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② 悪役令嬢は強制退場?

 


『うっ……。一体何が……?』


 ふわふわと漂っていた意識が覚醒する。ゆっくりと瞼を上げると、王城の廊下だったが直ぐに違和感を覚えた。私の目線が普段よりも高いのである。まるで天井から吊るされ、廊下を見下ろしているようだ。


『え……えぇ?』


 私は自身の身体を見下ろすと、礼服の姿のまま身体が宙に浮いていた。


『な……なんで……』


 突然の出来事に私は慌てる。浮いているなど、きっと夢なのだろう。頬を抓るが、痛みが現実であることを教えてくる。

 私の気を失う前の最後の記憶は、魔法の水晶が強く発光したことだ。今の状況は魔法の水晶が関係しているのかもしれない。私がこの状態ということは、ヒュース殿下にも何か影響が出ているのかもしれない。彼は無事だろうか。


『よいしょ……』


 現状を打開する為には、魔法の水晶を調べるのが良いだろう。足を動かすイメージをすると、廊下を滑るように進む。先程の水晶がある部屋を目指して移動をする。


「……ジュールズ公爵令嬢様があんなことになるなんて……」

「本当に……王太子殿下も落ち込まれて……」


 廊下を進んでいると、正面から二人のメイド達が歩いて来た。


『わっ……ど、如何しましょう!?』


 私は宙に浮いている状態である。このような奇妙な状態を見られる訳にはいかない。私は一人慌てる。


『こ、これは……その……』

「どうなってしまうのかしら……」

「心配だわ……」


 近づいてくるメイド達に言い訳を口にしようとすると、彼女達は私に気が付かずに通り過ぎた。


『……え?』


 予想外の行動に乾いた声が漏れた。私は彼女達の正面に浮いており、絶対に視界に入る位置にいる。それだというのに、メイド達は不自然な程に私を無視したのだ。


『もしかして……私は……幽霊?』


 私は単に魔法で浮いているのではない。先程のメイド達の会話と現状を考えると、私は幽霊になっているようだ。異常事態に背中に冷や汗が流れる。


『ど、如何しましょう……。婚約破棄もされていないのに……』


 そう私は悪役令嬢なのだ。役割を果たす前に、ストーリーから退場してしまうなど今後の展開に悪影響が出ないか不安になる。前世では人は死後、幽霊になる事があると聞いたことがあるが、まさか自分がそれを体験するとは思っていなかった。


「……っ、シ……シロエ?」


 重い物が落ちる音が響き、掠れた声が私の名前を呼ぶ。


『……え? ヒュース殿下?』


 振り向くと、剣を落とした殿下が立っていた。



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