第24話 学院都市と迷子?
side:キヨシ
〈学術祭〉5日前、なんとか予定通り着いた〈テクノリア特別行政区〉―――通称学術都市は今まで以上にファンタジーで衝撃的で活気のある街だった。
〈ターヒル〉の首都なんかも活気があったけど、一大イベントを控えているからか学術都市は段違いに盛り上がってる。…むしろ殺伐とした雰囲気すらある。
そしてなにより俺が驚いたのは金属製のソリらしきものが空を行き交っていることだ。中世ヨーロッパ風な街並みにUFOのようなソレが他の街でも見た竜籠なんかと共に飛び交っている光景はファンタジーなのかSFなのか、なかなかに奇妙な光景だ。
ケントさん曰く〈飛盾〉というソレは今のところココでのみ使用されている魔道具なのだとか。なぜ ココでのみ なのかというと【魔術振興法・試験運用制度】という特例制度があるからだ。特別行政区はある物事に特化しそれを発展させるために独自の特例法を施行できる。この【魔術振興法・試験運用制度】も〈テクノリア特別行政区〉の特例法で魔術やそれに関連する技術・製品の向上促進と技術・人材の流出防止を目的とし、新しく開発された物の導入を国の認可なしで可能とする制度なのだとか。〈碧風式〉も初めはコレが適用されるんだろうな、とはシンの言だ。
そうこうしているうちに、俺達8人はひときわ大きな建物の前に着いた。
ココが〈テクノリア魔術学院〉であり自治組織の本部だ。学院都市では魔術学院の理事長が行政区長を兼任するのが慣例となっているらしく、庁舎もないんだと。
宿を取りに行くトキたちとはココで一度別れて、俺とケントさんは受付を済ましに魔術学院へ入る。
入ってすぐのホール(エントランスっていうのか?)では何人かが飾りつけなどの作業を急がしそうにしているが、ケントさんは気にも留めず奥の"事務"という札の掛ったカウンターに進んでいく。
…元職場だし当然だけど、勝手知ったるって感じだし任せちゃってもいいよな?
side:ケント
僕らは〈学術祭〉の準備にいそしむ生徒たちのわきを抜け、さっさと事務窓口へと向かった。
かれこれ5,60年経っているからちょっと不安だったけど変わっていないようだ。…キヨシ君はまかせきりで平気そうだと思ってるようだし、恥かかなくて済んでよかったよホント。
さて、時間も惜しいし済ませないとな。
「こんにちは。今、よろしいですか?」
「はい。もちろんですよ。…あー、迷子ですか?」
窓口の年配の女性に笑顔で声をかけると初めはにこやかに対応して来るが、後によくわからない質問がつく。どういう意味か測りかね否定しそこなってしまったのを肯定と取ったのか窓口の女性は続ける。
「ふぅ、広場の方に観光案内の特設スペースを設けてありますから、そちらに行ってください。
良い人に見つけてもらってよかったね、ボク。今度からは気を付けないとよ。」
「っっっー!」
キヨシ君を見ながらのセリフに合点が言ったが、迷子と間違われたキヨシ君は絶句だ。……まぁ、この女性の勘違いも分からなくはない。キヨシ君は今の容姿は16だと主張してるけど、12,3がいいとこで人によっては10にも満たないと思うかもしれない。
ともかく誤解を解かないとだね。
「ああ、すみません。僕らは〈学術祭〉発表会の参加予定者なんですよ。」
=キヨシ君、大丈夫かい? 招待券と企画書を用意して。=
「えぇっ!でも、そちらのお子さんは…」
「(イラッ) ああ、俺 人族じゃないんで。これでいいですか?(提出)」
「僕のはこれです。連名なので企画書は1つです。」
=キヨシ君! 落ち着いて!=
=あっ、ああ、ス、スイマセン。=
念話でどうにかキヨシ君を落ち着かせられたけど、どうしてそんなに怒るんだろうか?コンプレックスってやつなんだろうか…。
「うーん。本物みたいね…ヨシ……受付完了はしましたので明日の正午にまたいらしてください。担当者が詳しいご説明します。」
=ケントさん。トキが念話で宿とれたって。名前は〈銀狼の館〉で場所は{画像}=
=じゃあ行こうか。=
宿もとれたようだし、どうにか受付も終わってよかった。しかし、なんでまた僕は受付だけでこんなに疲れることになってしまったんだろうね…