02 ノート
僕は今日の授業のノートを鷹崎さんに見せてもらっていた。
「今日の分はここからここよ、何かわからないところがあったら何でも聞いてくれていいわ」
「ありがとう、ぜひそうさせてもらうね」
そして鷹崎さんのノートを見ると僕のとは比較にならないほどきれいでまとめられていた。
「すごくわかりやすいよ、びっくりした。まさか松田先生の授業の内容をここまできれいにまとめられるなんてすごいね」
「一応一年分の内容は押さてるから自分なりにまとめてみたの」
「へ~、さすが鷹崎さんだね。そういえばこの前の授業でわからないところがあるからそこも見せてもらいたいんだけど」
僕がそういうと鷹崎さんは凄い勢いでノートをバッと取り上げた。
「そ、それなら私が直接教えてあげるわ。だからわざわざノートを見る必要はないわ」
「でも、ノートあったほうが説明しやすくない?僕もそのほうが聞きそびれちゃったところも見ればわかるから」
「わかったわ、でも、これ見ても驚かないでね」
そういつもの半分くらいの大きさの声で言うと鷹崎さんは恐る恐る僕にノートを見せてくれた。このノートなら驚くことなんてないと思うんだけどな。
そう思いながらノートを見るとそこには文字とは言えないような光景がノートいっぱいに広がっていたていた。おそらく鷹崎さんが書いた字なんだろうけど頑張ってやっと読めるような文字が殴り書きでひたすらに書かれていた。
僕がノートを見ながら固まっていると。
「やっぱりそうゆう反応になるじゃないの、だから見せたくなかったのよ」
何だろういつもより鷹崎さんが小さく見えてしまうのは気のせいだろうか。少し申し訳ないいと思ってしまった。
「で、でも頭いい人って結構字汚い人って多くない?ほら、孝汰って数学めっちゃできるけど字すごい汚いじゃん?」
「き、汚いっていった?ねえ今汚いって言ったわよね」
フォローするつもりが思いっきり地雷ふんじゃったみたい
「ごめんって、別にバカになんてしてないし、そんなこと全く思ってないから!」
「もう!そんなこと言うなら見せてあげない」
また鷹崎さんにノートを取り上げられてしまった。
「た、鷹崎さん落ち着いて、一応ここ一人部屋だけど隣の人まで声聞こえちゃうから」
「あ、ごめんなさい……」
ようやく落ち着いた鷹崎さんを見て僕たちは一度体勢を整えた。
「改めてごめんなさい、取り乱してしまって」
「いいよ、気にしないでよ、頼んだのは僕だから」
「それより、どうしてこんな字と言うか何というか」
「いいわよ、字が汚いことは私自身認めてるし、一人の時はよくあることだから汚いと言ってくれて大丈夫よ」
「基本一人でいるときは考えながらそのまま書いてるから字がどうしても汚くなってしまうのよね。でもテストのときとかほかの人に見せるときは初めに見せたみたいなちゃんとした字で書いてるわ。でも結構疲れるから嫌なのよね。まさか誰かに見られると思わなかったわ」
「いいんじゃないかな」
「え?」
鷹崎さんはそういうと豆鉄砲を食らったような顔をした。
「ほかの人に見せるときは凄くきれいな字で書いてるなら一人で完結するものはどんな字で書いても全然いいんじゃないかな。」
「そ、そう。ありがとう……」
「じゃあ、もしかして今日の授業のノートって僕のためにきれいに書いてくれたってこと?」
「う、うん」
「わざわざありがとうね。うれしいよ」
「そんなに感謝されるようなことじゃないわ。じゃあ気を取り直してわからないところの説明するわね。どの部分がわからないのかしら」
どうやら恥ずかしかったのかそそくさと話題を戻してしまった。
「二次関数の最大最小の場合分けのところがいまいちわからなくて」
「なるほどね。その問題はこうすると簡単に解けるようになるわ」
鷹崎さんの説明はとても分かりやすかった。成績が真ん中くらいの僕でも鷹崎さんのしてくれた説明は一回で全部理解できてしまった。
「ありがとう鷹崎さん、高校に入ってから数学の内容を一回で理解できたのなんて初めてだよ。」
「それは良かったわ。ならいつも授業はどうしてたの?うちの高校は早すぎるってわけでもないけど普通のペースよりは早いわよね」
「うん、だから数学があった日は家に帰ってから必死になって復習してるよ」
「それは大変ね、そしたらしばらくは私が教えてあげるわよ」
「いやいや、それはさすがに申し訳ないよ」
「いいのよ、明日も明後日も授業のノート見せに行くから、そのついでなんだし気にしないで」
「じゃあ、お言葉に甘えようかな。ありがとうね、鷹崎さん」
「ええ、任せてちょうだい、そうしたらどこからわからないのか教えてくれる?先に聞いておいた方がやりやすいと思うから」
そんな話をしていると病室に母さんが入ってきた。
「伊織調子どう?あんたに昨日頼まれたもん持ってきたよ」
「うん、ありがとう」
「そこ適当に置いとくよ」
「こ、こんにちは。わたしお邪魔ですよねすみません」
「そんなことないわよ、私の方こそごめんねせっかく二人で話してたのに水差すようなことしちゃって」
「い、いえそんなことないです。私、この後用事があるので失礼します」
「そう?わざわざありがとうね。近くまで送ってってあげるわよ」
「だ、大丈夫です、すぐ近くなので気にしないでください」
「わかったわ、じゃあ気を付けて帰ってね」
「はい、ありがとうございます、失礼します」
そういって鷹崎さんは逃げるように出て行ってしまった。
「あの子、杏凛ちゃんよね、昨日も一昨日も病院に来てくれたのよ、自分のせいで笠倉君がってわざわざ、あんたが勝手にやったことなのに律儀よね」
「え、そうだったの?」
「救急車で搬送されてる時もあなたが手術を受けているときもずっとそばにいてくれたそうよ」
僕そんな話全然聞いてないんだけど、まあ、母さんなら面倒だからって言わなそうだけど。
「でも、昨日はすごくちゃんと喋ってたのに昨日と今日で全然違うのね。ってまさかあんたがなんか変なことしたからじゃないでしょうね、あんなにいい子なのに」
「そんなことしてないよ、普通に話してただけ」
「まあそうよね、あんたがそうゆうことするひとじゃないしね」
「母さんこそ何かしたんじゃないの、てか、鷹崎さんが家に来てくれた時に何話したの」
「別に普通のことよ、事故のことをあの子に聞くのもかわいそうだし、あの子が悪いなんて微塵も思ってないから事故のことは状況だけ聞いてあとは車で杏凛ちゃんを送ってくときに伊織が普段学校でどうなのかとか杏凛ちゃんのことについて聞いたってだけよ」
なるほど、たぶんいつもの母さんのまま鷹崎さんと話す場合ありえない量の言葉が一気に来るからそれ気圧されたって感じだろう。
「もしかして母さんいつもの感じで鷹崎さんとしゃべってたでしょ」
「え、そうだけどなんかまずいこと言っちゃった?」
「いったってわけじゃないけど、鷹崎さんかなりの人見知りらしいから母さんいつもの話し方だと怖かったんじゃないかな」
「いやー全然気にしてなかったわ、次あったとき杏凛ちゃんに謝っといて」
「わかったよ」
「じゃあ伊織も元気そうだし、くるみもおなかすいてるだろうから私帰るね」
「うん、じゃあまた」
「一人部屋だからってはしゃぎすぎないようにね、となり人いるから、じゃあまたね」
そうして僕は急に静かになった一人部屋に残された。
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