目には目を4
家の前に、変な二人組がいた。
「あ、おたく、鬼頭クリーンサービスの社長さん?」
金髪のガリガリ男がにやにやしながら話しかけてくる。タバコとコーヒーのにおいの混じった口臭がぷんと匂ってきたので思わず顔をしかめる。
「あ、俺たちね、社長さんと話したくて来たのよ。」
まったく口の利き方のなっていない若造だ。早く家に帰りたいので、こんな奴らの相手をしている暇はない。
金髪男の横をすり抜けようとすると、もう一人の男に前をふさがれた。
もう片方は、手に棒を持っていた。思わず棒の先を見ると携帯がついている。たまに若い女が持っている自撮り棒ってやつか。サングラスで目は見えないが、にやにや笑っているのは金髪男と同じだ。
「時間そんなにかかんないから、付き合ってよ、しゃちょーさーん。」
「なんなんだお前たちは。ここは私有地だぞ。警察を呼ばれたくなかったらとっとと立ち去れ!」
俺が、そう言って立ち去ろうとすると、
「えー、俺たちにそんなこと言っていいのー?今の言葉も全世界にながしちゃうよー。」
ぎゃははと笑い、男たちは馴れ馴れしく肩を組もうとしてきた。
「おい、勝手に人に触るな!」
肩に置かれた手を必死に払いのける。
全世界に流す?何を言っているんだこいつらは。
「社長さん、あれだ!Youtubeとか見ない人だ!!」
サングラス男が大声で自撮り棒の先を自分のほうに向けた。
「これね、今、動画とってんの。社長さんも映ってるよ。俺たちね、世直しYoutuberなの。」
「Youtuberってあれか?孫がよく見てるあのくだらないやつか?」
「おー、社長さん、くだらない発言はダメだよ。ちびっこの憧れの職業だし、お孫ちゃんも泣いちゃうよ。」
二人は、顔を見合わせてゲラゲラ笑っている。
「なんの用だ!!」
「社長さんさ、今ネットで自分がすごいことになってるの知らないでしょ?」
「ネットだと?・・・おまえらか!!うちの会社につまらん電話をかけてきている奴らは!?」
俺はカッとなって叫んだ。
数日前から、会社には誹謗中傷の電話がかかってきて、仕事にならないと会社の奴らが言っていた。
おかげで取引先からの電話をとることができなくなり、自分たちの携帯で取引先と連絡を取るしかなくなった。メールも膨大な量が送りつけてこられるので、必要なメールを捌くだけで一苦労だ。
こいつらのしわざだったのか!とっちめてやる。
警察に電話しようと、携帯をスーツのポケットから取り出そうとしたその時、
「俺たち、社長さんを助けに来たんだよ。直接みんなに誹謗中傷するなって訴えることができるよ?」
金髪男が、にっこりとほほ笑みながら、ゆっくりと顔を近付けてきた。




