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目には目を1

 「はーい、それではここで僕に連絡をくれた桃太郎侍さんにお話をきいてみたいとおもいまーす。」

 真っ赤な猿のお面をかぶった男性と画面がつながる。人気暴露系Youtuberの飛猿さんの顔が大画面に映し出され、その左上に俺の顔が映し出された。

 無論、俺もお面をかぶっている。近所の百均で手に入れた桃太郎のお面を。


 「なんか、初めに送ってきてくれたネタを見たときにめっちゃ重いテーマでびっくりしてさ。俺マジで間違えて連絡くれたんだろうと思ったんだよね。てか、なんで俺に連絡してきたの?俺さ、有名人の裏話とかは得意だけど、こういう社会派テーマなんて取り上げたことないんだけど。俺おバカさんだし。」

 飛猿さんは笑いながら話を振ってくる。

 これでいい。この感じこそ、俺が今回狙っていたことだ。

 コメント欄を見ると、「なになに?今回重いテーマなん?w」「俺、今回途中でフロリダすっかもwww」「飛猿っち、理解できないんじゃね?」など、次々にコメントが上がる。

 いつもの配信との違いに食いついてきているとわかって、画面下で小さくガッツポーズをする。

 まずは見てもらえないと意味がない、だからこそ彼に頼んだんだ。


 「飛猿さん、こないだ家の前に犬のうんこが落ちていてむかついたって話をしてましたよね?」

 飛猿さんの配信は結構しっかりと見た。犬のうんこの配信は閲覧数のわりに、飛猿いじりの定番となっていた。コメント欄もしっかりと反応している。

 「あれなあ。人んちの前にうんこっていまだにむかついてるよ、俺。」


 ここまで打合せ通り。あとはどれだけここから見てもらえるかだ。飛猿さんのちゃんねるには行き過ぎた正義感を持った人たちが集まる。順番さえ間違えなければ力を貸してもらえるはずだ。

 「大丈夫、あれだけ準備したんだ、落ち着いていけ!」

 自分を鼓舞し、俺はゆっくりと話し始めた。


 「まずは飛猿さん、チャンネルをご覧の皆さんに見てもらいたいものがあるんです。」

 俺は検査キットを映す。

 「なにこれ?なんかの実験したの?」

 飛猿さんが笑うと、

 「理科で似たようなの使ったぞ!」「あったあったwww」「いきなり実験キット~www」「え?これ家の前に来れ落ちてたん?」「うんこよりもやばそうなもの捨てられてる~!!!」

 コメント欄が盛り上がる。


 「これ、ヒ素の検査キットなんです。」

 「え?ヒ素?ヒ素ってなんか猛毒じゃないっけ?」

 飛猿さんの声に、コメント欄もざわつく。

 「ヒ素って人死んじゃうやつ!」「こいつ毒持ってんの?」「やばいのきた!!」「神回?神回の予感」「ヒ素が落ちてたってこと?」「え?殺人?こいつ殺人犯なの?」

 コメント欄が荒れる。


 「ごめん、確認だけど・・・。君これさ。やばいことはしてないよね?」

 飛猿さんが急に笑いを押さえて、低い声で聞く。仮面で顔は見えないのに、声だけで緊張感が伝わる。

 「さすがにやばい人だと配信は中止しないといけないんだけど。」

 飛猿さんは若干の怒気を含ませつつさらに言葉を重ねる。

 

 うまい。すごい。

 もちろん打ち合わせは事前に綿密にしてある。この後どんな流れになっているのかは飛猿さんは全部把握している。わかっていて芝居をしているんだ。

 だが配信を見ている人たちはすでにこの雰囲気にのまれている。さすが人気Youtuberは違う。


「俺はやばいことをしていません。ただ、やばいことをしている奴らを告発しに来ました。」

 閲覧人数は、ガンガン上がっていた。

「これって、飛猿さんちの前のうんこよりもやばいゴミですよね。こんなものが捨てられるんです。これからは皆さんの家の前にも。」




  


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