第25話 学院都市と”縁日計画”
長いんですがコレでも切ったんスよね。
ホントいつんなったら始まんでしょね、〈学術祭〉。
side:キヨシ
学院都市2日目、昼まで暇な俺たちは男子組と女子組に分かれて"マーケット"と呼ばれる繁華街をぶらぶらしている。といってもケントさんは学院に勤めていた頃の知り合いに会いに行くとかで別行動だ。
リズとミコラは、冒険者といえどもやはり乙女なのか、衣料品店やアクセサリーの露店が気になるようでちょくちょく覗いているので俺たちのやや後方をゆっくり歩いている。
俺たちは途中で買った串焼きを食いながら〈学術祭〉のために作られたと思われるパンフレットを眺めてる。ちなみに、シンとジェイ(主にシン)は花街に向かう算段を付けてる模様…、ターヒルでは行けなかっただろうしつらいのは分からんでもないけど昼間っからそんな話をするのはどうかと思う。……てか俺、転生後そういう性欲的なのが全くないんだが大丈夫なんだろうか? 種族的な問題か…?
「おい、キヨシ もう一本食うか?」
「あ、え? もらうもらう。」
買ったものをいれた袋を独占していたカインがつくねみたいなのを差し出してきた。全部俺が食う!とか言ってた気がすっけど、どしたんだ? …あ、ウマい何の肉だろ?
「緊張してんのかキヨシ?」
「ん? いや、ちげぇよ。」
「じゃ、悩み事か?」
トキも心配げに聞くので否定する。ありがたいことに心配してくれたらしい。とてもじゃないがそう見えた理由は伝えられないな。
リズ達も追いついてきたので話を変えようかな。ついでにシンをこずいて相談事をやめさせる。
「いやぁ、うまいからさ〈建国祭〉にも来てくれないかと考えてただけだよ、結構お手軽価格だしさ。で、リズ達 服はどうだった?」
そういう狙いもあって来たからまるっきりの嘘じゃないぞ?
「なかなか良かったわよ、安いし。ね、ニコラ」
「そうそう。でも、学生向けが多いね。露店は学生がやってるのもあったぐらいだしさ。」
「ふーん。低価格なのも客層が学生だからかもな。」
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そんなこんなで午前中を過ごし、みんなは必要なものを補給して、俺は久しぶりの食べ物を楽しんだ。…食わんでいいから、普段あんま食わないんだよねぇ、俺。
そして再びの〈テクノリア魔術学院〉。
ケントさんからは先に行ってるとの念話連絡があったんで今は一人だ。ケントさんが移動を始めたとき、逆方向に進んでたんで範囲越えて消えそうになったのは、マジで焦った。さらに言うと、トキとカイン、ミコラが俺以上に取り乱して治安隊を呼ばれる勢いだった。
さて、ケントさんは何処だろう。あっ、いたいた昨日の窓口で誰かといる。
「お待たせしましたケントさん。…えと、そちらはどなたで?」
誰かさんはなぜか面喰っているようだ。
「ああ。彼は ジェームズ・T・クラウン 僕の旧友にしてテクノリア魔術学院理事長だよ。」
「ッホン。…どうもキヨシ君、一応この町のトップをやってるよ。よろしくね。」
「ええッ!? は、はい…… 」
どうやら今度は俺が面喰う番らしい…。なんでトップがひょいひょい出てくんだよ、ケントさん恐るべしだな。
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「―――というわけで、ここの学生さんたちにも〈建国祭〉に出店してほしいんですよ。シュベリエ全体には後日〈商業同盟〉のほうから依頼を出すのでその時に申し込んで頂いてもいいんですが…。」
今 俺は応接室で理事長さんと経理の責任者、あと生徒指導の教員に"縁日"の企画説明(?)をしている。ケントさんは理事長と久しぶりに会って話しているうちに、なかなかのレベルな学生露店のことを思い出し"縁日"の話を先に取り付けようと思いついたらしい。なかなかの無茶ブリだよなケントさん…確かにおいしかったけど。
「ふむ、社会勉強という点では生徒にも良い経験になるんじゃないか?」
「確かにそうですが或る程度の実力がある生徒でないと、道行 耐えられんでしょう。」
「それに、〈スロキア国〉までとなると旅費もそれなりにかかります。」
ケントさんからの提案という事もあって乗り気な理事長さんと、理事長の言葉に理解を示しつつも否定的な他2人。やっぱ学生呼び込むのは無理があるかぁ。
=どうする? ケントさん=
=うーん…利益が上がれば旅費を補てんできるはずだからそこは貸すとか…=
=そっすね、そうしましょう。=
「旅費は貸しますよ、出て頂ければ利益が出るでしょうからそちらから返して頂ければ。利益で埋まらない分は謝礼ということでどうでしょう。」
「まあ、それなら…。また話を詰めなくてはですが」
経理さんが一応の了承をしてくれたので参加ということでまとまって、告知もしてくれるそうだ。〈スロキア国〉的にはこれをきっかけに国交を多少は活発にしたいという狙いもあったからよかった。
そういや、俺たちの発表についての話はいつするんだ?
皆さん、話は終わりだね、みたいな雰囲気なんだが……
※治安隊・・・教員や高等部の生徒、住人有志で結成された組織。治安維持のため警らやイザコザの仲裁、時には実力行使で鎮圧している。