九尾な女の子 8.5 後編
こんにちは 雛仲 まひるです。
ちょっと? 九尾8.5後編です。
ではどうぞ><
なるたけ侵入者に対し威厳のある言葉と声で声を掛ける。
「あのぅー……、朝ですよ?」
精一杯強い口調で俺が怒鳴っても、薄めの唇から可愛らしい寝息が漏れているだけでなんの反応も見せない。
次はボディータッチして起こすしかない。
いやらしい気持ちなんてないんだぜ、分かってくれるよな? うわぁなんかドキドキしてきた。
そして意を決して柔らかそうな頬を突付いてみる。
「えと……起きてくださいませんか?」
「ふにゃ~」
勝機! 僅かな反応が見えた。ここはこのまま起きて頂く事にしよう。
「オキテェ イタダケマースカ? アナタ ワァ ダレェ デースカ? ココ ワァ アナタ ノゥ ウチ デハ アリーマセンヨゥ」
いかんっ! 迫る命の危機に動揺する余り、日本に来たばかりの片言の外国人みたいな喋り方になってしまった。
しかし反省している暇も時間も無い。気を取り直して今度は肩を掴み揺らしてみる。
「……ぅんふぅ♡ 」
女は寝返りを打って猫の様に体を丸めた。
ここで諦める訳にはいかない。
こうしている間にも死への足音は確実に刻一刻と近付いて来ている。俺はこの女を起こして、即座に退室してもらわなければならないのだ。
この女を起こす術を即座に考え、行動に移さなければならない。そう慎重且つ大胆に、某SF人気アニメに出ていた爆乳戦術予報士が立てる戦術プランのようにである。
っつーか焦る気持ちが思考の邪魔をするっ! 誰か俺にミッションプラン下さい。
女が寝返りを打ってからは、何度もあれやこれやで起こそうと試みたものの全く起きる気配はない。
俺は時計に視線を向け現在の時刻を確認した。
AM:7:12分。その間にも時計は刻々と時を刻んでいる。
くそっ時間が過ぎていくに連れて思考が益々ネガティブになってくぜ。目覚まし時計が時を刻む音が、命の灯を削る音に聞こえ出してきやがった。
根気よく呼び掛け揺すり続けていると女が急に体を起こした。
「ぎゃぁーっ!?」
驚いた俺は思わず悲鳴を上げた。
「にゃぁ~っ!?」
その声に驚いた女は髪を逆立たせ大声を上げ、布団に潜り込んだ。
布団を一気に剥がして女をとっとと追い出すことにし布団を盛大に剥ぎ取った。
「起きろっつーの」
布団を剥ぎ取ると女の肢体が再び露になる。
……おや? この女の頭にも見慣れたアイテムが追加装備されてるのですけども……。
こ、これは猫耳? 視線を落としてもう一方のアイテムを確認してみる。尻尾? だよねそれ。
「……ん? あんた誰?」
おいおいおい。
それは俺の科白だって、お前が誰だよっ? それになんだよルーズなシャツの着方しやがって、胸元以外ブカブカで明らかにサイズが合ってねーんじゃねぇかっ。
っつーかさ。それ俺のシャツじゃね? なに勝手に着てくれてんの?
よくよく見ると胸元のボタンが上から二つ外され、三つ目ボタンは今にも弾け飛びそうになってるではないか! あっ……嫌な事思い出しちまった。
それ俺が外したんじゃねぇーよな? 万が一、万が一だよ? 外したのが俺だとしても自分でちゃんとボタンは締めとけよ子供じゃないんだからさ。
可哀想なまでに伸びきった俺のシャツから、今にも凶悪な乳が零れ出てきそうじゃねぇーかチクショウ! それ最早暴力と変わらねぇーぞ。
主に美九音に対してだけどな。もし美九音がその胸見たら間違いなく動物虐待だってそれ。
あいつ中学ん時に俺の部屋漁ってて、俺のコレクション本(魅惑表記)を見付けてその中身見ちまって相当ショックだったらしく、その晩、俺の部屋に押し入って来るなり大泣きしながら「おっぱい揉んで」って言い出してさ。流石の俺もあん時きゃびっくりしたわ。
だってあのプライドが高くて気の強い美九音がだぜ? 顔グシャグシャにして泣き喚いてたんだもん。
あいつを宥め賺してよくよく事情を聞いてみれば、あいつ“異性に揉まれると大きくなる”っつー都市伝説鵜呑みにしちゃってて俺に頼んだらしんだけど。
いけねぇ。また横道にそれちまったそんな場合じゃねぇーのによ。
……落ち着け。
そうだ窓を空けて空気の入れ替えをしよう清々しい空気吸って落ち着くんだ。
窓を開けて外から入り込む新鮮んな空気を吸い込み、深呼吸をして気持ちを落ち着かせて、ベッドの方に向き直ると猫耳と尻尾の生えた女は、尻と内腿をペタンとべッドに下ろした、とんび座りをして子猫宜しく顔に乗せて右手を上下させながら眠気眼を擦り「ふにゃ~」と欠伸をかましている。
「おはよ知くん~♡ やっと会えたね♪」
……えっ?
「ヤダにゃ~。あたしのこと忘れちゃったのかにゃ?」
だからっ……えっ?
「もぅ~知くんのイケズ。知くんと離れてからずっと探してたんだよ? あたし」
……えっ、ええええっ!? ごめん、記憶にございません。
「酷いにゃぁ~知くんのイケズ。あたしと出会ったばかりの頃は毎晩、あたしをベッドまで抱っこして連れていっくれたし一緒に寝てたのにさ。あたしが嫌がっても無理やりお布団に押し込んで、逃げようと暴れても強引に抱っこして無理矢理♡」
「あはははっ……。それって俺が強姦魔みてぇーじゃねぇか! 絶対嘘だろそれっ」
頼む。嘘だと言ってください、お願いします。
「ほんとだよ昨夜だって、ね。………………………………きゃっ♡ 」
\(^o^)/オワタ
終わった。幾ら記憶になくても昨夜の事も定かでない上に、この女の言う事が万が一本当で、もしこの事が美九音に知られれば……俺のプロフィールが確実に変更される。
七霧 知泰 高校2年生 享年17歳。
チ~ン。ハイっ死んだ俺死んだ。
NOーっ! 若過ぎる余りにも悲し過ぎる。
初めての[18禁条例違反]の記憶も素敵さもいろいろ知らないまま死ぬのなんて、余りにも悲し過ぎるだろ? ……俺の純潔返してぇっ!
悲しみに襲われた俺は暫く枕に顔を埋めて泣いたさ。
枕に顔をているとついに呼び出し音が鳴った。
Ping Pong♪ 『知泰~起きてる~』
呼び出しベルの音とスピーカーから流れてくる声は聞き馴染んだ幼馴染の物だ。
いかん! ついに美九音がきやがったっ。
Ping Pong♪ Ping Pong♪ pin♪ pin♪ pin♪ pi♪pi♪pi♪pi♪pi♪pi♪
『きゃははっ。これ面白い~ぃ』
美九音の野郎。朝っぱらから呼び出し連打してんじゃねぇーよっ。なんの嫌がらせだよこれ?
玄関のドアが開くと共に、一階から生美九音の声が聞こえて来る。
「ねぇ知泰~起っきしてる……むむっ? ウチの知らない女の匂いがするっ! ……あれ? この感じって妖?」
もう駄目だもう駄目だ。
この女を押し入れに隠しても鼻の利く美九音に直ぐに見つかちまうって、ギャルゲーみたいに修羅場るって。もう修羅場ってるみたいなもんだけど。
どうする? どうするよ俺っ。
俺がバタバタ焦っている間に美九音は家に上がった様だ。そして階段を昇って来る足音が近付いてくる。
近付く足音がいよいよ死へのカウントダウンに聞こえるぜ。
「知泰の部屋から妖の匂いがするぅー。 ……はっ!? 知泰っ知泰無事なの? 返事してぇっ。 ……今助けたげるかんねっ」
「だ、大丈夫だ。直ぐに起きっからリビングで待ってろっ」
「……ダメだよ知泰にあげた御守りなくなっちゃったし、……ウチ心配だもん。もし……知泰死んじゃったら、ぐすっ、ウチ……えぐっ、ウチは……」
美九音。……泣くくらい俺の事心配してくれてたのか?
「えぐっ……。と、知泰死んじゃったら……ぐすっ」
泣くなよ美九音……。俺、なにやってんだろな? 身に覚えが無いとはいえ知らない女と一緒に布団で寝てるなんて、くそっ心がチクチク痛むぜ。
神様聞いてくれ俺、反省します。あいつを心配させる様な事して傷付け泣かせてしまってること……。これからは幼馴染を大切にしていきます。もうちっぱいなんて気にしません、言いません。無い物強請りは致しません、でっぱいなんて求めません。
欲しがりません無い物は。だからお助けくださいこの修羅場から。
「だ、誰がウチにいっぱいプリン貢いでくれるの?」
前言撤回っ! そっちの心配かよチクショウ俺の懺悔返しやがれっ。
「ねぇ知くん?」
いかーんっっ! こいつを早くなんとかせねば。
……!?
「ね……」
ヒョイ。
「きゃっ」
ポイッ。
「にゃ~~~」
ガラガラガラガラッ、ビッシャッ。
ふぅ……ミッション終了。
バタン。
「……や、やっ! お、おはよ美九音ちゃん。今日もアホ毛が可愛いね」
「……?」
「美九音、さん?」
「知泰? これなーに?」
「これを見なさい」という意を込めて顎をしゃくる美九音ちゃん。
その先には脱ぎ散らかった女子用制服があった。
ぎゃぁぁぁあああ。
まぁなにが起こったかって? ふっ。……俺を不憫に思ってくれるなら、なにも聞かずにそっとしておいてくれ。
次回、本編突入 第二章 にゃんと? キャットな女の子
御拝読ありがとうございました。><
次回から新章突入です。
第二章 なんとっ? キャットな女の子 狐と猫♡
俺得ですがお楽しみに^^
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ではでは次回をお楽しみにっ!