第23話 魔術偽装 極々普通を装いましょう
そういえば、〈ターヒル〉の街について全く触れてない…
どうするかな。"帰り"で良いでしょか?
side:リズ
「まだかよ、キヨシ」
キヨシ君は俯いてなにやら難しい事を考えていたようだけどトキの催促がちょっと頭に来たみたい。パッと顔を上げてトキを睨むとこちらに歩いてくる。
私が撃ったあたりで立ち止まり少し息を吐く。
「改良前、改良後の順で頼むよ。」
準備ができたと見て断わりをを入れるケントさんに頷いたキヨシ君は「いきます。」と小さくはっきりいうと右手を掲げた。…まずは見られちゃったヤツってことだよね。
「狙うは敵、我示す力を以て撃て―――」
ここまでが『範囲・対象指定、使用魔力量の指定』にあたるわけね。〈結印魔術〉なら属性のイメージを詠むとこだけど、後がどうかによるかな?っと思っていたら
「 ”水術 型ノ矢 ”」
「…え、今のなんて言ったの?」
耳慣れない言葉?と共に魔力文字が形成され、水の矢となって放たれた。
威力も十分だけど… 今のは何語何だろう。キヨシ君は次の魔術に移る勢いだけどこれじゃあ改良云々じゃないよね。
「キヨシ、ストップ!」
「んだよ。トキ」
トキが止めてくれたけど、キヨシ君は止められると思ってなかったみたい、それもそうだろうけど
「なんだ、って自覚なしかよ」
「は?自覚」
「ああ、詠唱の後半なんていったのかわからなかったんだ。」
「ジェイの言う通り。たぶんアレ…前言ってたニホンゴを使ってたんじゃねーの?」
あれは日本語っていうのね。どこの言葉かとか、気になるけどそれは後
「とにかくニホンゴ?は使えないわ。さすがに素人でも音との違いはわかっちゃうもの、ね?」
「ああ」「そりゃなぁ」「そうそう」「とーぜんっ」
「だとさ、キヨシ」
「で、キヨシ君はソレ使わないでできる??」
side:キヨシ
どうやら俺は無意識のうちに日本語を使ってしまっていたらしい。はぁ、せっかく発動しやすく考えたのになぁ…
みんなの同意を受けたリズに日本語ナシで平気か問われるけど、元々詠唱なんてないに等しいんだからどーってことない。
「もちろんできる。ケントさん方式(偽)でやるから見といて」
ケントさん方式なら[コード]を円形に展開すれば装えると思うんだが…
ちょっと集中しないとな
「―――水よ[0000F0-arr] 狙うは敵、我示す力を以て撃て!」
発動させたのはさっきと同じ形だ。飾り文字みたくしてみたけど、どうだろう。
「「「「「おおぉ」」」」」
「これなら良さそうだね。」
トキたちやケントさんの反応は良いかんじ。リズは…
「うん、よっぽど近くでなければ分からないと思う。…ただ〈陣魔術〉もそれなりに目立っちゃうのよね。」
それなんだよな…今は符が主流ってか、普及してるんだよなぁ。
ダミーは…紙を買うのがもったいないよな、いちいち破棄しなきゃだし。金属なら寿命がごまかせるけど今はないし、印がないと不自然だ。
「うーん…符、だよな…」
「なぁなぁキヨシ。キヨシは物を作れたりしないのか?」
創造なんて出来ないぞ?何言ってんだカインは
「どう意味だよカイン」
「あー、だぁかぁらぁキヨシみたいにハンブッシツカだっけ?そういう符はできないのか!?」
「!! 頭イイなおまえ。みんな待っといて」
よっし、早速
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「―――できた!!」
俺の手には今、俺の魔力で編んだ符(偽)がある。半分虚像みたいなものだけど。
「おっし、早速やってみ」
なぜ、シン主導になってんのかは知らんが、やらないわけがない。
符(偽)に収まるように[コード]を展開して詠唱をまねたコトバを付ける。
「符よ、解き放て清き力を。流るる水と為りて鋭く射よ シ・ラグス」
音は力を持たず意味のない音の連なりとなってしまうがしょうがない。
符(偽)形作っていた魔力を消費してやや大きく魔術が発動した。パッと見、紙の符が自壊したように見えるだろうし成功じゃないだろうか。
「やっぱり音の力はなくなっちゃうのね。」
「でも、自壊もよく表現出来ていますし良いんじゃないですか?」
「そうですね。」
魔術師2人のお墨付きも貰えたし、これでやっと気兼ねなく魔術が使える!
後は、発表だな。