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えっ!?冒険できないんですか?  作者: 虹彩
後悔先に立たずして~モノガタリの始まり~
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第42話 開幕あるいは幕間(下)

お待たせしました。


 side:勇者


前線に着くと男女6人のパーティーが魔族と取り巻きの魔物と戦っていた。若いエルフのアーチャー以外は三十代のようで動きもベテランっぽい。


みんなと目を交わして、参戦を確認する。…よし


「加勢する!!!」


走り込みながらリーダーらしき片手剣の男の横へ。すると、そいつはこちらみやって方眉をあげた。そして青髪の両手剣使いに声を掛けた。


「ん!?…これは驚いたな。勇者サマじゃないか?  おいシン、シュベリエの勇者が加勢してくれるらしいぞ。」


「そりゃ頼もしいなっっと。 よし、ミコラぁ下がれ!悪いが勇者さんらも一回下がってくれ。うちの後衛がデカイのかます!」


言いながら青髪の男が走る。どうやらリーダーはコッチだったらしい。

ただ、後方を見ても魔術師らしき女性とさっきのエルフしかいない。下がるほどの威力が出るのか?

その場で応戦し続けている強引に腕を引かれる。


「勇者だか知らないけど当たるとヤバいよっ…ってか〈黄李の楯〉(うち)のスタイル知んないの!?」


「すまない。そもそも――」


君らのパーティーがわからない。そう続けようとした言葉はドーッという音にかき消された。振り返ると魔術師の両手の()から太い水流が何本も吹き出している。初級の[放水]だろうけど、凄い威力だ。

でも、それだけだ。これじゃあ、魔族どころか魔物も殺せない。そう思って戻ろうとしたら、こんどは両腕を掴まれた。


「なにす――って、クレハ!?」


「馬鹿?魔力感知は基本中の基本。デカイの来るわよ!」


掴んでたのは目を釣り上げたうちの魔術師(クレハ)だった。


「何言ってんだ?このパーティーの魔術師はあの女の人だけだろ?」


「そうだ。しかも彼女はすでに魔術を行使中だ。」


同じようにアリアさんに引き止められているカミオが俺の言葉に同意する。けど、二人の表情は心配から呆れに変わる。クレハが何かいい掛け、ちょっと驚いた顔をした後に「見たほうが早いわ」と後ろを見やった。


そこには弓をつがえたあのエルフがいた。矢には高密度の魔力がまとわりついている。それが次第に文字を形作りって……


「…〈碧風式〉?」


矢と一緒に放たれたのは五本ほどの氷の槍。冷気を纏い高速で飛んだそれは水流共々魔物を凍らせる。さらに氷が広がり樹木のように伸びていく。

後には唯一、魔力で体を覆い抵抗できた魔族が呆然と立っている。なんて、威力だ…

そこに場違いに気楽な声がした。


「あー、さっすがに魔族は無理かぁ。

 カインー、氷はよろしく! シン、次要るなら2ゼンかかるってよ。どうするぅ?」


そのエルフの声に応じてカインと呼ばれた 双剣使いが踊り出て、氷塊と化した魔物を砕いていく。

ハッとして周囲を見れば、同じような顔をしたカミオと、厳しい視線のアリアさんがいた。じゃぁ、他のみんなは?


「他の人らには周りの魔物たち(団体さん)の相手に回ってもらってる。取り巻きはこっちでなんとかなるからな。」


疑問に答えたのは、シンというらしいリーダーで「おフタカタはよっぽどこっちが気になったようだけどよ。」と片口をあげた。

俺はこんな状況で呆けていた自分に愕然とした。しかし、シンの顔が真剣味を帯びたのを見て気を取り直す。


「とはいえ、だ。正直、俺らじゃぁ手負いでも魔族は荷が重い。こっちは任せて構わないか?」


「!…わかった。」


目の端で魔族が動き始めたのがわかった。悩んでは要られない。


「向こうに行ったら俺の仲間にこっちに来るよう言ってくれ!」


先に駆け出したアリアさんとカミオを追いかけながら、それだけ伝える。

できれば、ダメージが残っているうちに討ち取ってしまいたい。俺はそんなことを考えながら剣を構え、〈陣取り〉をしつつ駆けた。


    ・

    ・

    ・


「待て!! 逃げるな、卑怯もの!!」


カミオが叫ぶ。一瞬の閃光の後、2つの影が空気に溶けるように消えた。

くそっ、後一歩というところだったのに逃げられた。別の魔族がやって来て、来るなり転移魔法を発動させやがったんだ。

本当にこんなんで魔王を倒せんのか!?


ともあれ魔物はそのままだ。

怒りに任せ剣を振り、残った魔物をほふっていく。魔族(指揮者)がいなくなった魔王軍の魔物は動きが乱れていた。幾分倒すのが楽になったようで、防衛に徹していたドワーフたちも逆襲にでる。


しばらく戦い、俺たちは魔物を一掃することができた。魔族は逃したが、スワの首長も感謝して全面協力を約束してくれたので、よしとしたい。

それでもやっぱり、技や力だけでない強さを鍛えなきゃなんないだろう。今日のようにならないためにも。



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