第15話 建国祭の準備と氏族の思惑
side:キヨシ
さて、ケントさんはああ言ってくれたけど、どうしたもんかなあ。
現状 旅するならケントさん同伴でないとだ。
なにせ今、俺が動けるのもケントさんの周囲1kmの範囲だけだし。それだって、真名を交わして特殊な書面で正式な契約をしたからだもんな…。
「「…となると、やっぱり(やはり)契約の強化かなあ(ですか)……」」
どうやらケントさんも同じようなことを考えていたらしい。
けどこれ以上使用魔力が多くなるとなあ…
「契約強化したら維持も大変になるし、ケントさんの負荷が大きくなるから無理ですよ、やっぱり」
「そうだね、維持も馬鹿にならない量になるし…すみませんね。キヨシ君」
「謝らないでくださいよ。魔術教えてもらったり、こっちが無理言ってるんですから。」
契約は維持にも魔力を使う。ケントさんの魔力量だと強化したりしたら、魔術が使えなくなってしまう。そんなことになったら、申し訳なさ過ぎる。
うーん、トキは俺と正式に契約できるほど霊位(存在の強さを魔術用語でこういうらしい。)が高くないしなあ。それか、契約じゃなくても俺の魔力をどうにか送れれば…
「あ!ケントさん、呪札の強化は?」
呪札は〈魔力の糸〉を繋ぐためだけの札で、自動で魔力供給するときなんかに使う。自分より霊位の低い、動物なんかに貼ると使役できるらしい。
「あ、それはいいかもね。紙のじゃ分霊を作れるほどの魔力は送れないけど、材料を変えれば強度が上がるから……やってみましょうか。」
「ケントもキヨシ君も、盛り上がってきたとこ悪いんですが今年の建国祭についての話しあいが始まるんで来てください。」
あ、今年は建国祭の年だったか。俺も霊樹族の特使として出てんだけど5年前は話しあいなんてあったっけか?
side:トールズ
”霊樹様が動けるなら首都で大々的に建国祭をやろう”そんなことを首都の〈太陽の氏族〉(政治を司る)が言いはじめ、今年はついに抑えきれず段取りすら全体で決めることになってしまいました。
話しあいは〈大地の氏族〉領でやることになり、建国祭3か月前の今日、各氏族の代表が集まったのですが、〈太陽の氏族〉の長の息子で今回の代表のジュネーヴが「当人を呼ぶべきだ」とか何とか言いはじめました。どうせ、キヨシを抱き込みたいだけでしょうに。
他も同じような考えのようで、キヨシが出てこないことには始まりそうにないし、従うほかなさそうです。
「こんなことであの子を煩わせたくないんですが…」
キヨシ君のもとに行くのも気が重い。
この時間なら広場でケントと魔術実験でもしているでしょう。・・・と、やっぱりいましたね。なにか話しこんでるようですね…
まあ、ケントも連れて行けば露骨には勧誘しにくくなるでしょうしケントも連れて行きましょう。
「ケントもキヨシ君も、盛り上がってきたとこ悪いんですが今年の建国祭についての話しあいが始まるんで来てください。」
「あ、はい。」
「僕もですか?」
「まあな、ちょっと急いでください。」
先に歩き始めると、追いついてきたキヨシくんが首をひねります。
「話しあいって、前回もありましたっけ?」
「いや…「ああ、首都でやるからじゃないですか?」…そうです。」
詰まっていると、すでに察していたのかケントが言ってくれました。ちょうどいいですし、相談しておきますか。
=ケント、どうやら〈太陽の氏族〉を筆頭にキヨシを抱き込もうとしてるらしい。魔術演出担当ってことで君を紹介するからキヨシのフォローをしてくれるかい?=
=ふう、”霊樹の恩恵”がほしいってとこかな?…わかりました。=
「へえ、やっぱり交通の便悪いですもんね、ココ。」
「「あはは…」」
当人がかなりのんきなのが心配ですね・・・