第40話 剣線が必要ですか?
side:キヨシ
よく考えたら…ってか考えなくても、大人な対応できてねぇじゃん、俺。
ほんと考えが 人ならざる者 寄りになっちゃってるよな。国とかどうでもいいし、正直生態系が壊れすぎなきゃ俺がしらないヤツがどうなろうと知ったことじゃねえ、って気分だ。
…だとしても! 相手の国あざけるような挑発しちゃだめじゃん、俺! 人間にとって国ってチョー重要だよ。とくに国に仕えてる人とかにポンと言っちゃだめじゃん!
まあ救いなのは勇者が大して怒ってないことかな?まあ、原作通りのあの考え方じゃ怒りようもないか。
あ~、でもやっぱ治癒師(=神官)とか険悪だし、アリアさんのオーラがヤベェことになってるしカミオさんなんか顔真っ赤にして切りかかってきてるし…
「偉大なシュベリエを愚弄するとは……。許さんぞ!貴様!!」
「うっわー――[006009-shi]発動――ってなると思ってんの?」
サラッと金属性で楯を出して防いだ俺は、むしろその無鉄砲さに別の意味で”うっわー”だった。
俺の、というか〈碧風式〉の強さを知らないんだろうか?〈碧風式〉は俺ほど出ないにしろ圧倒的な発動スピードと正確性、燃費の良さを誇るのだ。まあ、最低でも魔術師になれるレベルの魔力量が要るから使用者はあんま多くないけど。
「カミオ、やめろ!」
「退きなさい。カミオ・セルナンデ」
さて、勇者とアリアさんからスットプがかかったし、話を続けるか。
……だから早く退いてよ、カミオさん。
「まあ、向こうは殺しに来るでしょうし、”初めから話し合いで”とはいいません。対魔王の時は私…俺も出ますんで、向こうをどうにか抑えて、もしくは消耗させて…ということで。」
「そんなんで平気なのか?随分と気楽なんだな。周到な匡とは似ても似つかないな。」
剣を収める気配すらないカミオさんを避けて、ほかの勇者一行に向き直りながら簡単に話す。すると、勇者はハンッと鼻で笑いながらよくわからない文句を言った。…子供っぽいし、意味不明だけどなんかムカつく…。
「兄貴は関係ねぇだろ…。 アンタが史実どおりの勇者なら平気だよ。そもそもアンタらだけで”封印”には持ち込めるんだ、ほとんど相打ちだけどな。そこに俺が入るんだ負けはしないだろ?
それに、向こうは俺がほしいみたいだしな」
決定的な根拠はないが推察を挙げてみる。
納得はできなくとも一応の理解の色はあるようだ。良かった…ここまで来て決裂ではどうしようもない。
「……まあ、やるだけなら構わないか。ただ無理だと思ったらすぐに討伐に切り替えるからな!」
なにか思うところがあったのか、勇者は少しあきらめたような理解を浮かべ落ち着きを取り戻していた。
みんなも、それでいいか? と一行に確認をとる勇者はなかなかに勇者らしい。俺が口を滑らした”封印”という単語は耳に止まらなかったのか気にしていないようだ。
話しは終りだ、とばかりに去っていく勇者とそれにつき従う一行。唯一アリアさんだけは出きるまえにお辞儀してくれたが、ほかの人は勇者に倣っている。自信ありげなほんのりカリスマオーラが羨ましい…こともなくなくなく(略)ない。
そのあとすぐ、エルフの一人に様子を見に行ってもらい、もし必要ならトールズさんのところや商店、宿を案内するように頼んだ。会合は会合で話し合わないといけないことがあるからな。
エルフは今回のことに全面的に協力してくれるとのことで、魔王戦も兵を同行させるというのだがそれは攻撃に巻き込みかねないので危険だと思う。俺としてはむしろ、話し合い後の魔王を人族とくに〈シュベリエ王国〉から匿う、というか保護する方で協力してもらいたいと思っている。
…あれから、それなりの日数が経っている。ルークも動き始めるだろうし早くしないと。
①勇者=久遠音羽はキヨシ並みのバカです。すぐ子供っぽくなります。
②音羽は自分の世界の 山口匡 に執着や依存に近い感情を持ってます。しかし、彼の中ではあくまで友情の範囲のようです。
(まあ、キヨシも若干?ブラコンですし 匡が好かれやすいのだと思って下さい。)