第11話 酒の席
お待たせしました。
11話です。
(…え?待ってない?そりゃ、失礼しました。)
side:キヨシ
儀式用のテントにおかれた大きなテーブルには大皿に盛られた料理が所狭しと並べられている。今は午後3時ごろで、いよいよ宴の始まりだ。
ちょっと明るすぎる時刻な気もするが気にしない。なんてったって久しぶりのまともな食事なんだ。時間なんて全力で無視だ。
そりゃ、この体なら食わなくたって死なないが習慣はそうそう変わるものじゃないし、感情というか基本欲求として腹がへる。けど、森の中だから調理器具はもちろん火すらない。動物を狩って食べようかと思ったけどさすがに生はムリだし、食うモノと言えば木の実とか木の実とか木の実とか・・・。んで、今日やっと食える 料理 全力で楽しみにして何が悪い!?……サリサさんが引いてるケド。…リーンさんとトールズさんと長が優しすぎる目で見てるケド。
「この世界を創りたもうた神々と精霊の恵みに感謝します。では、皆さんどうぞ。」
エルフと霊樹の全員がテーブルに着き、トールズさんの声で宴が始まる。
「この世界を~」というのは「いただきます」みたいなもんなのか、リーンさんやエトキロたちエルフは各々に復唱してから手を付けている。
にしても、おいしなあ。煮たり焼いたりしてるだけだし、味付けも塩と胡椒と砂糖ぐらいだけど調理してあるだけでぜんっぜん違う。長たちが形だけしか口を付けてるだけなのがもったいないぐらいに。
しばらくたって空いた皿が多くなってきて、酒も出てきた頃。日が沈み始め、テントの中も薄暗くなってきてしまった。
すると、トールズさんが外からろうそくと燭台をいくつかを持ってきて空いた皿にセットした。そして、懐から指揮棒のような杖を取り出し、Vを逆さにした下に点を打つAのような図形を描くように振り
[シ・クェノア]
と、つぶやく。すると、杖の周りに赤い精霊が集まってろうそくに放たれ……ろうそくに火がついた!?
「”おぉ。魔法だ!”」
おっと、思わず日本語でしゃべっちまった。
side:トールズ
暗くなってきたので〈結印魔術〉で火を付けると聞きなれぬ言葉が聞こえてきました。声の方へ顔を向けるとキヨシと目が合いました。
彼は霊樹ですがとても変わっていて、敬語を嫌いますし、寝るし食べるし、14,5の少年そのもので今年で365歳になる私にとっては子供や孫のようです。
ああ、今も好奇心で目をキラキラさせて、若いですねぇ。
「どうしたんです?キヨシ。」
「あっ。初めて魔法らしい魔法を見たからびっくりして…」
「ああ、そうですか。森の中で見る機会もないですからね。これは〈結印魔術〉といって、自分の魔力で印を描き、精霊の力を借りて発動させる一般的な魔術です。儀式などで使われる〈陣魔術〉を簡易化したものです。その分効果も小さいですが、使い勝手はいいのですよ。」
初めて見たというキヨシに〈結印魔術〉の説明を簡単にしたところ、思いもよらないことを言われました。
「あの、俺にその〈結印魔術〉ってのを教えてくれませんか?」
はて、どうしたもんでしょう?