3.王弟フロリアーノ視点
「なぜ見つからない?」
「そう言われましても……」
ミレーナ・デサンティス、どこへ行った?
ミレーナが送られたとされる辺境の街に来て、街長宅を訪れたが彼女は来ていなかった。彼女を溺愛していたとされる父親は蟄居したと聞いているが、他にも彼女を慕い保護する者がいたということか?
フロリアーノはこの街に滞在して五日も経つのに、彼女の足取りが不明なのが不思議でならなかった。
見つからないとなると余計に気になるものだ。遊んでやろうと思っていたが、『あなたの手には乗りません』と遊ばれているようで腹立たしく、躍起になって探した。
姿絵は見たが、実際に会ったことはない。もしかしたら少なくない金を渡されて、ほとぼり冷めるまで宿に引き篭もっているのかもしれない。しかし、このままでは埒があかないと、冒険者ギルドを訪ね、手配書を掲示してもらった。他にも街の大きな商店や酒場、高級宿にも貼り出し、賞金まで付けた。
賞金まで付けたんだ。情報は集まるだろう。
冒険者ギルドを訪れた際、ちょうど依頼の井戸の清掃から戻ってきたミレーナとすれ違ったことをフロリアーノは知らない。
今日も収穫無しか。フロリアーノは宿に戻ると、ベッドにドサリと身を投げ出した。何かがおかしい。街から出た形跡はないのに、なぜ見つからないのか。高級飲食店や高級宿、貴族や裕福な者が訪れるドレスや宝飾品を扱う店にも聞き込みをしたが、彼女が訪れた形跡はなかった。
そこから五日後のこと、また宛てもなく街を歩き、高級店を巡って彼女が訪れていないかを尋ねて歩いていると、前から女性が左右に冒険者の男を連れて歩いてきた。
「ミレーナちゃん、ありがとね」
「俺らちょっとギルドのこと教えただけなのに、本当に飯奢ってくれるとは思わなかったぜ」
「この街に来たばかりで慣れていなかったから助かったわ」
ん? ミレーナ? しかしミレーナと呼ばれたその女は、どう見ても街娘にしか見えない。髪は銀色で綺麗だが、邪魔にならないようしっかりと後ろで結ってあり、貴族では絶対に着ないような質素な木綿のワンピースを着ている。化粧もしていないように見えるし、もちろん豪華な宝石など身につけていない。しかし気になった。
どうせ違うのだとしても、一度は聞いてみよう。何の手掛かりもないし、暇だからな。
フロリアーノは密かに女の後をつけると、男たちと別れるのを待って声をかけた。