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14 双子

「総司は双子だったんだけど、生まれた時に難産でカミさんと兄弟の方は死んじゃってね。あんな体質で友達もいないし、私も親父も忙しくてずっと一人でいることが多くて。ある日たまたま来たサト君が気づいたんだよ。総司に双子の兄弟……青磁(せいじ)の魂が入り込んでることに」


 幼い息子を放っておくことはしたくなかったが、寺の財政状態というのは本当に厳しく保育園に入れる余裕もなかったという。これから小、中学とあがっていく事を考えて貯蓄をしようとがむしゃらに修行をして働いたが、それが結果的に息子を長い間一人にしてしまった。

 霊との付き合い方を教えようにも幼い子供にそれが理解できるわけもなく、当時は霊と生きた人間の区別もついていないような状態だったので説明のしようがなかったらしい。


「不思議には思ってたんだ。いつも一人でいるのに寂しそうな様子もないし、たまに独り言いうけどまわりに霊はいない。一人遊びが上手い子なんだろうと勝手に思ってた。そしたら肉体の中に青磁がいるって言うじゃないか。気づかなかったよ、二人は双子だったこともあって本当にそっくりだったんだ。日替わりで入れ替わってたらしい。親としては失格だ」


 ははっとおかしそうに笑う清愁に、一華は複雑な表情を浮かべる。今でこそ笑い話にしているが、当事は相当悩み苦しんだはずだ。


「で、ここが本当に情けない話なんだけど……青磁を成仏させることが私にはできなかった。無論成仏させてやりたい気持ちがあったんだが、総司も青磁も泣いて嫌がってね」

『それは……情けなくないですよ、親として』

「親としてはそうだが僧侶としては情けないよ。この世にとどまり続けるとどんなモノになってしまうかわからないのを知ってるのに。で、なんとかしてくれたのがサト君だったんだ。盆でもないのに無理にカミさんに来てもらって……無理に来てもらうと全身激痛ですごく苦しいらしいけど、青磁のためにって頑張って来てくれたんだ。母親と一緒に逝けばいいっていうのはサト君の案だった。最終的にはぎゃーぎゃー泣き叫ぶ総司を押さえつけながらなんとか青磁を送ることが出来たよ。青磁のことはそれで片付いたけど、今度は総司がねえ……唯一の心の拠り所を奪われてサト君を敵視しちゃってさ、石投げるわ噛み付くわ。サト君は恨まれるの承知で引き受けてくれたんだけどね。父親を憎んじゃいけないからって」


 当時中嶋は高校生のはずだ。大人から見れば中嶋も子供の部類に入るというのにそんな提案をしてくれて、感情の矛先を自分に向けてくれた。清愁は感謝してもしきれないと言ってほほ笑む。


『それでサトちゃん言わないんですね知り合いだったって事。でも、今だからこそ言えばわかってくれると思うんですけど……』

「その辺はまあ、サト君なりの気遣いだろう。総司にとって青磁は兄弟ってだけじゃなく特別な存在だった。依存しているというレベルを超えて二重人格のような、自分自身とさえ思っていた節もあったからね。突っついて昔を掘り起こしたくないんだろう。今もまだ総司にとって青磁は触れちゃいかん地雷みたいなもんだ」

『その……青磁さんは、お盆には会えないんですか?』

「翌年の盆に来たカミさんの話じゃすぐに次の生へと旅立ったってことだ。子供の方が生まれ変わるの早いらしい。総司は会えるのずっと楽しみにしてたから二度と会えないのが受け入れられなくてまた喚くし、しばらく大変だった」


 話を聞いた一華は言葉がかけられない。今こうして幽霊として存在していて不思議な事を体験しているが、生きていた時はごく普通の生活を送っていた。物心ついた時からそういったものを、異常ではなく当たり前に経験してきている彼らの苦しみを深く理解する事はできない。

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