第3話 霊樹
side:清(仮)
「”うーーん。”」
なんで俺がうなってるのかてぇと、動物方の分霊になれないんだ。
素晴さんからの手紙を読み終えた俺は自分がいま人型の分霊になってるんだと気付いた。違うかもしんねぇけど、手紙とったときの手が人のそれだったし、透けてたし。そんで能力把握のためにも動物型になろうとしたんだ。けど、なかなかどうしてこれが難しい。人型になったときは無意識だったからな。
「”どうしたもんかなぁ。”」
=ふぉっふぉっふぉ。目覚めたとたん人型になったと思ったら、何を悩んでおるんかのう。=
つぶやいたら頭に声が響いてきたから反射的に振り返ったら、爺さんがいた。
しかも俺みたいに透けてる。霊樹族か?とりあえずきいてみよう。
「”…どなたでしょう?”」
=しかも発音する(しゃべる)ときた。だが、このへんの種族の言語ではないのう。すまんが、念話でたのむぞ。なに 強く念じればいい。=
あぁ、霊樹はしゃべんねぇのか。手紙にもあったな、念話……こうか?
= ―――――― 誰?=
=ん。最初はそんなもんじゃろうて。=
念話の成功に喜ぶとともに敬語でないことにあせった俺だったが、なんか大丈夫らしい。
=で、わしの真名は********じゃが、そのようすだとわかるまい。一応〈霊樹の長〉とほかからはよばれておる。=
〈霊樹の長〉!!2巻のか?俺 もしかして物語に介入したりできんのか?
とゆうか真名ってなんだ?聞き取れなかったぞ
困惑する俺を見て、爺さん もとい 長はつづける。
=真名は〈その存在の名前〉みたいなものじゃ。おぬしにもあるはずじゃ。=
= ――――俺は 山口清 だ。=
前世の名をいってみたがどうもしっくりこない。
そんな気持ちを知ってか知らずか長はいう。
=それも名前じゃが、それとはまた質の違うモノじゃ。…最初から人型だったのはその名があったからかの。 にしても、真名がないということはないじゃろうし、困ったのう。樹にもどれないうえ、力も弱まるぞい。=
=――じゃあ、どうすれば?=
念話には慣れてきたが、真名がないとまずいようだ。
=思い出すほかないのう。とりあえずはキヨシとしてその姿でここになれていけ。先達として手助けぐらいしようぞ。=
=!! よろしくお願いします。=
ここでは、右も左もわからない俺は、とりあえずは長にいろいろ教えてもらいながら生活することにした。
side:長
十年ぶりの新入りは何とも奇妙なヤツじゃった。
目覚めたかと思えば練習もせずに人型の分霊をだしおった。わしだって小動物からいくつかの段階を経て一年がかりで人型をだしたとゆうに。
しかも、主人格が分霊にあるようでわしの知らん言葉(後で聞いたところによるとニホン語らしいのぅ)でしゃべっておった。なにやら悩んでいるようじゃったから(念話で)話しかけると、最初こそ戸惑っておったがすぐに慣れて話が聞けたぞ。
本人いわく、真名はわからないが名を「ヤマグチキヨシ」といい、「前世の記憶」があるらしいのぅ。しゃべっておった「ニホン語」とやらや名、そして人型の容姿も前世の記憶によるものだというこつじゃ。
悩んでいたのは「動物型の分霊になれんかったから」らしいのじゃが、真名を思い出さんことにはのぅ。
キヨシはこの十日程でこの近辺の地形や国についての知識をあらかたおぼえてしまいおるし、他の者と比べて優秀で将来が非常に楽しみなんじゃがのう。
そういえば、あとひと月ばかりでエルフの祭じゃった。エルフの長や巫女がくるじゃろうから知恵を借りてみようかの。エルフらは魔術や呪い(まじない)に強かったはずじゃ、いつも貸すばかりの知恵じゃたまにはよかろう。
リーン殿は元気かのぅ。楽しみじゃのう。
ちょっと説明です。
まず、人型の分霊について。長は一年といってますが普通の霊樹族は4,5年かかります。
つぎに、〈大地の巫女〉について。エルフ族は樹木と精霊の中間な霊樹族を敬いその長をあがめています。その恐れ多い長と言葉をかわすのが〈大地の巫女〉で、だいたい160歳で役目につき700、800歳までつとめます。
ちなみに、霊樹族はエルフ族のことを「他のあまたある部族の中で比較的、近しいもの」ぐらいにしか考えてません。
そんでもって、「””」の中は日本語です。一応転生ものなんで自動翻訳的なオプションはありません。念話では”思い”をそのまま伝えるんで使用言語が違っても通じるってことで…
リーンさんは次話で出す予定です。