


「美九音?」


「な、なによ……あ、あんた、お昼休みにウチをおんぶしたかったんでしょ? 背負おんぶしてウ、ウチのふふふ、……太腿やお尻をサワサワしてウチのおっぱいを背中で堪能する魂胆だったんでしょ? ほんとマジキモいんだからあんたってば……」


「……なあ美九音? お前俺に触らせたかったの?」


「ち、違うわよ、バカっ! で、でもひ、ひひひ、必然的にそうなるじゃん」


「いや別に違げーし」


「それはそれで腹立たしいわね」


「で?」


「で? ってなによ」


「お前を送るのはいいとしてだ。本当に背負おぶって貰うつもりかよ」


「ウチを背負おぶるの……い、嫌なの?」


「い、いや別に嫌ってけじゃねぇーけど……」


「嫌ってわけじゃないけどなに?」


「いやな? 昼間は勢いで言ったけど、ちょっと恥ずかしい気もする」


「べ、別に背負うのが恥ずかしいなら? お姫様抱っこでもいいよ?」


「いやお姫様抱っこは無理」


 地味にハードル上がったよねそれっ!


「なんの躊躇もなくノータイムで否定された!」


 面倒臭い奴だなお前は。俺の痛々しい腕の包帯が見て分からねぇーのかよっ。


「この腕をご覧ください」


 美九音の前に包帯の巻かれた腕を差し出して見せる。


「そんなのウチの可愛さの前じゃ怪我の内に入らないわよ」


 いやね美九音ちゃん? お前がどんだけ可愛いかろうと俺の腕の怪我が瞬時に消えることはねぇーから。


「で? 俺になんか用でもあるのか?」


 本日の朝も美九音が俺を迎えに来た所為で忘れてしまいそうになるが、御存じの通り俺が今住んでいるところは、馴染んだ美九音ん家の隣じゃない。夏休みに鬼の襲撃に遭い崩壊した家を出て、一時的に姉の飛鳥ちゃんが管理しているマンションの一部屋を借りている。


 これまでと違った新しい環境にウキウキしてはいるのだが、俺にとっても美九音とこうして並んで歩く登下校の方がしっくり来るんだよな? 何故だろう。


「うんん別に……」


 なんだよそれ。用が無いなら送ることなんてねぇーじゃん、家近いんだし。


「……ただ、ただね? こうして知泰と一緒に歩いて登下校するのが当たり前になってたから、ついね」


 ……。


 つい先程まで見るからに不機嫌だった美九音が柔らかく、そしてどこか憂いが窺える笑みを浮かべて、本格的に秋の到来を待つ幾分涼しくなって来た夜空に浮かぶ月を見上げた。


 俺は月明かりに照らし出された幼馴染みの微笑に見惚れてしまった。淡い月明りを反射して輝く美九音の長い蜂蜜色の髪の毛がとても綺麗だ。


 見惚れていると、夜空に浮かぶ月を見上げたまま美九音の視線が月から離れ横目の視線で俺の様子を窺がった


「んん? なに見てんの? もしかしてあんたウチに見惚れちゃってた?」


 唇の端を少し釣り上げ勝ち誇った様子で美九音がそう言った。


「あ、いやその……」


 図星ではあるが、そんなこと照れくさくて言えないのが高校生ってもんだ。


「な~に?」


 今度は悪戯っぽい笑みを浮かべた美九音に正面から見据えられた。狐のくせにこの小悪魔めっ。


「いやさ? 月が綺麗だな~って思って……」


「えっ? 今なんっつーた? 今のウチに言ったの?」


「そうだけど?」


 そりゃ今ここには俺とお前の2人しか居ないしな。


「もっ一回言ってみてよ……」


「いやだから“月が綺麗だ”って」


「えと、あの……ありがと……。ウ、ウチ嬉しい」


 あれ? 俺今お礼言われること言った?




 その後、何故か顔を真っ赤にした美九音を久遠寺家の玄関先まで送るまでの間、一言も言葉を交わさなかったが、玄関先間で来たところで美九音が唐突に口を開いた。


「あ、ありがとね……」


「お、おう……」


「で、でさ? な、なんなら今日は止まっていけば? 送って貰っておいてなんだけど、もう時間も遅いし……」


 美九音に言われて携帯を取り出しデジタル表示された数字を読む。げっもう22時回ってたのか、マンションに帰る頃には0時回るなこれは。


「いやでもこんな夜分にいくらなんでも迷惑だろ」


 まあ先日まで居候させて貰っていたんだが。


「……ママもきっとそうしなさいって言うよ?」


「いやでもほら? 着替えも無いし……パンツとか」


「えと……あ、あるよ?」


「えっ? なんであるの? 居候していたときの荷物は全部マンションに送った筈だよなっ!」


 まさかお前っ。俺のパンツをくんかくん(ry……、してるんじゃ?


「バ、バババ、バカっじゃない? し、してないっしてないわよ、そ、そそそ、そんなこと……」


 おい美九音よ。なんで今口淀んだ? 何故視線を外したっ!


「夏休みに妖狐の隠れ里でウ、ウウウ、ウチのパンツくんかくんかしたのは、あ、あああ、あんたでしょ! パンツくらいあげるわよ……」


「はっ? いやそれってどういう意味なの?」


 くそっ今回疑われるべきは美九音ちゃん変態疑惑のはずなのに、なんでこいつの中で七霧 知泰変態認定が確立されてんの?


「ね、念のため言っておくけど、ウチのはあげないからねっ! 貸してあげるけど」


 いやお前それって……俺がパンツの見返りを求めているとでも思ってるの? 俺には変態疑惑をかけられることなんて、思い当たる節はねぇー……よ? あっ? ありましたね。


 あっ、あれか? 紅葉によって夏休みに引き起こっされた例のパンツテロの所為か、それとも波音ちゃんの件か、それに伴うおパンツ仮面のこととか……。


「ついでに言うと来八音こはねのパンツもあげないんだからねっ! パ、パパのよ。パパの買い置きパンツよっ! なに在り得ない勘違いしないでよね? キモいマジ死ねっ」


 だからなんで顔を背けて言うんだよっ! しかし来八音ちゃんのパンツ少し欲しい……興味が無いわけじゃないかも知れない。


 ほら? あの子って中2のわりに大人びてるし。


「ほ、ほんとにあんたのパンツなんか隠し持ってないんだからねっ」


「分かった分かったよ。泊まればいいんだろ? 泊まれば」


「そ、そうよ……。素直にそういえばウチの秘密を……はっ」


 ……はっ? お前今なんっつーた? お前の秘密がなんだって?


「ち、違くて……ウチのパパの秘密よっ!」


 いやそれは知りたくない。


「ウチの誤解を解くために言うけど、パパのパンツってウチのより可愛いんだから」


 ……想像しちまったじゃねぇーかっ! 無用な情報を俺に与えてるんじゃねぇーよ。それにだ美九音がパンツのほぼ全てを把握させられている俺だ、想像以上にリアルに思い浮かんでしまったじゃねぇーかよっ。


「……あのさ美九音?」


「なによ」


「なんで今日は機嫌が悪かったんだ? 機嫌が悪いと思ったらさっきは月を見て急に機嫌が良くなるったし」


 お前って狼なの? 狐なのに。あっ急に紅葉のことが心配になって来た、あいつ月に向かって吠えてねぇーだろうな?


「そ、それは……知泰がウチに“月が綺麗だ”って言ってくれたから……」


「それがどうしたんだ? お前も月が綺麗だったから見てたんだろ?」


「……あ、あんたったば、ほんと鈍感なんだから……ほんともうあんたったば死ねっ! ググれカス」


 んん? いまいち言っている意味が分からないが、今度ググってみるぜ美九音。


 To Be Continued

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