第10話 成人ノ儀
「成人の儀式なんかどうでもいいよ」ってな方は読まなくてもギリギリ平気だと思います。
それでも「まあ、読んでやるか」ってな方、お付き合いください。
side:キヨシ
ついに、エルフたちの成人の儀式当日だ。
あ~緊張してきちまった…
えっ?”旅”の話はどうなってんだって?
あ~、実は先送りになっちゃったんだよなぁ。
いやね、俺も”お告げ”ってことで説明して、説得してみたんだけど「正しいかどうかもわからん、何よりお前はまだ目覚めて一ヶ月しかたっていない」ってなことを言われちゃってさ。こればっかりはしょうがないだろ。俺だって、ものごころついて一ヶ月の奴なんか出歩かせねーよ。
ま、一応 儀式終わったらリーンさんやトールズさんに話通してくれるから、うまくいけばエルフの村は見れそうだ。
それよりも、だ。
儀式での俺のセリフが予想以上に多いんだよ…。二言三言かと思ってたら長いし、古文みたいな口調なんだよ…
あっ、始まる。
森の奧、少し開けたところの儀式用のテントの中〈真名定〉の時とはまた違う陣が描かれている。その陣周りにはエルフたちと霊樹全員が輪になっている。
儀式用の衣装に身をつつみ、右手に短い錫杖をもったリーンさんが中央に進み出て「これより〈成人の儀式〉を執り行う」と厳かに宣言する。
リーンさんの「前へ」の声で今回成人する4人――――――エトキロ、レンシード、アレックス、キールが前に出てひざまずく。すると、リーンさんたち巫女3人(内見習い2人)が詠唱(仮定)をはじめ、陣が発動し4人を光の粒子が包んだ。それが晴れるとそれぞれ違った場所にタトゥーのような一族を示す印が刻まれていた。
4人が立ち上がり、エトキロが口を開く
「我ら、今此処に一族の真の一員たる証を示したり。」
――――さて、出番だ。
「然り。なれど汝ら、自らの足で歩み友と支えあい、その長き命を生きる覚悟はあるか。」
「「「「応!!」」」」
「なれば、汝らの門出を祝し、霊樹がひとり境界を越える碧い風より〈絆の一枝〉を贈らん。」
それぞれに小ぶりの枝が渡され、4人はそれを押頂く。
そして、リーンさんが錫杖を大きく2度鳴らし儀式の終了を告げた。
あ~~緊張した。
…にしても、いくら通算百云年生きてると言っても、見た目16歳程度の俺があんなエラソーなこと言っていいのか?新成人の気持ちを考えると台本通りでも居たたまれないな。
ちなみに〈絆の一枝〉ってのは普通に霊樹(俺本体)の枝なんだけど、巫女であるリーンさんが切り落としたからわずかに〈魔力の糸〉がつながっているから良い魔法触媒になるらしい。んで、儀式に組み込まれた由来は「エルフの祖は森の民として、森の長たる霊樹に認められ、その枝を賜り村を興した。」という伝承だそうだ。
さて、昼は宴をするらしいからその時にでもリーンさんたちに”旅”の話をしてみようか。
読んでくださってありがとうございました。
リーンさんの衣装は巫女服じゃなくて、弥生時代レベルのものなんで卑弥呼イメージです。(実在したのかも不確かな人物のものを例に出してすみません)
あと、錫杖なんかはキヨシの主観ですから、そう呼ばれてるわけではないです。
感想、意見、誤字脱字指摘などお待ちしております。
がしかし、エトキロとキヨシのやり取りはそれっぽいくしたかっただけなんで、お手柔らかに(^_^;)