第38話 世界にもいろいろあるんです
side:キヨシ
たしかに さぁ、俺「勇者に会っときたい」って言ったしさぁ思ったけど、まっさか勇者側からやってくるとは思わなかった。…言って対して日をあけないうちに朝一ぐらいで来るなんて。
しかも
「えっ? マサシ?うそだろ…」
「トワ様、霊樹殿とお知り合いなのですか?」
なんか勇者が俺の兄貴知ってるっぽいんですが!!? なんだよソレ?!ドッキリ?
あ、ちなみにお仕事モード的な意味で今の俺は〈学術祭〉のときみたいな大人型の分霊になってます。んで匡ってのは兄貴の名前だ。
……じゃなくて、なんで勇者―――虚構の世界の住人:久遠音羽が俺の兄貴を知ってるんだ!?兄貴は一定以上の新密度がなきゃ男でも名前呼ばせねぇ。勇者の雰囲気もただの同級生とかそんなレベルじゃなさそうだし…
「―――てんのか。おい!匡!! なにお前死んじゃってんだよ!」
だから、俺は兄貴じゃねぇ。それに、兄貴は死んでねぇ!医者になるっつってたんだからこんなとこで油売ってるわけねえだろ…!
……ヤベェ…泣きそう。体感だって60年たってんのに、前世のコト割り切ったと思ったのに
…クソっ
side:勇者
”革新者”あるいは”碧風の祖”と呼ばれる変わり者の霊樹がいることは、すでに知っていた。
霊樹という種族は長命だが住む森から出られないというのが通説らしいのだが、彼は特殊な方法でそれを半ば克服しこの〈シュベリエ王国〉にもやってきたことがあるらしい。そして彼は〈種族魔法〉を繰る霊樹でありながら新しい魔術〈碧風式魔術〉を協力者とともに完成させたらしい。
そして数日前、”革新者”が魔王におそわれたという知らせが王都に入ってきた。
魔王襲来を信じていなかった人々もにわかに慌てだし、王都いや大陸のほとんどが混乱と恐慌に陥りかけた。それほどまでに”革新者”の彼は大きな信頼を寄せられているのだろう。
ちょうど俺は旅立つ用意をしていたので、彼がいる〈スロキア国〉に向かうことにした。
よくあるファンタジー系のRPG的なこの世界の原理と俺のこの役どころからして、この”革新者”の話を聞くか、共闘するように勧誘するか、そのあたりが”正解”なんだろうと思ったんだ。
ただ〈碧風式〉にアルファベットやアラビア数字が使われているのが気になってはいた。もしかしたら俺とは別口に元の世界からこっちに来てしまったやつがいるのかもしれないとは思っていた。
〈スロキア国〉その中でも〈大地の氏族〉領に着いてエルフと会合中だという”革新者”に(多少 無理を言って)会うことになった。
けれどまさか、紹介された彼が
「こちらが”革新者”呼ばれていらっしゃる霊樹のキヨシ様です。」
「よろしく。ぜひお会いせねばとは思っていたのですがまさか勇者様がご足労くださるとは。」
「えっ? マサシ?うそだろ…」
「トワ様、霊樹殿とお知り合いなのですか?」
自分の親友の姿をしているとは、思いもしなかった。
向こう側がやや透けた幽霊のような状態で、初対面特有の笑みを浮かべ右手を差し出すアイツ。他人に向けるような表情に胸が詰まるが、同時に懐かしい記憶も甦る。
中学に上がったばっかのころだ。何でもできるアイツが何となく気に食わなくて突っかかった。俺はけんか腰だったと思うんだがアイツは大して気にした風でもなく、「久遠だったか?よろしくな。…買うのはかまわないけど場所は選べよ」と妙に大人びた雰囲気で右手を差し出した。結局、空き地だかで喧嘩して何となくそのまま仲良くなったんだ。
大学こそ違ったが高校は同じとこに進んだ。高校入ってすぐ両親が死んで、それでも自棄にならなかったのはアイツとその家族のお蔭だった。俺がバイトしながら短大に行くことにしたのもアイツの勧めだった。アイツ自身は医学部に進んで医者になるって言ってたのに…。
「なあ、おい匡。この世界にいるってことはお前も死んじまったのか?」
周囲がざわめく。まあ、そりゃそうだよな初対面のはずだもんな。
けどなんで、匡まで不思議そうな顔してんだよ。苦々しげな辛そうな雰囲気もあるけど俺のとはなんかがちがう。なんで
「なんでだよ…なんでこんなとこにいんだよ!?医者になるんじゃなかったのかよ。
聞いてんのか。おい!匡!! なにお前死んじゃってんだよ!?」
匡の顔が泣きそうにゆがむ。エルフたちが剣呑な雰囲気を出し始めた。
そんなことかまうもんか、とばかりにいい連ねようとした瞬間、匡の体が蜃気楼のように歪んで―――
「だから、俺は兄貴じゃねぇし、お前なんかも知らねえ!!それに、兄貴は死んでねぇ!医者になるっつってたんだからこんなとこで油売ってるわけねえだろ…!」
「…はっ?」
代わりにいたのは泣きそうな顔で啖呵を切るアイツに似た少年だった。
勇者登場させてみました。
が、しかし話が進みません~~~(泣
滞ってますが~トワノウタ~も頑張ります。ちょっと関係してるんで。