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狐の嫁入りっ ちょっと? 九尾な女の子  作者: 雛仲 まひる
ちょっと? 九尾な女の子 連載1周年記念
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~ 眠り姫 ~ その13

 間崎まざき 正宗まさむね、こいつのことを何から語ればいいのだろうか? こいつは陽麟学園高等部に通う、俺たちとは同級の高校生だ。しかし間崎 正宗という男は一介の高校生というには程遠い存在で、国が組織する妖怪殲滅組織、通称GEOに所属する式神を操る術を得意とする退魔師であり、もしもこいつが現実世界ではなく、もしアニメで登場するシーンでならばキラキラエフェクトが付加される程のイケメンで、そりゃもう微笑んで歯など見せようものなら、そりゃもうキラッキラ、超エフェクトが輝く。


 そんなイケメン間崎は以前に美九音が鬼一族の一派で酒呑童子の四天王クラスである、いくしま童子一味に連れ去られたときには、俺たちに協力して一緒に戦ったこともあるんだ。


 今こうなってから考えてみれば、こいつが俺たちに近付いた目的が何だったのか、それは今の俺には分からねぇ。


 七霧と同じ退魔の道を究めて来た間崎なら退魔師、陰陽師といった現在の社会では影に隠れ、闇に隠れ決して表の舞台には登場しない、今となっては極めて稀有な職業の頂点に古から退魔の道に君臨する七霧に対して、何か思うところがあっても可笑しくはねぇーよ。


 まあ今あれこれ考えても答えなんて出るはずもねぇーし、間崎の奴が俺の前に現れたときにぶん殴って問いただしてやればいいさ。


 間崎が現れるのを待っていると、目の前の空間に歪みが生じたと思えば、陽炎の様な歪みが人の姿えと変わっていく。


 奇妙に奇怪におどろおどろしく異様に人の形へと変わっていき、間崎 正宗が姿を現した。


「やあ七霧君。会いたかったですよ」


 間崎は爽やかな歪みの無い笑顔でそう言った。


「久しぶりじゃねぇーかよ間崎 正宗。夏休みのいくしま童子の一件以来だったか? あの時はサンキューな。美九音を襲い、俺たちを偽装空間に閉じ込めた今回のことがどういうことなのか説明してくれねぇーか?」


 俺は間崎を睨ね付け嫌味混じりに問うてみた。


「そんなことはこうなった以上、もうどうでも良いでしょう? いつもはぐらかし誤魔化しぬらりくらり飄々として態度を濁し続けて来た君が今、本気で怒っている。本気の七霧と戦う、個人的な感情として僕はこの機会を逃がしたくはないのですよ。しかも君は七霧の秘術を体現できる逸材です。そんな君を倒す、それこそが七霧を完全に超える唯一の術なのですからね」


「間崎よ? 目的はそれだけじゃねぇーんだろ? 七霧を倒した後、この世界をどうしたいんだお前は?」


「それは僕に勝てたなら教えて差し上げますよ、七霧君」


「なら、俺はお前をぶん殴って、聞き出してやんよ」


「君はまだ完全では無いかも知れないですが、僕が君を追い込み完全に目覚めさせて差し上げます。幸い君の力を封じることが出来る久遠寺さんは現在、“眠り姫”となっているのですから七霧の“神纏い”は君自身が制御するしかないですしね」


「……そんな、そんなことだけのために、間崎っお前は美九音を傷付けやがったのかよっ」


「いいえ、それだけのためではありませんが、もう良いでしょう、最初から全力で行かせてもらいますよ」


 間崎が懐からドーマンセーマンの呪法が描かれた四枚の護符を取り出し空中に投げた。


「熊童子、虎熊童子、星熊童子、金熊童子。思う存分、暴れても良いですよ」


 式の描かれた紙が空中で爆ぜて四体の屈強極まる体躯の鬼が姿を現した。


「お相手するのは酒呑童子が四天王ですよ、七霧君」


 こいつ……封印を解いたばかりの鬼一族の四天王を既に自分の式神にしてやがったのか。


 筋骨隆々の四体の鬼が地上に降り立ち、俺と間崎の間を遮った。


「さあ四天王の諸君、彼に自己紹介でもしてあげてください」と鬼たちの後ろから間崎がのたまう。


 ふざけやがって。


「でん、でん、ででん、鬼~のパンツは破れない~♪ 強いぞ~強いぞ~♪ 酒呑童子四天王が一、熊童子」


 持ち上げた両腕を肘で折り、ポーズを決める熊なんとかさん。


「五~年~経っても破れない~♪ 強いぞ~強いぞ~♪ 同じく虎熊童子」


 熊なんとかさんの右隣で腰を中程まで折って軽く膝を曲げ、両腕を下に円を描く様にポーズを取る虎なんとかさん。


「百~年~経っても破れない~♪ 強いぞ~強いぞ~♪ 同じく星熊童子」


 熊なんとかさんの左隣で虎なんとかさんとは左右対称のポーズを取る星さんとかさん。


「履こう~履こう~鬼のパンツ~♪ 履こう~履こう~鬼のパンツ~♪ タラッタラ、タラッタラ~♪ 同じく金熊童子、只今参上」


 熊なんとかさんの前で窮屈に身を屈めながら、両腕を広げ荒ぶる鷹のポーズを取りながら、奇妙に体を捻った立ち姿、つまりはジョジョ立ちでポーズを決めた金なんとかさん。


 そして四体の鬼が一斉に一度だけ柏手を打った後に、ピースサインを形ちどって「鬼のパンツ~」と声を合わせた。


 わっはははっ! こいつらバカか? 俺を笑い殺す気かっつーの! 縞々パンツを履くのは鬼娘の代名詞であるところのラ〇ちゃんか、ガールズバンドサクセスストーリーに登場する中〇 梓じゃなかった……秋山澪み(ry 兎に角、美少女限定でお願いします。


 おっさんの縞パン姿なんか見ても萌えられねぇーだろ。


「御主人様。こいつらは紅葉に任せて」


「あたしも忘れないでよね、狼」


 俺と四天王の間に割り込んだのは紅葉と未美だ。


「お前ら、これは俺と間崎のタイマン勝負だ、引っ込んでてくれ」


「だけど知くん? 相手は複数の式神を使うわ。一対一じゃないわよ、こんなの卑怯よっ」


「いいや、式神は間崎が最も得意とする術だ。あいつは術者だ。卑怯でもなんでもねぇーよ」


「御主人様」


「紅葉と未美は、その火狸に美九音にかけたしゅを解かせるか、もしくは美九音を目覚めさせる術を聞き出して置いてくれないか」


 紅葉と未美は顔を合わせ暫く思案した後で「分かった」と頷いた。


「さて始めるか間崎」


「ええ」


 間崎の言葉と同時に四天王が一斉に襲い掛かって来る。


 最初に飛び込んで来たのは、団体ポージング最前列に居た金熊童子だ。


 金熊童子の丸太の様なぶっとい腕が伸びて来る。それを腰を落として正拳を躱したところに星熊童子が水面蹴りで足を払いに来た。


 重心を下げた態勢から両足を跳ね上げて躱すことは困難と考え、反射的に背中側に倒れる様にして両足を空中に浮かせて交わした。


 星熊童子が払った蹴りが地面と足に出来た空間を通過していく。


 崩れた体制のまま背中から着地したところに虎熊童子が踏み付けに来る。


 冗談じゃないっ! 誰が踏まれてたまるかっつーの、俺様を踏んでいいのは美少女だけなんだっつーの!


 両足を持ち上げて後転倒立の要領で跳ね起きたが、そこには熊童子が待ち構えていて後ろから腰に組み付かれてしまった。


 不味ったか? このままでは……!? 


 と感じたところで体に浮遊感を感じたところで天地逆さまに景色が移り変わった。


 ちょっ! 待った。まさかジャーマンスープレックスかよ。


「残念、投げっ放しジャーマンだ。小僧」


 げっ!? 更にえげつない技じゃねぇーかっ。だが……。


 後ろに投げられた瞬間に空中で身を捻って着地する。残念だったな熊なんとかさんよっ! 事前に技が分かれば対処のしようはあるんだよ。


 そのままジャーマンに持っていかれてたら、俺には受け身を取ることしか出来ずに、完全に躱す術はなかったんだけどな。


 態勢を整えたところで紅葉から預かっている妖刀、火絶銀狼丸ひだやしぎんろうまるの柄に手を掛けた。


「さあ行くぜ銀狼丸。もう一度、俺に応えてくれっ」


 銀狼丸を鞘から抜き放ち、水の刃で一毛打尽にしてやんよっ、腐れ縞パンツどもっ。


 鞘から解放された銀狼丸の白刃から高圧力の水刃が迸る……って? あれーーーーっ!?


「ちょっ? 銀狼丸ちゃんっ! なんで水を出さないのっ」


 期待空振り。銀狼丸に何の変化も訪れず、白刃だけが鈍く輝いている。


「御主人様」


「なにかな? 紅葉さん」


 何だかそこはかとなくつれずれなるままに、ひたすら嫌な予感しかしねぇーんだけど……。


「銀狼丸は妖力切れね」


 な……んだ、と。


「それは一体どういうことなんでしょう紅葉さんっ!」


「銀ちゃんは鎌鼬との一戦で妖力を使い果たしてた。凄いわ御主人様、銀ちゃんの妖力を一気に引き出すなんて私にも無理よ」


 今、そんなことを褒められても嬉しくねぇ―よっ!


「紅葉よ。どうすりゃ銀狼丸の妖力は回復するんだ? 宿に戻って一泊するとか?」


 それで大体はおk。HP、MP共に完全回復。


「いいえ簡単よ。自分の妖力を銀ちゃんに食わせればいいだけ」


 ……あの? 俺、人間なんだけれど妖力なんてあんの?


「そうね、御主人様には無理ね」


 じゃあさ? 紅葉さんか未美さんが銀狼丸に妖力食わせてくれない?


「嫌よ、疲れるもの」


 サクッと御主人様の頼みを断ってんじゃねぇーよっ。鬼かお前は鬼かっ狼のくせにっ! マジで酷でぇよ、紅葉さーーーーんっ!


 一気に形成逆転して一毛打尽にするどころか最大のピンチに追い込まれちまった。チャンスの後にピンチありとは良く言ったもんだよな? あれ逆だったっけ?


「ちっ……」


 あっという間に囲まれちまったぜ。知くんピーーーーンチっ。


 紅葉と未美は俺の言い付けをこんな時だけ頑なに守るらしい。まったく助けに来ようともしない。


 この薄情者どもめっ! マジでヤバイな……。あんな屈強な鬼どもにタコ殴りされたら、最近メキメキと鍛えた効果が現れ出した俺様のナイスバディーでも耐えきれねぇー。

 

『ともひろ……知泰。大丈夫だよ? 銀狼丸にウチが妖力を補ったげるから』


 背中から名前を呼ばれると同時に、そっと右肩に小さな手が乗った感触が伝わって来た。


 今ここに居るはずの無い、今は眠り姫の様に深い眠りの園に居るはずの聞き慣れた声とそいつが使っているお気に入りのシャンプー、リリウォッシュシの香り。


 まさかと思って紅葉や未美、鎌鼬や四天王、そして間崎に視線を巡らせる。だが誰一人として突如現れた奴の存在に気付いてはいない様子だ。


 そうか気配を完全に消した思念体の美九音だな。


『知泰、ウチが妖力を銀狼丸に注ぎ込んだげるから、一気に三下鬼どもなんてやっつけちゃいなさい』


 酒呑童子の四天王を三下扱いかよ? お前ってば、ほんと傲慢だよな。


「なあ一緒に戦ってくれるか? 美九音」


『そんなのあったり前じゃん。知泰の骨はウチが拾ったげるんだから』


 ……やっぱり俺、死ぬのが前提なのね。


「ほんじゃま行きますか? 美九音さん」


『うん! 行くよ知泰』


挿絵(By みてみん)



 つづく。

御拝読アリガタウ。

次回もお楽しみにっ!

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