出生の秘密
両親は、俺にとても甘かった。
そんな両親に育てられて、俺はとても幸せだった。
小さい頃は、だれでも自分の家が「普通」だと思っている。
その世界しか知らないのだから当たり前だ。
だいたいの子供は、友達の家の様子を見て、ほかの家と自分の家の違いに気づきはじめる。
俺が感じていた違和感。それは、
「うちの両親えらい老けてね?」
ということだった。
俺が生まれ育った村は、とても小さな村だった。
主たる産業は、山や畑でとれる果物や木の実、海や川でとれる魚、といった、いわゆる第一次産業がメインだ。最近では山でとれる松ぼっくりやきれいな南天の実、松の葉などを集めてきては、「映える」と話題のハート形の滝つぼで写真を撮って通信サイトで売り、爆益を得ている人もいるらしい。クリスマスや正月の前には、休む暇がないほど出荷で大忙しだそうだ。
ほかにも、川や海でとってきたガラスのかけらを、シーグラスと銘打って売りさばいている人までいるらしい。
「パソコンさえあれば、今は何でも売れるんだなあ。」と、老人たちは酒を呑みながら話している。
そして、その老人たちの中に、俺の両親もいた。
ほかのうちの親は、皆、若かった。こんな田舎だ、若くして学校の同級生やら先輩後輩やらと、くっついては別れるを繰り返し、そのうち子供ができて一緒になる。友達の家はほとんどがそうだった。
なのに、俺の親だけは違った。
違和感に気づいたのは、小学校に上がる前だった。友達の母親は俺たちと鬼ごっこをしてくれるのに、俺の母親はしなかった。走るのも遅く、すぐに苦しそうに走るのをやめてしまうからだ。そのうち、友達の母親たちがベンチに座ってみているようにと心配そうに声をかけ、母はベンチから俺に手を振るばかりだった。
決定的だったのは、町に出たときだ。みんなが俺の親を「おじいちゃん、おばあちゃん」呼ばわりする。
「おじいちゃんでもおばあちゃんでもないよ。パパとママだよ。」
俺がそういうと、皆、ばつが悪そうにそそくさといなくなった。母は悲しそうに小さく呟いた。
「ごめんね。」
なんで、謝るんだ、悪いのはママをおばあちゃんと呼んだあいつらだろう?不思議な気持ちと怒りが入り混じった妙な気持になったのを覚えている。
俺の両親は、昔から年老いていたんだ。
はじめまして。
ねこまみれ と申します。
普段から、割と長めの小説を書いております。
タイトルから、なんとなくわかるかもしれませんが、ある有名な日本の古典をベースにしています。
前から書いてみたかった物語なので、楽しんで書いていこうと思います。
よろしくお願いします。