迷惑な客
この名前…?
「江藤さん、お昼どうします?」
「今日はマリボ来る日だからそこ行く!」
「分かりました。では私は休憩室で食べます」
「三田さんはいつもの?」
「はい。兵糧丸です。」
「良くあんなんで凌げるね…」
「お銀になる為の訓練です。携帯食に慣れておかないと数日間潜入で身動きできない任務に備えて」
「医者にそんな状況あるのかな…」
「いずれかげろうお銀になりますので…」
「かげろう…何か長生き出来なさそう…成虫になっても交尾と産卵で終わるし…」
「かげろうは言わばコードネームなので深く考えないで下さい。独眼竜などと同じです。」
独眼竜とか甲斐の虎とか第六天魔王なんかはコードネームじゃ無いと思うけど…
「うーん、分かったような分からないような…あっ私行くね!今は良い栄養補助食品色々あるからね!」
「では、御武運を。」
○○○○○○○○○○
今日は週1回大学近くの公園に「マリボ」が来る。
このマリボはキッチンカーで、メニューはどれも凄く美味しい。
何でも元有名なレストランのシェフだったらしいんだけど、何でキッチンカーやってるのかは詳しくは分からない。
まあそんな事は私にはどうでも良い!
美味しい物が食べられれば!
しかも私でも手に入れられる値段設定で一流の味が堪能出来る!
みんな幸せ!
さっきの三田さんは薬学部卒業から医学部に編入して来た色々変わった人だ。歳も3つ上だ。学年は私と同じ3年生だ。
見た目スタイル良くて綺麗な人なのにあんな感じで、私なんかとも気さくに話してくれる。
まあ、私は中肉中背、身長も平均よりやや低く、顔も丸顔でソバカスメガネで世間一般のランクに当て嵌めるなら中の下と言った所か。まあ所謂地味子だろう。
私は見た目を磨くよりも頭の中身を磨きたい。どうせ歳を取ればおじさんもおばさんも区別付かなくなる見た目になるんだし。
医学部には居るが、将来は医者になりたいと言うより現場の医療を裏で支えるような研究者になりたいと思っている。
そして、頭の中身を磨くのと同じ位好きな事が美味しい物を食べる事!
まあ学生の、しかも医学部なんてお金のかかる6年制の大学にいるので高級な物は食べられないけど…
普段は質素倹約…たまにちょっとだけ奮発して美味しい物を食べるのが唯一の趣味。
グルメサイトなんかの口コミチェックも怠らない。
このキッチンカーは偶々見つけて試しに食べてみたら凄く美味しかったので、検索して調べたらそんな凄い人が作ってたって知った。
毎週水曜日はここに来るらしいので、今は常連になっている。
人気もあるので、売り切れちゃうと早々に帰る事もあるから急がないと…
ちょっと遅くなってしまったので、早足で公園に向かった。
良かった、まだ居た!
てか今日は凄い行列…
買えるかなあ…
ん?
何か男の子がずーっとメニュー見てる…
後ろに並んでるOLさんとか…
鬼の形相…分かりやすく舌打ちしてる人も…
貴重な昼休みだもんね…
私も早くしないと午後の授業あるし…
知らない人に話しかけるのはあんまり得意じゃないけど…
美味しい物の為だ!
そう意を決して先頭で足止めしている男の子に話しかけに行った。
「どうしたんですか?」
「うーん…どれが良いか分からない…」
今日は3種だ。
これをこんな悩むなんて…
優柔不断すぎて呆れてしまった。
「なら、3種全部買ったらどうですか?」
「うーん、僕そんな食べられない…残すのは勿体無い…バチが当たる…食べ物残したら目が潰れるって言われた…」
いつの時代の迷信だ…
確かにマリボのご飯残したらバチが当たりそうだけど。
しかしこの人細い…3種は無理かも。私なら頑張れば行けそうだけど…
「なら、食べ切れないなら私もシェアします。どれも美味しいので少しずつ分けませんか?お金は私も出しますよ。」
「それは助けに舟です!では全種買います。」
何か見た目若いのに言い回しとか三田さんみたいだなあと思っていた。
三田さんは薬剤師の免許の為薬学部4年制を卒業してから医学部に2年に編入しました。
現在2018年入学以降から6年制でないと取れないらしいですが三田さんの入学時は間に合っていると設定しています。
まあ他にも色々ツッコミ所もあるかと思いますが何卒ご容赦。