第37話 取り敢えずできるところから
もう一丁っ!
side:キヨシ
「それが事実ならば…、いや気付いているのならば〈シュベリエ王国〉は全世界に対して重大な裏切りをしていることになります!!」
言い直したエルフさんは俺が嘘をつくはずがないと思ってるんだろうが、それはどうなんだろう…?
まあ、物語のすじ的に”事実”なはずだ。
で、その”事実”ってのが何か。という話だけど……先に『トワノウタ』を軽く説明しとこうか。
『トワノウタ』は三冊二部プラス番外一冊で構成された異世界ファンタジー、剣と魔法の世界だけどやや変り種だ。
第一部は召喚された勇者が魔王を封印するまでを描いている。―――帰還した勇者は王国で暮らすのだけど魔王の「僕が死んでもどうせ世界は滅ぶよ。」という言葉に悩まされて終わる。封印さえてるってとこがミソ。
第二部はその数十年後、魔力の減少によって窮地に追いやられた世界を(なんと)勇者の娘と封印されてた魔王が救う。―――ここで魔王の意味深発言の謎、魔王の正体が解るわけだけど、なんでそんなこと知ってたのかは番外になる。
そんで、問題の”事実”が番外の内容なんだけど「〈シュベリエ王国〉が魔力消失を予期していた」ということと「原因を知っていた」ということ、「秘匿された王女(庶子)が原因の除去のための人柱にされていた」こと、「その少女が魔王の異父妹だった」ことだ。
ちなみにこの原因は魔術で生成された余分な”歪み”がたまったこと。世界に負担がかかったために、世界の自浄作用が魔素・魔力ごと”歪み”を消そうとしわけ。魔力がなきゃ”歪み”はできないしな。
俺がこの王女を救えていたら世界は変わったのかもしれない…。けど、過ぎたことを言ってもしかたがないから、いまはどうにかして被害を減らす方法を考えると決めた。だから
「勇者に加担して魔王…ルークを倒せばしばらくは平和かもしれない。けれど、根本解決ににはならない。どうか、みなさんも協力してください。」
力強く頷くみんな、頼もしい…けど、純粋な瞳が若干プレッシャーだ。
「取りあえず、事実の周知。王国側からの抗議があるでしょうから最初はあくまで噂の形で。その間に証拠固めができるといいんですが…なにぶん国の命運に関わりますし30年以上前なんで証言者がでるかどうか…」
エルフさんらは少し考えを巡らせるようにしつつ黙って聞いていたが、俺が弱気発言をするとインテリっぽい1人が励ますように言った。
「最悪、でっち上げましょう。」
「ああ。」
「わりとどこでもやってますし」
「そうね。」
と他のエルフも続く。
「……。あー、あとは勇者とも会って話をしておきたいですね。」
やべぇ、みんな本気すぐる…。
真実=閑話です
キヨシの解釈は若干違ってたりもしますが、大きな影響はないです。