屠殺の危機
「三田さんってきょうだい居ます?」
「いえ、私は父1人子の1人の子連れ狼の大五郎ですよ?」
「そうですか…」
ツヨシさんきょうだい説は違ったか…
「柳生烈堂の策略にハマり復讐の為、日々邁進しています。」
いったい三田家に何があったんだ…
怖いから聞けない…
「今日も戦さ場へ?」
「ハイ…結局ご飯に罪は有りません…」
「罪を憎んで人を憎まず…素晴らしい大岡裁きです。」
「もう無の境地です…結局食い意地張ってるだけですが…」
「ではお白洲頑張って下さい!」
「私は裁判官では無いですが…行って来ます…」
やっぱ…今日も…
居るのかな…
「エトランゼさん!お待ちしておりました!」
ニコニコしてる…居ましたね…
流石に三度目となるともう驚きませんよ…
怒りを通り越してもう何も感じませんよ…
「さあ、食べましょう!」
と、同じ流れでマリボのメニュー全種類が公園のテーブルに置いてあった。
「何だか毎度すみません…」
「いえいえ、僕がしたくてやってるだけなんでお気になさらず!」
これを気にしない人って居るんだろうか?
まあ居るかもしれないな。
三田さんやツヨシさんを筆頭に世の中変わっ人は多い…
本人が気にしないならもう私も気にしないでおこう。嬉しそうだし。私が鳴くと。
この人にとってはギブアンドテイクなんだろう…
やはり今日も最高に美味しかった!いつもの流れで食後のコーヒーまで来た。
ツヨシさんがワクワク期待する目で此方を見ている…
ハイハイ、お会計ですね。
「今日は何て言いますか。」
前回微妙に変わったからなあ。
今回は何だろう?
プギーとかか?
「えっとねー!今日はねー!『ウウ』って言って!」
ウウ!?唸り声!?遂に屠殺されるのか!?
流石にこの鳴き声はちょっと怖い…
断末魔の叫びになるのだろうか…
いや、昼日中人目も多いこの場所で決行は無いと信じたいが…
屠られるのかとちょっとビビりながら…
「ウウ…」
「わあい!可愛い!ありがとう!嬉しい!」
喜んでる…良かった…殺処分されなかった…
何だか屈辱的な状況にも関わらず謎の安堵感に脱力した。
「でもやっぱり『ブウ』が1番可愛かったなあ…」
とうっとりしている。
左様ですか…やっぱり豚に1番近い方がお好みのご様子で…
「船長さんのお仕事は順調ですか?」
気が抜けたので普通の会話に戻った。
「あー。今は○○ホテルで働いてますよ?」
何ですと!?
毎週バイトって変えられる物なのか!?
普通なら面接して採用されて色々手続きやら研修やら…
掛け持ちしてるのかな?3つも?
まあツヨシさん頭は良さそうだからもう卒業の単位も取れてて後は卒論だけとか?4年生なら授業も殆ど無いかもだし…
「バイト掛け持ちしてるんですか?」
「いやいや、僕そこまで器用じゃないですよ。」
違った…しかし更に謎は深まった…
「中々やりたい事が見つからない感じですか?」
「うーん、やりたい事って言うかやらないといけない事って感じですかね…卒業までに色々経験しておかないとって感じで。4年生になって時間出来たんで詰め込んでる感じですかね?」
「大変ですねえ…」
まあ色々謎だが多分夢や目的があってなんだろうな。
ただの変な趣味の人ってだけでは無いんだろう。
「まあ、僕は知らない事や知識を勉強して体験して身につけて行く事は好きなんで」
「あー!分かります!私も全く同意見です!」
「そうですか!いやーやっぱりエトランゼさんとは気が合いますね!」
うーん、私はイマイチ気が合ってる気はしてないが…
でも知らない知識や経験を身に付けて行くのが好きって事は共感できる。
「でも…多分今日でここのご飯をご馳走出来るのは最後になると思います…」
そうなの?まあこれで1人でじっくり集中してここのご飯が堪能できるのか。良かった。
そう思っていたらかマリボの人が此方にやって来た。
「いつもご贔屓にして下さって有難うございます。私はここの料理人の毱保と言います。」
マリボって名前だったんだ…変わった苗字だな。
「今度店を持つ事になりまして…キッチンカーは今週で閉店となります」
「えー!そうだったんですか!ここのご飯を楽しみに1週間頑張れたんで非常に残念ですが…でもお店おめでとうございます!」
「有難うございます。また宜しかったらお店の方にもいらして下さい!」
「わあ!楽しみです!でも私学生なんで気軽に行けるかな…でもお金貯めて食べに行きますね!」
「いえいえ、元々食べる人を選ぶ様な高級志向に嫌気がさしてこの様な形になっていたんで。私はお客様を選ぶんではなくてどの様な立場の方でも私の料理が食べたいと選んで頂ける店に、価格設定もそうしたいと思っています!いつも食べに来て下さっていたあなたにも是非お越し頂きたいです!」
「わあ!素敵なお考えですね!尊敬致します!是非オープンしたら伺わせていただきますね!」
「ハイ。お待ちしております。それでは失礼致します。」
そう言って鞠保さんは他のお客さんの所に挨拶に行った。
「少し寂しいですが…鞠保さんも夢の実現に向かって頑張ってたんですね。私も見習わないと…」
「僕も同感ですね。」
「あー!でも1週間の生き甲斐が…また新たに開拓しなくっちゃ!」
「なら、僕も是非お供させて下さい!料理代は出します!エトランゼさんが選ぶ美味しいと思う料理を色々試してみたいです。僕、大体1人じゃ食べ切れないし。エトランゼさんのお話聞くのも楽しいし!」
君が楽しいのは私がブウブウ鳴いてる所見る事だろ…
とも思ったけど
貧乏学生にこの財布の紐は正直有り難い。
バイトも色々してるし金は有るんだろう。
私がブウって一言鳴けば満足なら安い物だ。
せいぜい高い物食ってやる。
と悪どい事を考えてもいたが…
この色々謎で不思議くんのツヨシさんと話すのも嫌いではないと思っていた。
ちょっと変だけど、多分根は真面目そうだし。もう少し謎も解明したいと思っていた。
まあ、どうせマトモに女扱いされてはいないだろしな。
せいぜい面白ペットでいますよ。
ギブアンドテイク。
「分かりました。良いですよ。新しく気になるお店見つけたらご連絡します。」
「わあ!楽しみ!」
そう言って連絡先を交換した。