第6話 問題発覚
side:キヨシ
今朝起きたらリーンさんとトールズさんが興味深げに俺を見ていた。
二人いわく
「長く生きてるからいろんなものを見ているけど、寝ている霊樹族の分霊なんて初めて見た」
だそうだ。
長に聞いたところ、普通の霊樹族は睡眠はとらないがこまめに分霊を戻すそうだ。みんなちょいちょい居なくなると思ってたんだがそういうことか。でも、俺 樹に戻れないしなあ…。
=おーい、キヨシきいてたか?=
=えっ?=
しばらく、考えていたら星見から念話が来た。星見は俺と一番歳?の近い(といっても10年差)霊樹で仲がいい。
周囲を見回すとほとんどの霊樹が集まっていた。どうやら話し合いが始まっていて、星見はそれをいっているらしい。イイヤツだ、ホント。
=わりぃ、聴いてなかった。で、何はなしてんだ?これ=
=はあ、当人がこれかよ…。あのな、オマエ真名がわかってねえじゃん?けど今日の儀式で真名をいわんとならんらしい。=
=えー、聴いてねぇよ。どうすんだよ?=
=それはまだ。霊樹側だけで決められねぇし、エルフ呼んだとこ。=
=そっか=
はぁ。真名がないのがこんなに大変だとは…。
あ、ちなみに「星見」は真名じゃなくて愛称。自分が相手より強い存在の場合、真名を呼ぶと相手を縛ってしまう事もあるので基本的に真名で呼び合うことはないらしい。だから人族とかエルフとかには名乗るための個人名や家名がある。それが霊樹の間じゃ愛称ってわけ。
ん、エルフたちが来た。どうなんのかなあ。
来たのはリーンさん、トールズさん、男性衆が二人で、トールズさんいわく「成人済みの者だけで来た」とのこと。男性二人はケントとシュワルと名乗った。
長が簡単に問題と俺について説明すると、エルフ四人で相談したあとトールズさんから提案があった。
「我々エルフ族には〈真名定〉という儀式がございまして、ほとんどすべてのエルフがそこで真名を知ります。ですから、キヨシ様も受けられてはどうでしょう?ちょうど、巫女もおりますし。」
そんな便利なのがエルフにはあるのかあ。でもなあ…
=『ほとんど』というのは?それに霊樹族に効くんですか?=
あ、俺も気になったこときいてくれた霊樹がいた。
「儀式を受けるのは五歳ぐらいなので、その前に自分で気づく者もいるのです。効くかどうかはわかりませんが危険はありませんし、他種族にも同じような儀式がありますから。」
と、今度はリーンさんが答え、「やらないよりは…」ってことで俺は儀式を受けることになった。
その後しばらく、段取りなんかの話し合いをして、今日やるはずだった成人の儀式は明後日に延期して、今日は夜、俺が儀式を受けることになった。
儀式をすると寝てしまうらしく結果は明日の朝だそうだ。その間に長たちは俺の代役を仕込むんだってさ。
儀式は魔術の一種らしいから楽しみだ。