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17 生臭坊主×3

 一番上の兄の結婚を急かしたのも、二番目の兄の試験不合格が続き諦めようとしていたところに渇を入れたのも自分だ。ちゃんと自分の言った事を叶えてくれようとしている。


『……ありがとう、ございます……教えてくれて……』

「なあに、構わんよ。ホレ、おじいちゃんの胸で泣いていいぞ」


 大きく手を広げる戒縁に小さく笑い、首を振った。


「遠慮せんでも、ほれほれ」

『……とりあえずその何かを揉もうとしている手の動きがなければ考えても良かったんですけどね』


 ワキワキと動く手を見ながら言うと、一応中嶋の方へと避難する。そして思った疑問を口にした。


『皆さんの経験とかで、何か心当たりとかないですか。成仏しない、霊視できない……今まで経験なくてもこういう事だったらありえるかも、みたいな』


 一華の言葉に全員が考え込むように黙り込む。その言葉に一応中嶋がフォローを入れた。


「ウチの所長にも相談はしたんですけど、パっと思いつく原因はないそうです。何かないか調べてみるとは言ってましたが、今のところは何も」


 中嶋の言葉を受けて清愁がふむ、と考え込む仕草をした。そして坊主三人でなにやら相談をし始める。


「……ジジイと親父、意見は」

「今考えてるけど、自分でも考えろよアホ息子。修行も仕事もサボるから知識も経験も増えないんだよ。一体いつまで一から十まで人に聞いてるつもりだ」

「そうだぞ、このロクデナシのクソだって一応人様に見せられる人間にはなったんだ。お前も精進せい」

「「テメエにだけは言われたくねえんだよクソジジイ」」

「なーんでお前ら親子は人を貶す時だけ息ピッタリなんだかなあ、いっつもじいちゃんを罵って」

「人のこと木刀やら卒塔婆(そとば)やらでブン殴ってたサイコ野郎を尊敬なんてするわけないだろ」

「ガキの頃から女の尻追い回す姿しか見たことねえから尊敬も信用もしてねえわ。いいから考えろよそれしか取り柄ねえだろテメエら」

「半人前以下の尻の青いガキが偉そうに言うなアホ」

「その取り柄さえ生かしきれてないお前に言われる筋合いないわい、バーカバーカ。まあ怪しい術や強力な保護かけられてる様子もないし、呪われてるとかそういうのはないんじゃないのか。何なら今お前に呪いでもかけてやろうか」

「あ、それいいな。自力で呪い解いてみろ、じゃなきゃ死ぬ。これくらいすればちったぁ真面目に修行するかもな」

「ああ!?」


 そんな三人の様子を見ながら一華と中嶋は静かに言葉を交わした。


『あれ止めないとそろそろ喧嘩始まらないですか』

「俺にあの三人止められるわけないだろ。総弦は空手やってたらしいし戒縁さんと清愁さんは生きたキラーマシンだぞ、一瞬で負けるわ。ほっとくに限る」


 中嶋はあくまで喧嘩が強かっただけだ。一応カンフー映画にハマって少林寺拳法を習ったことがあるが、実はその師匠が清愁だったりする。文字通り触らぬ神に祟りなしといったところか。はは、と一華が乾いた笑いを漏らすとようやく話がまとまったのか三人の会話が落ち着いた。代表して清愁が一華に言葉をかける。


「結局よくわからん、ってのが結論。何か理由があってこうなってるのは間違いないんだが、その理由に結びつく特徴というものがまるで感じられないんだ」

『そうですか……』

「まあまあ。坊主の威信にかけて出来る事は協力するから何でも言ってくれ。ロクデナシのクソ坊主揃いだけど、経験や能力は生かせるから」


 清愁の言葉に一華だけでなく中嶋も頭を下げた。


「すみません、そうさせてもらいます」

「おう、佐藤にもよろしく。相変わらずそこら辺フラフラしてるんだろ、見かけたら柱にでも縛り付けておいた方がいいよ」

「それができれば苦労しないんですけどね」


 清愁たちにお礼を言い、中嶋と一華は寺を後にした。珍しく口数の少ない一華に中嶋は問いかける。


「どうした」

『いえ……。家の様子わかったのが本当に嬉しかったんです。どうしても勇気でなくて見に行けなかったけど、元気でやってるなら良かった。皆ちゃんと幸せになっていってるんだなーって』

「失った悲しみはすぐには消えないだろうけどな。年月が経てばまた昔を思い出して懐かしむ余裕が出てくるだろ」

『そうですね……。あの子達も次生まれてきたら、もっと幸せになれるといいですね』

「ああ」

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