隙はお好き?3
金時さんとのデートあと、私は彼らについた。
もちろん、本気でデートの申し出があったとは思っていない。ただ、彼らが自分と接触したがっていることは分かった。私を呼び出す理由はなんだろう。彼らの狙いを探りたくて、話に乗ってみようと思ったのだ。
金時さんから指定されたのは、街中のよくあるコーヒーチェーン店だった。
「こんなお店だもの。本気のデートではないわね。」
自動扉がするりと空き、人もまばらな店内を見回す。金髪頭を探していると、金時さんは手をひらひらさせて私を呼んだ。
コーヒーを買って金時さんの目の前に着席すると、彼はおもむろにこう言った。
「今日はデートありがとねー。おねーさんとデートできて幸せ!」
手を組みひじを合わせて左右に振りながら、からだをくねくねくねらせる彼に、私は本題を切り出した。
「私から何を聞きたいんでしょうか?」
彼は金色の髪をくるくる巻きながら口をとんがらせた。
「えー、ウキウキで来てくれたと思ってたのにー。」
「コーヒー一杯さえ払ってくれる気なんてないのでしょう?そんなデートってありますか?」
紙のカップをつまみ上げながら答える。
「えー、秘書ちゃんてば、男が全部払わないと嫌なタイプなのー?」
「そういうのはいいです。要件は何ですか?」
やれやれというように手を広げて、金時さんは背もたれに深く体を預けた。
「俺ねー。許せない奴がいるのー。だからねー、人を憎んでる奴の顔がすぐわかるのー。秘書のおねーさんはさー、こっち側の人間だよねー。」
そう言って、私の顔をまっすぐ指さした。目を細め笑っている。
うまくあしらおうとしたとき、金時さんは真顔になってつぶやいた。
「自分一人で社長の寝こみを襲うのは難しくない?手を組んだほうが楽だよ。」
と。
「あんた、社長を恨んでんだろ。」
この時、私はどんな顔をしていたんだろう。少なくとも無表情ではなかったとは思う。
今まで必死で能面女を装っているというのに。
「俺たちに手を貸してくれたら、俺たちも手を貸せる。」
すぐには堪えられず、コーヒーを一口だけ飲んだ。
どうせばれたのなら、こっちに乗ってみようか。
私にはもう守るものは何もないんだもの。