目には目を2
「法に反することはしてないってことでいいんかな?」
飛猿さんが確認する。
「大丈夫です。俺自身は何もしてませんので。」
俺は続けて話す。
「これはとある場所の土を水に溶かして検査したものです。ヒ素の反応は出ていますがそれほど高くありませんので安心してください。もともとヒ素って自然界には当たり前に存在しているんです。岩とか鉱物とか、海にもあるし、ひじきとかにも含まれてます。これも人を殺すほどの濃度ではありません。」
「なんだあ。」
「驚かすなよ。」
「ひじきに入ってるの?俺ひじきめっちゃ好きなんだけど。」
「ひじき大量に食わせたらタヒれるの?」
コメント欄が荒れる。
「ただこの土ってどこで採ってきたと思います?」
俺の問いにコメント欄が答えてくる。
「どこかの工場?」
「意外に飛猿の家の前とか?」
「例のうんこにはヒ素が含まれてたのかwww」
「あぶねえ、ヒ素うんこwww」
コメント欄は大喜利になっている。
「これ、不法投棄されていた場所の土なんですよ。」
「それだよそれ!DMで不法投棄の話がしたいって言ってたやつだよね。」
大げさに胸をなでおろすリアクションをしながら飛猿さんが割り込んでくる。
「なんか急にヒ素だとか何とかいうからさ、俺だまされたのかとおもったわ!」
「驚かせてすみません、皆さん。飛猿さんもすみません。」
丁寧に頭を下げる。
「でも、不法投棄の現場からヒ素が出てくるって聞くと結構怖くないですか?」
「いや、怖いわ。てか、しらんかったわ。」
「不法投棄って結構身近にあるよね。」
「ゴミ屋敷とかって同じような感じじゃん?そこも危険ってこと?」
「ヒ素ってそんなにゴロゴロ落ちてんの?」
飛猿さんはコメント欄をいくつか読んで、俺に尋ねた。
「結構、皆さんヒ素に興味津々みたいだけど、もう少し詳しく話してもらってもいい?」
俺は頷いて話し始める。
「さっきも言った通り、自然界には当たり前にヒ素は存在します。もちろんごく微量です。昔はヒ素を使ってネズミ殺しを作っていたので、わりと手に入りやすい毒でもあったんです。ただ、ヒ素は猛毒です。ヒ素を使った毒殺もあり、ヒ素の扱いは厳しく制限されるようになりました。でも現在でも工業用に様々な業界で使われています。医療系農業系はもちろん、IT業界や家電業界、印刷業界でも使われています。悪いことばかりではないんですよ。」
「えー、特別なところにしかないと思ってた。」
「結構使われてるんだね。」
「勉強になる。」
「このちゃんねんるはいつから教養番組になったんだw」
コメント欄の反応が良くてよかった。これならうまく問題提起ができそうだ。




