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えっ!?冒険できないんですか?  作者: 虹彩
後悔先に立たずして~モノガタリの始まり~
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第44話 勇者との決着


 side:キヨシ


トキと念話で話してから3日。どうにか話が付いたらしく、トキたち〈黄李の楯〉と勇者一行はスロキアに到着した。俺は“対魔王”の下準備として〈太陽の氏族〉領で動いていたのでこっちまでやってきてもらうことにした。


瓦礫を脇に寄せて積み上げていただけだった特設舞台跡地を整備していると怒りに近いやるせない思いと緊張が湧き出してくる。ここだけじゃない、この町のいたるところに魔王の爪痕が残っている。こんな被害を笑ながら出すような奴に話し合いが通じるのか、通じたところで本当に俺は許せるのか……

俺は今とてつもない“エゴ”で動いている。その事実が重く圧し掛かって、たまらず、俺は指示を出すことに夢中になろうとしていた。

9割がた均し終わり、魔術陣を描き始めたところでトキたちがやってきた。


「おー、おかえりトキ。シンもリズもみんな今回はありがとな。」


「あぁ、ただいま…ってなんか変じゃね?」

「久しぶりだな!キヨシ。ま、ちょっと変だな。」

「クフッ…いや依頼もらうんだから礼を言うならこっちだぜ、キヨ。」

「そうそうキヨシくん、私たちの仲じゃない」

「まあ、それなりにお代は頂くけどね!」

「んで、依頼の内容はどうなんだい?」


勤めて明るく話しかければトキ、カイン、シン・・・と〈黄李の楯〉の面々がおかしげに言葉を返してくる。それには安心したけど…やっぱ緊張してるなあ、自然に話しかけたつもりで言葉選びを間違えたみたいだ。


ほぐれてきた空気の奥に、ふと、硬い雰囲気を感じた。

出所は、案の定というかなんというか、やはり勇者とその一行で、緊張なのか嫌悪なのかピリピリしているうえにどうしてかしんみりと暗鬱な表情だった。

……まいったな。


「話はあとでするからまずは荷物おいてこいよ。」


トキ達に移動を促す。まずは勇者一行と話さないとならないみたいだ。

ジェイは事情を汲んでくれたらしく、「じゃあ、いくか。結構強行軍だったろ?」と先導していく。そんな様子がちょっと新鮮だった。


さて、と。性懲りもなく剣を抜かんばかりの形相になっている騎士のカミオさんをできる限り視界に入れないようにしつつ、俺は勇者に歩み寄った。

前回のこともあるし、今回は建前は残しつつ、素直にゆこうかな。…表情(かお)歪んでなきゃいいんだけど。


「まずは、スロキア首都へようこそ。

魔王(この件)に関してはこっちの都合で振り回してすまないと思ってる。キレたりして大人げなかったとも。…でも、そう険悪にならないでくれないか?勇者とその一行がそんな雰囲気だとみんな不安がるんだ。今回〈黄李の楯〉のみんなやエルフの何人かにはかなり近くで待機してもらうことになる、彼らが自信を持って動くためにもアンタたちが…俺もだけど、堂々としてなきゃなんだ。」


―――だから、頼むよ。

流石に言葉にはしなかったが、本音はそれぐらいのことを思ってた。

なにせ、勇者っていったら一種カリスマだ、エルフにだって勇者のの伝承が残ってるぐらいの。それが後付けだろうが望まないモンだろうが関係なく期待と影響力がある。その勇者(主人公)がこれじゃあ周りに伝播する。

実際、陣を書いてもらっていたエルフには「勇者たちまで来てくれた日には千人力ですよ」なんていう人もいたぐらいだけど、今は不安そうに窺う人がちらほらいる。パーティーじゃ人の機微に敏感な性質(たち)のジェイだって視線こそ向けないけど不信がってた。

この方針はよっぽど勇者が弱体化してなきゃ成功するんだけどな…不安が募ればイレギュラーだっておこりやすい。それになにより、直近で待機してもらうエルフのみんなを無駄に怖がらせたくない。


「はぁ…なんだってこんなに似てんだ。信用したくなるだろ。」


面食らったような、意外そうな顔をして黙っていた勇者が、心底困ったとでも言うように小さくこぼした。その声には若干楽しげな笑いの色もあって、勇者の仲間はその言葉にかなり驚いているようだった。

俺自身、初めは意味を量りかねたが“信用したくなる”というプラスの言葉に驚いていた。まあ、”似てる”が“兄貴(山口匡)に”だということ気付いたら流石に苦笑せざるおえなかったけど。

今、嫌そうな顔なんだろーなぁ、俺。


「…まぁ今回ばかりはこの巡り合わせに感謝するよ。」


今更だけど俺も信用できそう、こいつなら。ま、こいつとじゃなきゃ仲違いもしなかったけどな。


「「んじゃあ(まあ)、よろしく。」」


気付いたら右手を差し出して勇者と握手を交わしてた。

ああ、こいつも兄貴のコトをホントに信頼して、慕ってんだな。って理解わかったから。

あんときは、頭に血ィ上って 一方的に(…でもないか)ブチ撒けて、突っぱねた。でも、 結局あれって同族嫌悪ってやつだったんだろーな。


「なに、通じ合ってんですか!?そんな奴信用なりません!!」なんて喚いてるカミオさんは放置することにする。…あ、アリアさんに〆られた。


ちょっと…いや、かなり強引でしたが勇者が裏切っても面倒なので和解?させました。ブラコン キヨシ再来でした。

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