落ち込む2人
「元気出して下さい、江藤さん。」
「ありがとうございます、三田さん。ご心配には及びません…」
私は少し落ち込んでいた。
と言うのも…
「江藤、この間話していた研究所の話だがな…どうも資金繰りが上手くいかず計画が頓挫してしまったようだ…まだあいつは諦めてはいない様だが、もう少し論文で結果を出してからまたチャレンジするそうだ。お前の卒業までには間に合わないかもだが、お前は先の目標に向かって頑張って欲しい。」
「いえいえ、教授に気にかけて頂いただけでも随分自信になりました。目標に向けて先ずは卒業と医師免許の習得に励みます。」
「そうか。お前には期待しているから、是非頑張って欲しい。」
「有難うございます」
となり、研究所への勉強お手伝いの件がお流れになった。
浮き足立っていたので正直落胆はしたけど、まあ今まで通りに戻っただけの話だ。
「急がば回れですよ。私も一刻も早くお銀になりたい所を今後の人生を長く見据えてこうして回り道して医師免許獲得に奮闘しています。」
「いやいや、三田さんは凄いですよ。両免許習得したら無敵の人ですよ。尊敬します。」
「いいえ。これはまだ序章に過ぎません。先を見据えて着実に。目先の事に捉われず家康の様にこの先の264年続く幕府を見据えねばなりません。」
「成る程…でも私は天ぷらでは死にたく無いですね…」
「そうですか…それは残念でしたね…」
「いえいえ、正直人生で初めて期待されて浮き足立っていたので、自分を戒めて今まで通り地に足つけて頑張りたいと思っている所です。」
「そうですか…前向きな所もエトランゼさんは素晴らしいですね。」
今日はスイーツのお店だ。
甘い物も大好きだ。
ケーキはやはり少しお高めだったが流石にパンみたいに10個は食べられなくて7個だ。
結局お値段は5千円位になってしまった。
食後に紅茶まで頼んでくれている。
ツヨシさんは甘い物が余り得意で無い様で今回は更に食が細い…身体も相変わらず細い…
いつものブウ会計まで終わってまったりとお茶している。
「ツヨシさんは今どんなバイトしていますか?」
「僕は…来週からタイの工場にバイトに行く事になりました…」
「タイ!?」
まさかの海外進出…
毎度予想外だがこれは1番驚いた。
「ワーホリとかですか!?」
「まあ…そんな所です…」
なんだか海外進出なのに元気が無い…
「何だか元気ないですね?」
「はい…暫くエトランゼさんとご飯食べられないと思うと気落ちしてます…」
成る程…
哭きのブウのが聞けなくなるから落ち込んでるのか…
まあ私もちょっと落ち込んでるし、暫く財布のツヨシさんともお別れになるし…
「では、何処か気晴らしに行きませんか?私も丁度少し落ち込んでましたし。楽しくなる様な所へ。」
「いいですね!何処が良いですか?」
「うーん、そうだなぁ…」
ツヨシさんの趣味とか分からないなあ。
喜んでるのって私がブウって鳴いてる時位だしなあ…
そう言えば…
最初に出会った時に話に出た…
「なら、キャンプにでも行きませんか?私も行ったこと無いですし。前に話した時ツヨシさんやった事ないけど興味あるって言ってませんでした?」
「わあ!良く覚えてましたね!確かに面白そうです。行ってみますか!」
「はい。何かアウトドア全然似合わない2人のキャンプは多分面白いと思いますよ!失敗しても笑う人居ないし」
「ははは!確かに。なら、今週末行きましょう。手ぶらで行ける所探しますんで、決まったら連絡しますね!」
そう言って初めて食べ歩きでない約束をした。