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えっ!?冒険できないんですか?  作者: 虹彩
辿った道を見返して~大きな忘れものと小さな届けもの~
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第34話 〈建国祭〉と焦燥感

だいぶ間が空いてしまいました。申し訳ありません


 side:キヨシ


 ついに、俺たちの縁日…もおまけに味わえる〈建国祭〉がやってきた!!

 

 日暮れも近いメインロードは魔法式の電飾や街灯代わりに吊るされたランタンの柔らかで華やかな光に彩られ、いまだに活気づいていた。居並ぶ屋台のあちらこちらから食欲をそそるにおいが漂い、出し物小屋からは歓声が上がる。

 俺とケントさんや他の国を回ってくれたエルフたちの努力のかいもあって、スロキア国内のみならず各国から、たくさんの人々が来てくれたので首都は大変賑わっていて、正直 宿が足りずに困ったりもした。ただ、〈建国祭〉のために戻ってきたエトキロやシュワさんたち冒険者なんかの話によれば、〈シュベリエ王国〉の〈記念祭〉はこの2,3倍は国外から来ていたらしいから、今後もこの形を続けていくなら要検討、なのかもしれない。

 

 そんなことをを考えながら歩いていると、近くで おぉー という歓声が上がった。

 出所はどうやらテクノリアの学生の出し物のようで学院の校章といえばいいのか…エンブレムがテントに縫い付けてあった。

 見たところやっているのは、射的の弓矢版といったところで、魔力で矢を作れる弓型の魔法具で的を射て、得点によって商品がもらえるというものらしい。こういうあそびは異世界共通なんだろうか?

 歓声を受けた射手は人族の男性のようで、三十代前半…やんちゃしちゃいました、にしては歳いきすぎではないだろうか?


「やった!父さんありがとう。」


 少し離れたとこにいた少年が景品を受け取って、男性に向かって満面の笑みでいう。

 どうやら良いお父さんだったようだ。俺も親父や兄貴にせがんだっけ。



「懐かしいなぁ。」


「おや、随分と老け込んだいい方をしますね。キヨシさん」


「うあっ!」


 思わず漏れた独り言に、後ろから返事が返ってきた。驚いて振り返れば柔和な笑みを浮かべた金髪の青年がいた。


「はー…ルークさんでしたか。あー、びっくりしたぁ」 


「あはは、すみません。あんまり気持ちがこもった言葉だったので、つい。

 霊樹の話なんてそう聞けませんから、飯のたねになればいいなぁ、なーんて思ったんです。」


「ひどいなぁ。」


 苦笑して真面目な言葉で謝るとルークは細い、まさに糸目!という目の一方をさらに細め、おそらくウィンクをしたのであろう表情でおどけてそう付け加えた。

 彼はこの祭りに個人で出店というか、稼ぎに来た数少ない人々のうちの一人で、旅の吟遊詩人をやっているそうだ。民謡や童謡も数多く知っている彼は、ココでは一曲銅貨3枚で即興で歌ったりリクエストを受けて歌ったりしている。少し高いが人気らしく、どこかの貴族がチップで金貨をやったとかやらないとか…出店審査でいくつか聞いたけど、すごいうまかった、というか人外じみていたからほんとじゃないだろうか。もちろん、あれを全力でやってるわけじゃないだろうけど。

…というか、歌ってなくていいのか?


「ああ、ちょっと呑んできたんです。」


 俺の考えがわかったのかそう答えて、手に持っていた酒ビンを振る。500mlのペットボトルぐらいのそれにはまだ半分ほど中身が残っていた。


「そうですか、休憩も必要ですもんね。じゃ、頑張って。」


「ありがとう。よかったら来てください。」



=キヨシ君、そろそ■散策(巡回)をや■て舞台のほうに■ってきてください。=


 笑顔で去るルークを見送ってるとケントさんから念話が来た。

 ルークの人族離れした魔力にあおられたのか、わずかに雑音が混じる。

 しょうがないかと思いつつ、そりゃあ衝撃だった初対面を思い出した。温和そうなただの人族の青年が建物一棟ぐらい粉々にできるぐらいの魔力振りまいてんだから軽いホラーだ。スリリングすぎる。で、いざ審査となったら声に魔力載せて歌いだすからまた驚いた。魔法まではいかないけど、”力”がある言葉だから普通の人なら魅了されてしまうんだろう。しかも、影響事態の認識はあっても、ソレは無意識らしく「久々に本気で歌っちゃいました」なんて苦笑するから、魔術知識が深めのエルフたちは唖然だったな。

 そういやそんとき、なんとなく初対面な気がしなくてガッチガチの敬語から今ぐらいの態度になったんだった。なんでかな、旅してるらしいしどっかで見たのか?


 はあ、イライラするっていうかもどかしいていうかなあ。最近なーんか、大事なこと忘れてる気がすんだよなぁ。

 =キヨシ君!聞いてるのかい?=

…とりあえず、戻ろうか。



※ルークが”振りまいている”のは余剰魔力で本人の総魔力量は数倍です。

※キヨシは『トワノウタ』について思い出したことを覚えてません。精神的負荷に耐えられなかったというのが主な理由です。

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