第14話 碧風式
お久しぶりですー。
・・・見切りつけないでください(ノ_< ;)
side:キヨシ
「範囲・対象指定――。 出力1/100――。 コード[00A500-arr] 発動。」
俺の魔力で囲われていた魔術練習用の的に炎の矢が当たり、的は一瞬で燃え尽きる。
「よしっ。」
「やりましたね、キヨシ君。これで下位~中位の魔術は再現できました。魔力のロスも少ないですし、命中率もほぼ100パーセントですよ。」
「これも、ケントさんに手伝ってもらったおかげだ。ありがとう。」
ケントさんと共同研究を始めて20年、師事し始めてからだと30年、やっと俺は魔術が使えるようになった。
「ホントにすごいですよ。たった30年足らずで新しい魔法体系を作り上げてしまったんですから。〈結印魔術〉は国を挙げて100年近くかかったそうですよ。」
俺にとっては”やっと”でもケントさんにとっては”たった”らしい。でもまあ1つの技術を作り上げたんだからおかしくもないかもしれない。それにエルフは長命種だから寿命の割合からいって、人族の4,5年の感覚みたいだし。
でもやっぱ、いろいろあったよな。20年前にリーンさんが引退してミュラさんが〈大地の巫女〉を継いだし、10年前には冒険者のシュワさんにあこがれていたトキが冒険者になった。
あ、トキはエトキロの愛称な。トキとは、簡易契約もしたしイイ友達だ。〈魔力の糸〉を通じて念話もたまに来るし、俺が魔術もどきを使えるようになったから遠隔で援護できるようになったしな。
スロキアの〈大地の氏族〉の村に住むようになって30年弱。魔術体系できるまで、ホント長かった。
魔術と魔法の理論は5年で終わったんだが、実践に移すには森じゃ無理があるんで半物質化した分霊を〈大地の氏族〉の村に出す必要があった。んで、ケントさんと契約して半物質化できるようにしたんだが、それにまた5年かかっちまった。
まあ、結局 一般に普及してる魔術は使えなかったし、〈種族魔法〉以外の魔法は退化してて使えなかったんだけど。
そこで、俺が最初に考えてた”分霊を使った疑似的な魔術(魔法)”をケントさんと研究し始めた。
考えた”分霊を使った疑似的な魔術(魔法)”は2種類。1つ目は分霊で精霊もどきを形成して、使役する方法。2つ目は魔術理論を元に”魔術を使える”という概念を|分霊(俺自身)に上書きして無理やり回路(つまりは"理")を創りだす方法。
1つ目は割と簡単に出来たんだけど、無属性と木属性(土の派生)しか出せずイマイチな結果だった。
2つ目は…出して約5秒で消えた。ケントさんに魔術で[解析]してもらったところ、魔法の回路が残っているとろに魔術の回路を書き込んでしまったので大きな負荷がかかってしまったらしい。
だが、これで諦める俺とケントさんではない。魔法の回路が退化した部分を特定し、そこを埋める理論を研究することにした。これが10年前。
研究の結果 霊樹には魔法の”言霊”や〈結印魔術の〉音や印にあたるものがないがために「事象の実現」ができないことが分かり、試行錯誤の末にできた今の形式を分霊に組み込んだ。
この形式は『範囲・対象指定、使用魔力量の指定、属性と形状の決定』を宣言して発動する。範囲・対象指定は魔力であたりを付け、使用魔力量の指定は”生命維持に使わないの魔力”分の”必要魔力量”であらわす。属性と形状の決定は前世の『カラーコード』を参考に作った、〈属性コード〉と英単語の頭三文字であらわしている。
「連名で論文まとめたので媒体と一緒に、以前勤めていた学院に送りますけど、名称はどうします?」
そうそう、この魔術 俺用だったはずなのになぜか媒体―――俺(本体)の一部をもつと他の種族でも使えるようなのでケントさんと連名で発表することにしたのだ。
「んー、決めていいんですか? …そうだな、〈エルフ魔術:碧風式〉とかどうでしょう?」
「エルフというのはあまり関係ないし、〈碧風式魔術〉でいいでしょう。真名からですよね。」
「あはは、主張しすぎですかね?」
「いえ、もっと誇っていいと思いますよ。――――っと書けた。じゃあ、今度は君が移動するための研究でもしますか? したいんだよね、冒険?」
憶えててくれたんだ!
「さっすが、ケントさん。よろしくお願いします!」
〈属性コード〉について
6桁で左から光,闇,火,風,水,土。それぞれの強さを16進法の0~Fで表す。かけ合わせもあり、その場合はどちらかが補助か、派生属性
[000000]は無属性。冒頭に出てきた[00A500]は火の派生で炎属性。