01 鷹崎さんと笠倉くん
鷹崎杏凛、私立清蘭高校に通う1ーcの生徒。才色兼備に加えて頭脳明晰。まさにその言葉を体現したかのようなその美しい見た目をした彼女。今日も今日とて告白して来た男子をことごとくフっていく。
「ごめんなさい、私あなたのこと知らないし興味ないから。」
お決まりの言葉がその男子を襲う。六月も半ば梅雨独特のジメジメとした空気がどよめく。この高校に入学してからはや二ヶ月、初めこそ毎日のよう何人ものに彼女に告白する生徒がいたものの、二ヶ月も経てば一日に一回ほどには落ち着いてきた。見た目はもちろんのこと頭もこの高校において頭一つ抜けている彼女は入学早々多くの生徒から告白された。しかし、彼女の言葉は誰に対しても決まって同じだった。
そのため、ついたあだ名は『氷姫』。
そんな彼女を遠目で見ながら僕は日直だからと先生から預かった課題をクラスの人に返していた。何のための教科委員だよ。これじゃただの肩書きじゃないか。
そんなことを考えていると鷹崎さんが帰りのHR直後に早々に教室を出て行った。いつもの事かとかと何気なく考えているとまだ鷹崎さんに課題を返してないことに気づいた。今回の課題はこのプリントがないとまともに出来ないって先生が言ってたからさすがに返さないと。
幸いほかの生徒に関してはまだ教室から出ていなかったから急いで鷹崎さん以外の課題を返して鷹崎さんのことを追った。
よかった。学校からすぐの信号で引っかかってる。
「鷹崎さん。明日使う課題返せてなかったから」
僕は息を整えながら鷹崎さんに課題を返した。
「わざわざありがとう。助かったわ。」
鷹崎さんはそれを言い終えるとすぐに歩き出してしまった。さすが氷姫。そう思って鷹崎さんの方を見ると、どう見ても信号手前で止まれなさそうなバイクが鷹崎さんめがけて突っ込んでいた。
「鷹崎さん!」
気づけば身体が動いていた。ここまで走ってきたからだろうか、自分でも信じられないほど速く動いていてた。鷹崎さんの手を引き寄せられたのはよかったものの、梅雨のせいで連日降った雨でスリップしたバイクが僕の右足に勢いよく衝突し、そのまま頭を地面に打ちつけた。
「笠倉くん!笠倉くん!」
落ちていく意識の中でかすかに鷹崎さんの声が聞こえる。そんな中僕はひどい顔してるなと、心底どうでもいいことを考えていた。
目が覚めたら見慣れない天井がぼんやりと入ってきた。周りを見た感じ病院だろう。よく見ると誰か来てるみたいだ。おそらく母だろう、こんな時にも迷惑かけるなんて。そう思っていると予想とは全く異なる声が聞こえた。
「笠倉くん、大丈夫?どこか痛いところない?」
ようやく晴れてきた視界に映ったのはまさかの鷹崎さんだった。
「鷹崎さん!?大丈夫だけど、どうしてここにいるの」
「当然でしょう。私のせいでこうなってしまったんだから。本当にごめんなさい」
「そんなことないよ。あれはどう考えても相手側が悪かっただから、鷹崎さんは悪くないよ」
「それでも、私がちゃんと周りを見ていればこんなことにはならなかったもの」
「まあ、右足は折れてるみたいだけど、それ以外は全然大丈夫だから心配しなくていいよ」
「でも……」
「だってもでももない、鷹崎さんは何も悪いことしてないんだから。はい。この話はもう終わり!わかった?」
「う、うん……」
「どうして私のことを助けてくれたの?私周りにすごく冷たいと思うのだけど」
「助けるのに何か理由が必要かな」
「え、だって」
「助けるのに理由がいるならそれは助ける意味がないと思うな」
「そんなことより気になったことがあるんだけど、聞いてもいい?」
「ええ、大丈夫よ」
「今普通に話せてるけど、学校だとあんなにそっけない感じなの?」
「それは、私が人見知りで」
「え、そうだったんだ」
意外だった。授業中だと先生に当てられてもすごいスラスラしゃべれてるのに。
「家族以外だとすごく緊張しちゃって全然言葉が出てこないの」
「私のおねえちゃんがいるんだけど、いつも甘やかしてもらってて、でも去年からおねえちゃん大学生だから一人暮らしでいなくて」
「じゃあなんで学校だとあんなそっけない感じなの」
「それは、家族以外だとすごく緊張しちゃって全然言葉が出てこないの」
「でも今僕とは普通に話せてない?」
「笠倉くんのことが心配だったし、助けてもらったのにそんなことできないわ、それに笠倉くんはおねえちゃんと同じ感じがするから」
そんな話をしていると8時を伝えるチャイムが鳴った。
「もうこんな時間なのね、今日は帰るわね」
「うん、わざわざありがとうね」
「いえ、気にしないで」
「もう空も暗いから気を付けて帰ってね」
「ええ、ありがとう。じゃあさようなら」
「うん。じゃあね」
そういって鷹崎さんは僕の病室から出て行った。
まさか鷹崎さんとこんなにしゃべれるとは思わなかったな。でも、これからはもう話すこともなくなっちゃうんだろうな。
翌日、僕が病室の中でぼーっとしていると不意にドアがノックされた。まだ夕食の時間じゃないし何かあったんだろうかと考ええているとゆっくりとあいたドアから病室に入ってきたのは鷹崎さんだった。
「鷹崎さん?」
「こ、こんにちは」
「な、なんでここに、てか、ここ学校から結構距離あるよね」
この病院学校の最寄駅から3駅も離れてるのに、誰かのお見舞いのついでかな。
「笠倉くんに今日の授業のノート見せたくて、それに、笠倉くんとは、話したかったから」
驚いた、鷹崎さんからそんな言葉が出てくると思ってなかった。そう僕が啞然としていると
「な、何か私変なこと言ってしまったかしら」
「ううん、そんなことないよ。ただ、鷹崎さんが話したいなんて言うと思わなかったからびっくりしただけだよ」
こうして僕と鷹崎さんとの密かで甘い生活が始まった。
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