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1 霊が歌う

 いつものように浮気調査を依頼され、中嶋はターゲットの尾行と素行調査をしていた。今回も大方いつもどおり黒、浮気をしているという結果が出ている。

 最後の詰めとして証拠の写真と会話の録音を済ませ、帰ろうと駅に向かう途中で突然の雷雨にあたり雨宿りをしていた。寂れた商店街の閉店したと思われるシャッターの下りた店の軒先。走って通り抜けるにはあまりにも無謀な大降りで、しかし通り雨だろうと踏んで少し待つことにした。

 辺りに(もや)が出るほどの激しい降り。雨の叩きつけられる轟音しか聞こえず、周りには車も人の気配もない。

 少しの間そうしていると、どこからか子供の声が聞こえてきた。


ひーとつ ふーたつ あけよののりと みーっつ よーっつ よふけののりと


 その声は複数重なっており、音が反響してどこから聞こえるのかわからない。靄の中を子供の影が通り過ぎていく。姿形ははっきり見えず、はっきり見ようとも思わない。中嶋にはそれが生きた子供ではない事がわかったからだ。

 自分が「見える」人間だと悟られないようにするのは今も変わっていない。こういう時は見聞きしようとせずやり過ごす事にしている。

 声と影はゆっくりと目の前を通り過ぎていき、やがて音も遠のいていく。


ひーとつ ふーたつ よふけのじゅーご みーっつ よーっつ あけよのじゅーご


 途中から言葉が変わりどんどん遠のいていき、やがて完全に聞こえなくなった。

 普通ではない事も当たり前のように経験してきた。子供の頃はそれが何故自分にしか見聞きできないのか、何故周りの人はわかってくれないのかが理解できず首を突っ込もうとしていた。

 今思えばとても危険なことだったが、当事は仕方のない事だ。噓つきだ、おかしい子だと言われるのが悲しくてなんとか証明しようと躍起になっていたいたのだから。

 そのうち証明する事も語ることも諦め、他人を拒絶した生活を送るようになったがそういう経験を得て今の自分がいる。こうしてありえない事態も気にすることなくやり過ごせるようになった。

 あの子供達が一体何者で、あれが何の歌なのかはわからない。

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