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13 ヤンチャ伝説

 帰ろうとしたが一応問題解決をしたからと夕飯をご馳走になることになり、酒が入り大広間で大宴会状態となった。中嶋は酒に強いらしくいつもとまったく変わらない状態だったが、総弦は酒にめっぽう弱い、そのくせ飲みたがるもので完全に悪酔い状態だ。一番の被害者は一華だった。


『くっさ! 総弦さん酒臭い!』

「酒飲んでるんだからあったりまえだろーが! 成仏しろこの悪霊ー!」


 言いながら清酒を口に含んで思い切りブーっと吹きかける。


『ぎゃー! 汚い、汚いから!』

「おかしいな……ザコ霊ならこれで片付くのに」


 一華は幽霊になってから同じ幽霊以外に嗅覚が働かない。例えば動物霊が近くにいると獣臭を嗅ぐ事はあるが、中嶋たちがカレーを食べようが鍋をつつこうがその香りを嗅ぐ事はできないのだ。

 しかし総弦は法力があり霊に直接影響を与えることができるため、総弦の飲食したものなどは一華にも影響が出るらしく酒の匂いに顔を顰めていた。当然今の酒シャワーも実際にかけられた感触があり、しかしタオルなどで拭く事もできないのでどうする事もできない。中嶋は清酒を飲みながら素朴な疑問を投げかけた。


「一華、お前酒飲んだことないのか」

『あるわけないでしょ!? 未成年ですよ私!』

「真面目ちゃんだなあ、俺は高校入る頃には行きつけの飲み屋があったぞ。まあ法律厳しくなる前だからできた事だけどな」

「あ、私もそうだな。ついでに飲み終わった酒瓶でヤクザの頭かち割ってお巡りさんとヤクザに捕まりそうになったことあるよ、まあ逃げ切れたけどね」


 あっはっはと笑う中嶋と清愁に一華は頭を抱える。


『あああああ! この場にまともな人いないし!!』

「幽霊のお前が一番まともじゃねーっつーのー」


 総弦が据わった目で何か印を結び始め……たところで清愁の蹴りが総弦の鳩尾にきれいに入った。


「ぐっ」


 小さな悲鳴がもれ、そのまま床に沈みピクリとも動かない。とても中年とは思えない素早い蹴りに総弦は避ける事も、そもそも蹴られる事に気づいてもいなかった。酔っているから反応が遅れたという事を差し引いても今の動きは呆気にとられる。


 清愁はやれやれといった様子で床に転がる息子を跨ぐと席に戻り再び酒を煽り始めた。


『あ、あの……大丈夫なんですか』

「平気平気、どうせ明日になったら覚えてないよ。酒の飲み方もわからんアホはこれで十分だ」

「ちなみに今彼はなにを?」

「不動明王だね」

「ああ、確かにアホだなそりゃ」


 呆れた様子の中嶋と清愁。もはやこのあたりの会話が分からないのは今回何度もあるので一華は突っ込まない。何かすごい技をかけようとして父親に蹴りを入れられたんだろうということさえわかっていればいい気がした。

 結局その後は中嶋も酒を切り上げ、清愁の勧めもあって寺に泊まることとなった。中嶋は客間を使わせてもらうことになり、風呂に入ると言って部屋を出て行った。総弦は畳に転がされたままとなり、一応清愁が毛布をかけてやる。その様子を見ながら一華は気になっていた事を聞いてみた。


『サトちゃんって高校生の時にここに来てたんですよね? 総弦さんとも会ってるって言ってたし』

「ああ、佐藤の紹介でね。元々は佐藤と私が知り合いなんだよ」

『へえ、霊感を持つもの同士知り合った感じですか』

「いや、若い頃にゴルフクラブで戦った事をきっかけに知り合った」

『……ゴルフクラブって戦う道具じゃないと思いますけど……』

「アレ結構殴りやすくてね」

『あ、いいです詳しい描写は。そうじゃなくて、小さい頃の総弦さんにも会ってるっていうので。言えばいいのになあと』


 詳しい話をされないよう途中で言葉を遮って言えば、清愁はふむ、と腕を組んで考え込む。そして昔話をしようと切り出した。

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