第27話 祭前夜、キレられた人々
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〈学術祭〉を翌朝に控えた学院都市、夜だというのに未だ生徒たちや一部商店が明日の準備に追われ、あるいは前夜祭などと称して盛り上がっている。
「――――となります。誤射も想定されますので、治安隊がこまめに巡回して対応する予定です。」
「君たち一般職員も気を配っておいてくれ。オシノビで来る方もいるからね。
じゃ、次は…壇上の準備・段取りの確認を」
「まず、今年の生徒の部は自治会の主導で進めるという事でリストと予定表が提出されてます。こちらが写しですので各自持っていてください。教員・招待客の部は9名のうち5名の方が実演、4名の方が演説のみとなっています。的ご利用の1、3、7番の方々には各3枚を昨日お渡ししました。助手も決まりましたので明日引き合わせます。1番の方々は高魔力量で魔術知識の薄い者をお望みでしたので初等部のスー・エイリア、4番の方は体力のある者を2人という事でしたので体育科のジーク教諭と高等部で助手に立候補していたカール・オリエンタにお願いしました。」
「ふーむ。生徒のご両親に了承は頂いたのかね?」
「オリエンタ夫妻には了承を頂いています。エイリアは守り人ですから…」
「ああ、そうだったな。 では次――――」
月明かりと建物を飾る装飾照明の下 楽しげなざわめきと活気にあふれた街とは対照的に淡々と言葉を交わす人々。学院都市の中枢である〈テクノリア魔術学院〉の最上階の一室でも職員たちが最後の確認会議を行っていた。
国内外の人々が多く集まるこの〈学術祭〉には各地の貴族や豪族、時には王族も来る事がある。そういう高貴な方々の多くは(言動や服装でバレバレにもかかわらず)お忍びを楽しみたいがために警護をほとんど付けず出歩くので、できる限り危険を排除する必要があるのだ。
また、〈学術祭〉は魔術方面の特別行政区である〈テクノリア特別行政区〉の成果、延いては有用性をアピールする最大のチャンスであり、それによって行政の自由度が変わってくるのだ。
「――です。それから、自治会幹部たちが後夜祭に招待客を何人か呼びたいといってますが、どうします?」
「難しいだろうな。私の友人には当たってみるが、まず無理だと言っておいてくれ。君らも親しい方がいたら頼むよ。」
「わかりました。」
「では、解散! 経理の君とアトラス先生(←生徒指導)は残ってくれ。」
会議が終わった部屋に残ったのはキヨシたちの対応をした3人だ。
その関係で話があるのだろう。
「経理くん。〈建国祭〉件はどうだい?」
「実力を伴う一部ですから、例年の生徒たちの売り上げを考えるとギリギリですね。 あとですね理事長、自分にはオウル・ファイデンという名前があるのですが…」
「いつものコトでしょう、ファイデンさん。で、生徒の人数ですが元々 高等部のみが原則で、中等部はよっぽどしっかりしたチームでないと出してませんから、そんなに減らんでしょう。」
「そうか…。了承が取れたら、だが”ケントたちが後夜祭に出て直接告知する”って形を考えてるんだが…」
「ああ、それで 当たってみる ですか。」
「キヨシ殿でしたかな?彼の様子をみるに了承してくれるでしょうな。」
「キヨシ少年といえば、霊樹…まぁ分霊らしいけど、あの種族があんなだとは知らなかったなあ。」
「あんなにはっきりしているのに純粋な魔力なんて驚きです。自分は完全に人族だと思ってました。…あぁ、〈碧風式〉考案者にとんだ失礼をしてしまいました。」
「まぁ、無理もないでしょう。彼も容姿を変えられるのに人が悪いですな。」
「自分に”歪み”を発生させて 容姿 って情報を書き換えてるんだ。と、言ってたね。分霊自体の存在が”歪み”によって成立してるから、なせる技だよね。」
補足
※守り人・・・翼人族を指す。翼人族は背に翼をもつ長命種で、しばしば鳥系獣人族と混同されるが別物。