ローレベルな男のメシ
田中の仕事には、交通費の支給がない。そのため、毎朝満員電車に揺られながら、遠くの工場まで自腹で通う。片道1時間以上かかる通勤時間は、ただただ無駄に感じる。疲れ切った体で工場の門をくぐると、すでに心が重くなる。
昼休憩に差し掛かる頃、田中は仕方なく工場が提供する弁当を手に取る。中身はパサパサの白米と、安っぽい冷凍食品が数種類。原価は100円以下だろうと噂されるこの貧乏飯を口に運ぶたびに、彼はため息をつく。味も見た目も気を引くものは何一つなく、ただお腹を満たすための作業のようなものだ。
同僚たちと机を囲むが、会話はほとんどない。みんな同じく疲れ果て、同じようにまずい弁当をつついている。田中の心には、少しの余裕もない。自分の労働が一体何のためなのか、何の価値があるのかを考えることすら虚しく感じる。
休憩時間が終わると、またベルトコンベアの前に戻る。プラスチックバッグにシャンプーとコンディショナーを詰める作業を再開するが、どれだけ詰めてもその向こうにある希望は見えない。交通費も、まともな食事も保証されないこの仕事に、何かしらの意義を見出すのは難しい。
田中は心の中で、いつかこの日常から抜け出せるのか、それともこのまま沈んでいくのかと、漠然とした不安を抱きながら、再び無感情で手を動かし続ける。