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妹は同い年

「今日は普通におにぎりなんですね。」


「はい。江藤さんが居ますので水曜日の修行はやめました。いつ任務が入るか分からないのを想定してランダムに行います」


今日は水曜日だが、マリボが閉店してしまったので、三田さんとランチをしている。


三田さんのお昼は白いおむすび…多分具も入ってない。

そして私は…


「私のお昼は真っ白ですが…江藤さんも負けず劣らずシンプルですね…まあお互い貧乏学生なんで仕方ないですね。」


「はい。三田さんとのランチは気後れしなくて助かってます。」


「ですね…我々はこの大学と言う名の廓に人蔘代金の借金のカタに身売りされてる様なものですからね」


「いや、私ら遊女じゃないよ…」


私は食パン…一斤だ。何も付けずにひたすらちぎって食べてる。

普段は質より量だ。


「まあシンプルですが、小麦の味が分かって美味しいですよ。ご馳走食べた時に味がダイレクトに分かるんで、舌のリセットの意味でも役に立ってますよ。私大食いなんでお金かけず量食べたいってのもありますが。」


「成る程…もはや剣の稽古ですね。秋山大治郎は最初に入門した弟子に六尺の振り棒で2千回素振りさせましたからね。基本が出来て初めて剣の修行に移れると言う事ですね。」


「私六尺の食パンを2千本も食べ続けないからね…明後日に新しく見つけたパン屋さんに開拓に行くから舌をリセットさせてる意味もあるの。」


「ほう!出稽古ですか!精が出ますね。」


「はあ、まあそんな感じ…かな?いや、稽古ではない。ただパン食べに行くだけね。」


「例の越後屋とですか?」


「そうです。殆ど私が食べられる上にお金払ってくれるし…見返りに一声鳴けば気が済むみたいなんで。」


「それは容易い仕事で…そちも悪よのう…」


「私が越後屋なのか…」






「エトランゼさん!お待ちしておりました!」


「早いですね!遅くなりましてすみません。」


「いえいえ、待ち合わせ10分前行動は当然です!お気になさらず」


何か営業の人みたいだな。まあ会社員になるなら必要スキルか。


今日はツヨシさんと待ち合わせて、噂のパン屋さんに向かった。


当初は高い物せびってやるって悪どい事を考えていたけど所詮貧乏舌な私、高級料理なんて分からないし結局普段食べ歩きしてる価格帯の物に収まってしまった。


その分、今までだと我慢して厳選していたが、今は思いっきり選ばせて頂いている。

まあ、質より量と普段の質素食と同じだ。


「うわぁ!パンだけで5千円以上も買うなんて!貴族の道楽だあ!罪悪感が半端ない!」


ここは高級志向なお店で、小麦粉は国産、バターもエシレとか高級品を使ってるので、街のパン屋さんの同じアイテムでも下手したら一個倍以上の値段がする。それを10個も買った。贅沢過ぎる…

テンション爆上がりしていた。


「いやあ。嬉しそうですね!早速食べましょう。オススメなの少し分けて下さい。」


イートイン出来る併設されたカフェスペースで戦利品を広げた。



「では頂きます!」


最初にシンプルなクロワッサンから…

普段食パンで舌をリセットしていたからダイレクトに高級な小麦とバターの味が頭にグーでパンチしてくる。

これは下手したら命を落としかねない美味さだ!


「やっやばいですこれ!」


その一言がやっとで後は無言で貪り食らいついていた。


ツヨシさんはいつものようにニコニコしながら私が食べてる様子を見ていた。


ツヨシさんの好みが分からないので、このシンプルなクロワッサンと甘いのとしょっぱいのと味の幅を持たせて薦めた。


「どれがお好みでしたか?」


「うーん、シンプルなのが好きかもですね。味が複雑になると難しいです。」


「難しい?」


「はい。有害な物とか盛られた場合、選別がしにくいかもです。」


それどんな状況…

普通に生活してたらまず起こらないと思うけど…


「普段から少し慣れる様な訓練したりもしましたが…中々難しいですね。無味無臭とかもありますし…」


何か中国とかの皇帝暗殺みたいだな…

それとも近くに一橋治済でもいるのだろうか?


「まあ、そうなった場合、私が近くにいた時なら早急に応急処置いたしますよ。一応救命救急も習いますんで。」


「うわあ!それは頼もしい!」


まあこの見た目なんで、女の子とかに睡眠薬や催淫剤の類を盛られた経験でも有るんだろう。流石に命を狙われる様な事は有るまい。


そんなやり取りをして一息ついたら…



ツヨシさんがワクワク期待する目で此方を見ている…


ハイハイ、おあいそですね。




「ブウ」





「わあい!可愛い!ありがとう!嬉しい!」


もう何も言われなくても鳴ける。

『マスター!いつもの!』レベルだ。


相変わらず最初のテンションをキープしているツヨシさんに、もはや感心していた。

此方も無の境地で怒りも悔しさも無く呼吸する様に一言ブウと鳴けるまでに成長した。いや、退化か?


最初はマリボで色々試していたが結局この「ブウ」で落ち着いた。


このお会計まで終わると少し話をする。


「今はどんなバイトしてますか?」


「今は建設会社ですね。こんな見た目なんで結構邪魔者扱いされてます。ははは」


「…」


まあ多分以前と変わってるとは予想してたが…

これまた予想を超えて来た。

まるでチョイスが読めん。


「なんだかツヨシさんが現場でニッカポッカ履いてヘルメット被ってる姿が想像出来ませんが…」


「まあ、現場作業は流石にさせて貰えませんねえ。多分研修で終わりそうです。」


「まあ、その方が良いでしょうね。」


「ツヨシさんはご兄弟とかいますか?」


「ええ、5つ下に妹がいますよ。」


「うわあ!私も5つ下に妹が居るんですよ!」


「凄い偶然ですね。エトランゼさんの妹も可愛いんでしょうね」


「うーん、所謂ギャルですね。色々派手です。似てないですよ。凄く素直で良い子ですが…」


「へぇー!想像出来ない」


「私は連れ子で親が再婚したんで。今の父も子供いたんで血のつながりの無い妹ですが、凄く懐いていて、よく遊んだり色々教えてあげたりしましたね。今も仲良いですよ。」


「そうなんですねー!」


「ツヨシさんの所はどうですか?」


「うーん、僕の妹も見た目は派手ですねえ。でも中身は大人ですね。昔から」


「へー!」


「子供の頃に結婚相手が決まってもすんなり受けてました。僕はそんなの嫌ですが」


「ほー!」


子供の頃から結婚相手ってやっぱりツヨシさんの家は貴族なんだろうか?華族?それともヤクザ?もしや皇族の傍系とか?


なんか浮世離れしてるし、あながち間違ってないかもしれない。

でも皇族って密林クルーズの船長やったり工事現場で働いたりするんだろうか?

なんかこの先、失礼な口きいたりしたら逮捕されるかも…

ちょっと怖いから探ってみよう。


「ツヨシさんってこないだの選挙行きました?」


「ああ、行きましたよ。ちゃんと国民の権利と義務は遂行してますよ。」


納税と選挙権はあるらしい。

皇族説崩壊。良かった。

まあ多分お金持ちとかなんだろう。

なんでこんなバイトしなきゃならないかは分からないが。


もしや衰退したお金持ちで昔の契約で借金のカタに妹は婚約したままなのかも知れない。

それなら私にこんな気前よく奢ってて奨学金とか返すの大丈夫だろうか?


などとグルグル考えていた。


「所で、エトランゼさんは前は江藤では無かったんですね?」


「そうです。たまたま親が再婚して江藤ランゼになってしまいました…ちなみに弟もリンゼも居ません。」


「それは残念」


「でも、話を戻しますが、ツヨシさんなら結婚相手はあてがわれなくても幾らでも向こうから寄って来そうですが。見た目も素敵ですし」


「うーん、まあそれなりに…今まで女性に苦労はしませんでしたが…」


そこは否定しない所は流石モテ自覚はあるんだな。


「なら理想が高いんでしょうかね?」


「うーん、どうでしょうね。結局外しか見て貰えないので、疲れますね。正直。」


成る程なあ。やはり外見良い人にもそれなりに悩みはあるんだなあ。

確かに美人はモテるがその分ストーカーやら危険な目にも遭いやすい。

ツヨシさんも多分なんか変な薬を盛られて誘惑されたりして来たんだろう。


やっぱり私は平凡な見た目で良かったと思った。

学業以外で心配事なんて時間の無駄だ。


「ツヨシさんにもこの先運命の人って思える出会いが有ると良いですねえ。まあ、バイトも沢山してますし沢山出会いも有るでしょう。」


「運命ねえ…素敵な言葉ですね。エトランゼさんはそう言うの無いんですか?」


「私はこの通り、趣味といったら食べ歩き位しか無いガリ勉ですからねえ。」


「お付き合いしてる人はいないんですか?」


「うーん、高校の時には一応いましたが…まあ色々あってそれっきりです。」


「そうですか…」


実はその時付き合っていた彼氏に、いざエッチ…と言う所で私の身体をみて幻滅されたのだ…

まあメリハリも無い幼児体型に近い私…

まさにツヨシさんの言う子豚ちゃんな上に顔も平均点の丸顔。

ロリコンなら行けたかもだけどヤりたい盛りの男子高校生にはキツかったろう。

それ以来私も傷つきたく無いから男の人と付き合うのはやめた。


まあそんな愚痴を言っても仕方ないので頭の中で吐き出した。




「ではそろそろお開きにしますか。」


「はい。ではまた良いお店分かったら教えてくださいね。」


「はい。今回もご馳走様でした。」


「いえいえ」






そう言ってツヨシさんは別れ際に笑顔で手を振っていた。


色々キャラの年齢設定を見返していてあっちもこっちも同い年だった事に気付きこのエピが作れました。


正に偶然の産物…

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