11 ひとまず解決
その結果を見て顔を顰めた総弦だったが、子供達の『何も聞こえないよー』という声と一華、中嶋、ついでに清愁からの早くしろオーラにぐっと何かを堪え引きつった顔をしながら震える声で言う。
「み……見事だ少年達……」
すぐ横でブッフーと吹きだす中嶋に思い切り数珠を投げつける。それでも中嶋は腹を抱えて肩を震わせていた。
『あ、なんかきこえる!』
『かみさま? かみさまなの?』
スゲー、とはしゃぐ子供達を見ながら中嶋は目をこらす。徐々に黒い影から子供達の輪郭が出始めていた。自分達から興味を示した清愁の声は聞こえていたようだが、完全に第三者となっている総弦の声が聞こえているということは彼らにかかっていた保護が解け始めているようだ。
現れ始めた三人の子供達の顔を確認すると、事前に写真で見ていた亡くなった子供達と断定できた。
「あの悪者を退治してくれた事を……」
『えー、なに?』
『なんていってるの?』
『なんかモショモショしてるね』
『あ、すみません神様、もっと声張ってもらっていいですか。ちょっと聞こえないです』
一華からのダメだしにブチっと何かが切れる音でもしそうな様子で再び数珠を投げつけようとし、その腕をガッシリと中嶋につかまれブルブルと震える総弦は完全に顔に「殺す」と書いてあるかのようだ。
こんなところでモタモタしていられない。中嶋は小さくため息をつくと総弦の代わりにセリフを言う事にした。
「悪者をやっつけてくれた勇気ある子供達よ、ありがとう。ご褒美にもっとすごい必殺技……あー、メテオインパルスウェーブを教えてあげよう」
中嶋のセリフが終わるタイミングで清愁が手で何かの印を組むと北の方向に光を指し示す。霊に自分から成仏してもらう時迷わないよう道を示すことがあると言っていたので、この光がそうなのだろう。
『ひかってるよ!?』
『スターダストよりすごいひっさつわざってなんだろうな!』
『バリヤだよきっと、まだバリヤもってないし』
『えー、バリヤはひっさつわざじゃないよ。もっとすごいのだよ』
『すげー、いってみよーぜ!』
きゃっきゃとはしゃぎならが子供達は光の方向へと走りだし、そのまま光の中へと消えていった。しんと静まりかえり、全員が立ち上がって消えていった方を見る。
「子供達は成仏したね、気配が消えた」
清愁も途中から取り出していた数珠をしまいながら微笑む。中嶋はふうっと息をつき、総弦は無言のまま一華にチョップをかました。
『いった!』
「調子に乗ってんじゃねえぞ」
『聞こえないから聞こえないって言っただけです~! あそこでグダったら締まらないでしょ!』
「人が恥ずかしい思いしてセリフ言ってんだから察しろよ!」
「あんなの恥ずかしがったほうが負けだ。それよりお前、あの程度のマントラ跳ね返すこともできないのか? なっさけない……父ちゃん涙出そうだ」
両手で顔を隠して泣く真似をすると総弦がフンと明後日の方向を見る。そのやり取りを見ていた中嶋がくくっと笑った。
「跳ね返せなかったんじゃなく、跳ね返さなかったんだよなー? いくら保護がかけられてるっつっても子供達にどんな影響あるかわかったもんじゃないもんな、子供の霊には心優しい総司君?」
ニヤニヤ笑って言えば目を吊り上げて中嶋に食って掛かる。
「ちげーよ! あっちのマントラのが長くてめんどくさかっただけだ! つーか何で俺のことに詳しいんだよキモチワリィな!」
「しっつれーな。お前がわかりやすすぎるだけだ」
中嶋が総弦の事を知っているのは当然子供の頃会って話をしたことがあるからだ。素直にそう言えばいいのに中嶋はそれを言おうとはしない。何か言えない理由があるのかもしれないが。
『良いコンビですよね、サトちゃんと総弦さんって。っていうか、総弦さんって総司って言うんですか』
素朴な疑問を口にすると総弦の変わりに清愁が「ああ」と教えてくれた。
「総弦は僧侶としての名前だよ。得度っていう、出家する儀式の時にあげるもんなんだけどコイツはその辺曖昧でやってないんだよね。四代前の住職の弦の字をくれてやったっていうのにまーだこんな状態だし」
「継がねえっつってんだろうが!」
「言うのは自由、現代において信じられるのは法律と証拠です。ありがたやありがたや」




