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炎上鎮火1

「いやー、社長さん!今日の放送よかったっすねー。」

 スマホから、金髪男のにやにや声が聞こえてきた。


「ところでちゃんと見れましたー?」

 くそ!電話越しでも金髪男のなめ腐った態度が見えるようだ。

 とはいえ、秘書にYouTubeのみかたを教えてもらい、今日は何とか見ることができた感じだ。

 

 秘書によると、奴らのYoutubeはそこまで再生回数というのが多くないらしい。「再生回数ってなんだ?」と聞くと、「2人組の人気のバロメーターのようなものです。」と言っていた。あれだけ生意気にYoutuberだと名乗っていた割には、全然人気がないとは。今回は俺のおかげで再生回数とやらが上がり、奴らは一気に有名になったらしい。


「今日の再生回数、人気YouTuber並みっすよ。」

 金髪男は有頂天だ。

 秘書曰く、「渦中のクリーンサービス社長登場!!」と、1週間前から宣伝していたため、今日はかなりの人数が放送を見たようだ。顔は隠しての放送だったが、放送中からいろんな人間から携帯に電話がかかってきて、相当な反響があったことはネットに疎い俺にも分かった。


「コメント欄見ました?」

 ざらりとした低い声が聞こえる。今度はサングラス男が話しかけてきたようだ。


「まだ、批判の声は多いじゃないか!助けてやると大口叩いてたのはどこのどいつだ!!」

 確かに擁護するようなコメントは上がってきてはいるが、批判するようなコメントも多い。


「そう簡単に炎上はなくなりませんよ。」

 ため息交じりの声が聞こえる。

「いいですか?鬼頭クリーンサービスは今やほかの悪徳業者並みの大悪党としてあつかわれていますよね?それがたった一回の釈明で『はい、終わり』ってなるわけないでしょう。」


「約束が違うだろう!!」


「まあまあ、社長さん!今回はわかってくれる人ができたってだけでもよしとしましょうよー。」

 金髪男の声が割って入る。

 確かにうちと同時期に特定された同業者の中には、不法投棄まがいのことをしている業者もあり、すでに逮捕者が出ていた。それもあって、うちへの誹謗中傷は増加の一途をたどるばかりだった。


「ネットってやつはあんがい単純でねー。うまくやれば一気に流れを変えることができるんすよー。」


「ほんとか?ほんとに何とかなるのか?」


「もちろんっす。今回はあくまで第一弾! こっからっすよ!」

 ひゃひゃひゃと笑う声が聞こえた後、

「その代わり、この炎上が収まったら・・・約束のアレ、おねがいしますよー。」

 急にトーンを落とした真面目な声が響いてきた。背筋がぞくっとする。

 

 普段ふざけている奴が急に真面目になる瞬間は怖い。 

 サングラス男よりもこのふざけた優男のほうが格上なのは、インタビュー動画を撮っている間にわかった。だからこそ、金髪男にはあまり強く出られなくなってしまった。

 しかし、自分だっていくつかの授業を仕切る社長なのだ。ビビっている姿は見せられない。精一杯余裕のある声を絞り出す。


「もちろんだ!金はちゃんと払う!」


 






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