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3 破壊された道祖神

 清愁は霊視ができる。相手が人間だろうと幽霊だろうと相手の記憶や情景を見る事ができ、ある程度相手の事情を知ることで浄霊をしやすくしている。才能というよりも修行や訓練を積んでできる事らしく、中嶋は霊視ができない。


「それは構いませんが、何故わざわざ清愁さんが今回の件を調べるんですか」


 そう聞くと、部屋の傍らにおいてあった箱を持ってくる。箱を開けると中から取り出したのは石でできた頭のない三十センチメートルほどの仏像だった。胴体部分だけ見てもかなり年数の経ったものだという事がわかる。


「これは?」

道祖神(どうそじん)の一種で事件のあった近隣で祀られていた物だ。事件から少したって破損しているのが見つかった。何かあったら困るからって近隣の人が言ってきたからウチに持ってきたんだ。正直専門が違うんだが、まあ一応預かるだけ預かったよ。誰かの悪戯で壊されたっていう感じじゃなく、頭だけが砕けたようなんだ」


 受け取ってじっくり見てみると確かに胴体部分などには傷はなく、首の部分も簡単に壊れそうなほど細いわけではない。首のつなぎ目は歪で破裂したか引きちぎったかのような抉れ方だ。


「道祖神が壊れたからおかしな事件が起きた、と?」

「いや、おそらく逆だ。おかしな事が起きたから道祖神が壊れたんだ。遺族と遺体を霊視してみても何か悪いモノがついている様子はない。凶悪犯が子供達を殺して、とかそういう事件じゃないような気がするんだよ。ただ道祖神が壊れたままなのはまずい、あの町はド真ん中に大きな霊道が通っているから何が起こるかわからない」

「新たな道祖神を置いても原因がわからないと、ですか。なるほど確かに、少し急ぐ必要がありますね」


 仏像を返しながら手帳を取り出す。今聞いた事を簡単に書き記した。これだけではあまりにも情報が足りない。後で詳しく調べる必要がある。


『どうそじん? ってのが壊れちゃう理由って何があると思いますか?』


 黙って聞いていた一華が素朴な疑問を投げかける。正直あまり話の内容にはついていけていないが、住職がわざわざ依頼をしてきたのなら大事なのだろうということはわかった。


「そうだねえ、まあいろいろ考えられるが、何らかの異変が起きてそれに耐えられなかったと考えると祀られてるものより強力な力が働いたということかな」

『何かこう、邪悪なパワーとか?』


 一華の言葉に中嶋が口を挟む。


「強い力すべてが邪悪なものとは限らない。格が上でも負けるし反発するものなら砕ける」

『えーっとつまり?』

「同系列、例えば交通安全のお守り一個より神主のきちんとした厄除けの方がグレード上だろ。厄除けやってもらったらお守りの効果はかぶって打ち負ける。打ち消されるだけならいいが、吸収して弾けるタイプならバチっと」

『あ、なるほど』


 うんうん、と頷いて納得すると今度は清愁が説明した。


「今回の像がもし邪悪なものに負けて砕けたのなら、たぶんもっと木っ端微塵だし私も何か気づくはずだ。一部だけ吹き飛んだのなら何らかの予想外な作用があったと思ってもいいかもしれない」

『予想外。蚊に刺されてかゆくて掻き毟ったところにかゆみ止め塗ったらしみ過ぎたみたいな?』

「どういう例えだよ。しかもよく考えれば全然違う。蚊を寄せ付けない為に蚊取り線香百個つけて寝たら煙すぎて寝られないみたいな感じ」

「いやいや、コンセント使う方の虫除けを百個つけっぱなしにしておいたらトラッキング現象で家が火事になったって所じゃないかな」

「砂鉄の中に超強力磁石を落っことしたパターンだろ」


 最後の声は中嶋たちではない。振り返ればやや機嫌の悪そうな総弦が猫を抱えながら廊下からこちらを見ていた。髪の毛があちこちはねているのでいかにも寝起きといった風貌だ。


「ああ、それっぽいな」

『あー、なんとなく分かった』

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