第7話 真名定ノ儀
side:リーン
急いでキヨシ様のための儀式の準備をする。見習いの2人では手が足りず、連れてきた男の子たちの何人かにも手伝ってもらう。本当は良くないのだけれど、仕方ないわ。
まずテントの中に白い大きな布を敷き、中心に縄と清めた石で3ルゥ四方の簡易結界をつくる。結界の角を東西南北に合わせなければならないのが大変だけど、ちょうど4人いる男の子にやってもらいましょう。そうすればサリサとミュラの手も空くし。
「では、男の子たちは縄をもって。サリサとミュラは道具の準備を。」
「「「「「「はい」」」」」」
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「トキは半歩右へ。…全員そのままおろして、石で抑えて……んー、よろしい。みんなありがとう。」
「巫女様に礼を言われるなんて…」
「いえ、当然のことをしたまでです。」
「は~い、でわー」
「……失礼します」
礼をしたら思い思いの返事をして帰っていきました。
「ただいま戻りました」
2人はやっと帰ってきたようね
「では準備を続けましょうか。2人はテントの周りを掃除して、終わったら川で身を清めていらっしゃい。」
2人が出たあと、呪墨(霊力や魔力を込めた墨)で陣を描く。結界の中心になるべく大きく。
陣を描き、神酒や守り刀などを並べ終えた頃には日がだいぶ傾いていました。
夕方には始めたいですし急がなくてはなりませんね。戻っていた2人に香を焚いて待つようにいって禊ぎにいきます。
その後、服を着替えてテントに戻るとすでにキヨシ様がいらっしゃいました。
「キヨシ様、お待たせして申し訳ございません。」
慌てて非礼を詫びると
「いえ、構いませんよ。それと、敬語は止してください。俺なんてまだまだヒヨッコなんですから。」
と、居心地悪そうにおっしゃりました。ここまで変わってるとは思いませんでしたが、ふふっ、優しい子ですねぇ。
「わかったわ。始めましょうか。」
「はい、お願いします」
「まず、神酒を」
分霊の体では飲めないかもしれないと思っていたのですが…いい飲みっぷりです。
「では、これを持って陣の中心へ。いきますよ、いいですか?」
渡した守り刀を持ち、指定した場所に座った彼が頷くのを確かめて、呪式文を詠む。少し遅れてサリサとミュラがそれぞれ〈迎神詞〉と〈退魔詞〉を唱え始めた。
瞑想状態のキヨシ仰向けに寝かせる。
あとは明日を待つばかり、彼にはきっとよい名が与えられるのでしょう。変わってますが、素敵な子ですからねぇ…
補足
呪式文:儀式用の陣を発動させるための呪文。ただの魔法陣の発動呪文と区別される。
迎神詞・退魔詞:祓詞のようなもの。補助魔法の一種で神職にしか使えない。
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