第2話 自覚
side:素晴
山口くんはずいぶん変わってましたねぇ。
急に”狭間”なんかに呼び出されて、転生の話なんかされたら普通の人はもっと取り乱したりすると思うのですが……。
まぁ、敬語で頑張って話してましたし、好感持てますね。
さて、山口くんは何に転生したんでしょうか。
……
……〈霊樹〉になってしまいましたか。これは予想外でした。
たしかに成長すると人間並の知能がつきますし、念話とはいえしゃべれますんで転生先の条件には合致しますけど、あんまりだろうし。
上司に報告もかねて掛け合ってみますか。
「―――あっ、係長。素晴です。今回の転生者なんですが――――はい、それで彼 その世界の樹木の類になってしまいまして、どうにかなりませんか?―――はい?規則だから仕方ない?ですが…
―――はい。わかりました。」
仕方ない…ですか。
山口くんなら大丈夫な気もしますが、詫び状くらい送りますか。
―カリ、カリカリ……―
side:(元)清
俺は、さわやかな風と木々の濃い息吹を感じて目覚めた。
どうやら、森の中のようだ。しかもだいぶ深い。
目線の高さからして俺自身は木の上にいるみたいだが………
体が動かせないぞ!?
なんでだ?360゜きちんと見えるし、足元から水を吸い上げられているのもわかるぞ。
………ちょっと待て、俺。
「360゜」って真後ろまで見えてるつーことじゃねぇか!
しかも、「足元から水を吸い上げられている」ってなんだ!?
自分の体を見ようと意識したとたん、一瞬の暗転。
そして、目の前には淡い黄緑の光を纏った大樹が在った。
「これが俺か。」
ふと出た言葉だったが不思議と確信が持てた。
そうしてしばらく大樹を眺めていると、頭上から白い紙切れみたいのが落ちてきた。
手に取って見てみると、封筒だった。
…あ、取れるんだ。っていうか、俺の手透けてるし!なんで?
考えてもわかりゃしないから、封筒を確認することにした。
「えっと…、『素晴』さん?
あぁ、死神の人か。んでなんだって?――山口くん 君の転生先はランダムで“霊樹”になってしまいました。霊樹は分霊(人型・動物型)を出せますが、行動範囲がほとんどその森に限られてしまいます。しかし、こちらの規則で転生先の体は変えられません。申しわけありません。――か。」
ってなわけで皆さん 俺 山口清は木(なにやら普通ではない)に転生しました☆
……アレ? 俺、もしかして冒険できないんですか? orz
主人公超困惑中。希望、潰える。。。。か?