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10 必殺技!

『よし、きいてる! それじゃトドメだ! いくぞ、せーの!』


 三人が大きく息を吸う様子を見た瞬間、見えないように清愁と総弦が印を結んだ。相手を金縛りにする強力なマントラを使ってきたのだ、万が一人間に効果のある必殺技でもされたらたまらない。無駄かもしれないが保護の印を結ぶ。


『スターダストクラスタアアアアアア!』


 右手を左手でガシっと支えて何かビームを放っていると思われる決めポーズをして三人同時に叫んだ。


「……は?」

「いいから続けろ。今しかないぞ」


 目が点になった総弦に中嶋が冷静に突っ込みを入れる。ちなみに目が点になったのは一華も同じで、冷静に対応したのは清愁だった。


「ぐわあああああああああ~!!」


 苦しみながらバタリと倒れる。呆気に取られた総弦だったが中嶋の言葉に我に返り、以前中嶋にも施した霊に姿を見せなくする術式を清愁にかけた。おそらく子供達からは怪人がトドメをさされて散ったように見えただろう。


『やった!』

『かったああ!』

『スゲー! やっぱスターダストクラスターはさいきょうなんだ!』


 わいわいと大騒ぎする子供達を前に、総弦は頭を抱えこむ。


「何で最後の最後でそっちの必殺技にいくんだよ……どんなすげえもんが来るのかと身構えてりゃ……」

「そっちの必殺技だから良かったんだろ。それともこの辺一帯焼け野原になるものでも使って欲しかったのか」

「いや、そりゃそうなんだけど……なんかスゲー疲れた」


 はああ、と大きなため息をついてとうとう座りこんでしまった。疲れたのは先ほどマントラを唱え精神力を使ったというのもあるだろう。

子供達は一華の方へと走って近寄っていく。


『おねーさん、だいじょうぶ?』

『うん、大丈夫。みんなのおかげだよ、ありがとう。これであの怪人は復活しないだろうね』

『しないよぜったい! スターダストクラスターはすごいんだよ!』

『うんうん、凄かったー! おねえさんビックリしちゃったよ!』


 子供達と会話をしながら一華は事前に打ち合わせしていたシナリオどおりに会話を進める。ここからが一華の腕の見せ所だ。子供達を成仏の道へと向かわせなければならない。


『みんなはここを守ってるの?』

『そうだよ! ここにはワルイやつがたっくさんいるんだって! だからボクたちがパトロールしてるんだ』

『そっか、凄いね。じゃあ皆はここの神様の子分なんだ』

『かみさま……? え、しらない。いるの?』


 ノリ君がそう言うと他の二人も動揺したようにひそひそと話し始める。聞こえてくるのは知ってた? いや知らないというやりとりだった。


『いるよ、あっちに。見たことないの?』


 そういって一華が指差したのは北、子供達が近寄らなかった方角だ。清愁の話ではそちらが黄泉への入り口らしい。子供達はプルプルと首を振る。


『あっちはゼッタイいっちゃだめって、ハルちゃんが』


 ハルちゃん、という言葉に思わず一華が固まる。ここで正体を掴む為に聞き込むべきかと思い中嶋をチラリと見るが、中嶋は静かに首を振った。事前の打ち合わせでも最優先は子供達の成仏と話していたので、ここは話をそらしてややこしくせず台本どおりにいけという事だろう。


『そっか、じゃあハルちゃんは神様がいるのを知らなかったのかもね。あのね、ここは昔から神様のお庭なの。皆がパトロールしてきたなら、神様にその事を言ってあげよう。きっと喜んでくれるよ』


 不安にさせないように努めて明るい口調で言ってはみたが、少し迷ったように三人はまた相談し始めた。


『どうする?』

『かみさまってどんな人?』

『こわいかな』


 いきなり神がいると言われてもどうすればいいのかわからないらしく、あまり雲行きが良くない。ひそひそと相談するばかりで話に乗ってこようとしないのだ。ここは子供目線に合わせなければダメかと少し作戦を変える。


『みんな、よーく耳をすませてみて……聞こえない? 神様の声』

『え?』

『んー?』


 子供達は口をつぐんで耳に手を当てているようだ。そして一華は中嶋たちの方を見て必死に目で訴える。


「え、これ神の声をこっちでやれっつー事?」


 嫌そうに総弦が言えば中嶋は小声で、しかし勢いよく手を上下に振った。


「ジャンケンポン」


 勢いと条件反射につられて慌てて総弦が出したのはグー、中嶋はパー。

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